11:00 〜 13:00
[SEM16-P03] 中国・四国地方の基盤的比抵抗構造調査(2021年度)
キーワード:電気比抵抗、基盤的構造調査、中国・四国地方
【背景・目的】本研究では、地震・火山噴火による災害の軽減に貢献するために、中国・四国地方において 基盤的な比抵抗構造調査を行い、地殻・マントル上部の空間・構造的不均質性を明らかにすることを目的とする。山陰地域では、地震発生と比較的長い期間に噴火記録のない火山と地殻流体との関連を解明すること、内陸地震発生域と内陸地震空白域および深部低周波地震域の構造的不均質性、また、四国地方では、地殻地震およびスロー地震の発生様式と構造的地域性等について、沈み込む海洋プレートから供給が想定される流体と関連づけることが重要である。 これまでに筆者らを中心とする研究グループは、山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた。例えば、山陰地方東部では、鳥取地震(1943年、M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして、顕著な地震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線でMT調査を実施し、ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って、地震発生層である地殻上部に高比抵抗領域、その下、地殻深部に低比抵抗領域が存在することを明らかにした。この知見と調和的な「ひずみ集中帯」に関する研究成果(例えば、西村(2015))が測地学研究から示された。内陸地震が地震活動帯直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾、2009)ならば、この不均質構造について、今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要である。 一方、四国地方においては、主に外帯での調査結果から上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在し、それと中央部・西部では無地震域との明瞭な関連が示唆された。この地域の地震現象の統一的理解のためには、スロー地震の活動様式だけでなく発生環境や発生原理の解明が重要(小原(2017))であるため、大局的な比抵抗構造の地域特性を解明するための基盤的比抵抗構造調査研究が求められる。
【実施内容】 このような背景のもと、2021年11月初旬から12月上旬にかけて、鳥取東部域(A-W地域)および鳥取・兵庫県境脊梁地域(A-E地域)の測定空白域を中心に、自然界の電磁場変動を信号とする広帯域MT法観測を実施した。本年度の調査対象域のA-W地域は、1943年鳥取地震の地震断層である鹿野・吉岡断層のまさに東端部にあたり、A-E地域は雨滝・釜戸断層を横切る2019年度測線上の未測定域を含む地域である。観測には、フェニックス社製広帯域MT法測定器MTU-5Aを使用し、地磁気3成分電場2成分の組み合わせと電場2成分測定を併用した(合計8地点)。 見かけ比抵抗や位相などの探査曲線図から得られた特徴としては、今回の観測地域を大局的にみれば、曲線の形状は似ており、上部地殻には高比抵抗領域(少なくともkΩmオーダー)の存在が、深部には低比抵抗領域の存在が示唆された。また、位相差yx成分値が数百秒あたりから90度を超える異常位相傾向も共通してみられた。 データ処理結果および既存データを統合して構造解析を行った。インピーダンスのPT解析から対象地域の比抵抗構造の走向を推定したところ、概ね付近の海岸線に直交する2次元構造であると解釈できた。Groom and Bailey (1989)分解を行い、2次元構造性の抽出を試みた。得られたインピーダンスデータについてOgawa and Uchida(1996)のプログラムコードを用いた2次元構造解析を行った。得られた両地域の構造断面には共通して、上部地殻は全般的に高比抵抗領域(数kΩm以上)であるという特徴が示された。ただし、A-W(鹿野・吉岡断層のまさに東端部)では、周りと比べて1桁程度比抵抗が下がるという構造の不連続性が示された。一方、未測定域における測点を追加したA-E(雨滝-釜戸断層の直南地点から南にかけての地域)では、地殻の比抵抗値が、北側や最南部と比べて一桁程度下がる構造がみられた。また、比抵抗構造と地震活動との関連をみると高比抵抗と低比抵抗の境界部もしくは高比抵抗領域側では地震活動がみられた。ただし、いずれの断面にもこれまで山陰地方の内陸地震発生域下で指摘された深部低比抵抗領域はみられない。このことは内陸地震発生の規模と関連がある知見かもしれない。 四国地方の基盤的比抵抗構造解析として、既存データを活用・統合して、比較的ノイズの混入の少ない周期1秒以下の周期帯に関して四国地方の3次元比抵抗構造の解明を目指した研究を進めている。
【謝辞】本研究では、文部科学省による災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の支援を受けた。日鉄鉱コンサルタント株式会社より観測機材並びに参照磁場記録の無償提供を受けた。
【実施内容】 このような背景のもと、2021年11月初旬から12月上旬にかけて、鳥取東部域(A-W地域)および鳥取・兵庫県境脊梁地域(A-E地域)の測定空白域を中心に、自然界の電磁場変動を信号とする広帯域MT法観測を実施した。本年度の調査対象域のA-W地域は、1943年鳥取地震の地震断層である鹿野・吉岡断層のまさに東端部にあたり、A-E地域は雨滝・釜戸断層を横切る2019年度測線上の未測定域を含む地域である。観測には、フェニックス社製広帯域MT法測定器MTU-5Aを使用し、地磁気3成分電場2成分の組み合わせと電場2成分測定を併用した(合計8地点)。 見かけ比抵抗や位相などの探査曲線図から得られた特徴としては、今回の観測地域を大局的にみれば、曲線の形状は似ており、上部地殻には高比抵抗領域(少なくともkΩmオーダー)の存在が、深部には低比抵抗領域の存在が示唆された。また、位相差yx成分値が数百秒あたりから90度を超える異常位相傾向も共通してみられた。 データ処理結果および既存データを統合して構造解析を行った。インピーダンスのPT解析から対象地域の比抵抗構造の走向を推定したところ、概ね付近の海岸線に直交する2次元構造であると解釈できた。Groom and Bailey (1989)分解を行い、2次元構造性の抽出を試みた。得られたインピーダンスデータについてOgawa and Uchida(1996)のプログラムコードを用いた2次元構造解析を行った。得られた両地域の構造断面には共通して、上部地殻は全般的に高比抵抗領域(数kΩm以上)であるという特徴が示された。ただし、A-W(鹿野・吉岡断層のまさに東端部)では、周りと比べて1桁程度比抵抗が下がるという構造の不連続性が示された。一方、未測定域における測点を追加したA-E(雨滝-釜戸断層の直南地点から南にかけての地域)では、地殻の比抵抗値が、北側や最南部と比べて一桁程度下がる構造がみられた。また、比抵抗構造と地震活動との関連をみると高比抵抗と低比抵抗の境界部もしくは高比抵抗領域側では地震活動がみられた。ただし、いずれの断面にもこれまで山陰地方の内陸地震発生域下で指摘された深部低比抵抗領域はみられない。このことは内陸地震発生の規模と関連がある知見かもしれない。 四国地方の基盤的比抵抗構造解析として、既存データを活用・統合して、比較的ノイズの混入の少ない周期1秒以下の周期帯に関して四国地方の3次元比抵抗構造の解明を目指した研究を進めている。
【謝辞】本研究では、文部科学省による災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の支援を受けた。日鉄鉱コンサルタント株式会社より観測機材並びに参照磁場記録の無償提供を受けた。