日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2022年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、コンビーナ:藤井 郁子(気象庁気象大学校)、座長:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、坂中 伸也(秋田大学大学院国際資源学研究科)

16:30 〜 16:45

[SEM16-11] 多孔質媒体の振動と電磁場変動を関連付ける方程式の修正

*山崎 健一1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:地震動-電磁場結合、多孔質媒体、地磁気

界面導電現象と動的電磁誘導は、地震波伝搬時の多孔質媒質の振動と電磁場変動を結びつける重要なメカニズムである。観測事例の解釈において[e.g. Gao et al., 2020, GJI]、あるいは理論的な見積もりにおいて[e.g. Gao et al., 2014, JGR]、両者は別々の方程式系にもとづき個別に議論されてきた。しかし、本来は両方を一組の方程式系で記述できるはずである。そのような方程式系が得られたならば、両結合メカニズムが共存することで初めて生じる現象が予測されるかもしれない。そこで今回、界面導電現象による地震動-電磁場結合を記述する方程式系[Pride, 1994, Phys. Rev. B]の導出過程を再検討して必要な修正を加えることにより、界面導電現象と動的電磁誘導を同時に記述できる修正された方程式系を導出した。そして、その解を単純なモデルに関して調べることで、従来知られていなかった現象がそこから予想されるのか、また、別々の方程式系から導かれたこれまでの諸研究の結果には修正が必要なのか、を検討した。
 必要な修正は、界面導電効果による地震動-電磁場結合を記述する従来の方程式系に周辺磁場(地球磁場)の効果を取り込むことである。それは具体的には、方程式系を構成する2つの輸送方程式に含まれる電場 E を、媒質(地面)の速度 v とその場所での地球磁場 B を用いて E+vxB に置き換えることである。この置き換えは、電場・磁場の座標変換を考えたとき自然なものである。これだけで、方程式系は、従来は別々に記述されていた界面導電効果と動的電磁誘導の両者を同時に記述できるようになる。
 得られた方程式系は、一様媒質中を平面波が伝搬する場合には解析的に解くことができる。この平面波解は、波の振動方向、進行方向、地球磁場方向の関係に応じて3つのモードに分類できる。1つは地震波のP波に対応して、他は地震波のS波に対応する。これらのうちの2つから見積もられる地震動・電磁場変動の振幅は、従来の別々の方程式系から見積もられるものと変わらない。一方、S波に対応するモードのうちの1つは共振を示す。つまり、振動の継続時間に応じて、振幅が大きくなっていく。これは従来の方程式系からは予言されない現象である。しかし、共振に要する時間は現実的な地震動の継続時間よりもはるかに大きく、実際に観測値との比較・解釈という意味ではその効果は無視できる。共振効果を無視したならば、地震動・電磁場変動の振幅は、他のふたつのモードの場合と同じく、従来の方程式系から見積もられる値と変わらない。結局、修正された新しい方程式系を使って従来の結果を再解析する必要はなさそうである。