日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2022年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、コンビーナ:藤井 郁子(気象庁気象大学校)、座長:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、坂中 伸也(秋田大学大学院国際資源学研究科)

15:30 〜 15:45

[SEM16-07] 潮汐起因磁場の三次元順計算コードの開発

*中家 徳真1南 拓人1 (1.国立大学法人神戸大学)

キーワード:比抵抗、潮汐

導電性流体である海水は、地球主磁場中を運動することで海水層内に励起電流を発生させる。この現象はあらゆる海流で生じるが、周期的に海水が運動する海洋潮汐では、潮汐周期に対応する顕著な電磁場変動が発生することが知られている(Minami, 2017)。海洋潮汐による電磁場変動の振幅と位相は海底下の比抵抗構造の影響を受けるため、潮汐電磁場変動は、比抵抗構造推定への利用が期待できる 。これまでに、衛星高度における潮汐磁場変動を用いた全球的な比抵抗構造推定には実施例があるが(例えば、Grayver et al. 2016)、海底観測による潮汐磁場変動データを利用した構造推定には実施例がない。海底における潮汐起因磁場変動を比抵抗構造推定に用いるためには、数値計算の中で、磁場変動に対する海底地形の影響を高い精度で計算する必要があるが、これは従来の全球的なアプローチでは困難である。一方、海底磁場データには、衛星高度では観測されないトロイダル磁場成分を利用できるという優位性があるため、衛星高度データによる比抵抗構造推定に比べ、浅部構造の推定精度向上が見込める。
我々は、海底で観測される潮汐起因磁場を用いて海底下の比抵抗構造を推定することを目指している。これまでに、解析解(Chave and Luther, 1990)を用いた潮汐起因磁場の一次元順計算コードを開発し、ラウ海盆において順計算の値と観測値を比較した(中家他, 2021, JpGU)。しかし、海底地形の効果や比抵抗構造の三次元性が反映されない一次元計算では、
ラウ海盆内の東西測線に約30km 間隔で配置された観測点間で生じる、4nT を超える大きな磁場振幅の東西方向変化を説明できなかった。
本研究では、上記の問題を解決し、地形効果や比抵抗の三次元性を考慮した潮汐磁場変動の順計算を行うため、三次元の順計算コードを新たに開発した。順計算ソルバーには火山での応用を目的に作られた四面体辺有限要素法コード(Minami et al. 2018)を用い、ソース項には海水電気伝導度、地球主磁場、潮汐による海水速度場から表現される励起項を適用できるよう改良した。計算に用いるメッシュは海底地形を反映した、四面体から構成される非構造メッシュを作成した。計算に必要な流れ場にはTPXO model (Egbert and Erofeeva 2002)を、地球主磁場にはIGRF-13 (Alken et al. 2021)を用いた。計算精度の確認のため、水深2500mにおいて、長波近似した波長100kmの正弦波の平面波が作る磁場を計算し、解析解(Tyler 2005)と比較したところ振幅で5%、位相3度程度の差で解析解と一致することが明らかとなった。本研究では、今後、ラウ海盆で観測された海底磁場データと順計算値の比較と考察をすると共に、インバージョンの実施を目指している。本発表では、開発した順計算コードの説明、及び、順計算の結果について報告する。