日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、コンビーナ:藤井 郁子(気象庁気象大学校)、座長:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、藤井 郁子(気象庁気象大学校)

11:00 〜 13:00

[SEM16-P01] minimum support正則化を用いた磁化構造解析インバージョンプログラムの開発とシミュレーション

*米倉 光1市來 雅啓1 (1.国立大学法人東北大学)

キーワード:インバージョン、磁気探査

全磁力データを用いた地下の磁化構造インバージョンについて様々な正則項やハイパーパラメータの決定法が提案されている.オーソドックスな正則項としてモデルのL1、L2ノルム(Li & Oldenburg, 1996)を使用した手法や,近年ではL1,L2ノルムを同時に用いるもの(Utsugi, 2021; 2019)やL1,L2ノルム,残差ノルムを複合した正則項(Fournier & Oldenburg, 2019)なども開発されている.その中で、本研究ではMinimum Support正則項(Last & Kubik, 1983; Portniaguine & Zhdanov, 1999; 2002)を用いる手法に注目し,Python 3を用いたプログラムコードを開発した.開発したコードはメモリー使用を抑えるためにdata space inversion (Kordy et al., 2016)の式変形も組み込んでいる. Minimum Support正則項は感度の低い地下の領域に現れる虚像を抑えるという利点がある.本研究ではMinimum support正則項を用いることでどの程度の虚像を抑えられるかとモデル分解能に与える影響を簡単なモデルでシミュレーションした.Portniaguine & Zhdanov (1999; 2002)ではハイパーパラメータをクーリング法で決定しているが,本研究ではOccam inversion(Constable, et al., 1986)によるハイパーパラメータの決定による結果とも比較する予定である.

シミュレーションは1000 m×1000 m×1000 mの領域を50 m立方の立方体で離散化したモデル空間で行った.シミュレーションで用いたモデルは2 A/mの磁化を持つ一辺200 mの立方体1つを深さ50 mの平面中心に配置したモデルと同じ立方体を水平に150 m離して2つ並置したモデルの2種類を考察した.合成データは上空50 mの高さにおいて50 m等間隔の観測点の全磁力データに対し5 %のガウスノイズを加えて作成した.

1つ目のモデルのシミュレーションの結果,L2ノルム最小化により推定したモデルと比較して、より地下の虚像を抑え、磁化物体とバックグラウンドの境界が明確になった.ここでL2ノルム最小化についてはクーリング法でなく、データの残差二乗和とL2ノルムの和からなる汎関数のラグランジュ未定乗数法による定式化で求めた解である.
2つ目のモデルのシミュレーションの結果、Minimum Supportを使用したインバージョンのみ150 m離れた2つの磁化物体を認識できた.Minimum Supportを使用していないインバージョンでは2つの異常が干渉し合い、深部にみかけの異常体を生成した.また、立方体の配置間隔を変えてシミュレーションした所、100 m間隔ではMinimum Supportでも2物体を認識できなかったが、配置する立方体の磁化強度を5 A/mにしたところMinimum Supportで認識できた.さらに、50 m間隔では磁化を5 A/mにしても2物体を認識できなかった配置する立方体の深さを0 mにした所Minimum Supportで認識できた.このことから、磁化の分解能は深さ、磁化強度の順で依存していることがわかった.