日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、コンビーナ:藤井 郁子(気象庁気象大学校)、座長:宇津木 充(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、藤井 郁子(気象庁気象大学校)

11:00 〜 13:00

[SEM16-P04] 福岡県警固断層周辺における広帯域MT観測

*井ノ又 伍1相澤 広記2村松 弾1安仁屋 智1大久保 歩夢1、上土井 歩佳3 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院附属・地震火山観測研究センター、3.九州大学理学部地球惑星科学科)

キーワード:MT法、電気比抵抗構造、活断層、警固断層

2005年3月20日に警固断層帯北西部において気象庁マグニチュード7.0 (Mw6.7) の地震が発生した (福岡県西方沖地震).この地震では警固断層帯南東部警固断層 (以下,警固断層)まで破壊は進まなかった.平成23年度から平成25年度には文部科学省委託事業として警固断層の重点的な調査観測が行なわれた.トレンチ調査(例えば下山ほか,2005)やボーリング調査,反射法探査によって警固断層は過去に2回 (約8900年前以後~約7400年前以前,約4300年前以後~約3400年前以前) 活動していたことが推定された.北西部の地震が2005年に発生し,南東部での地震発生が懸念される.
地磁気地電流法探査(以下,MT法探査)では, 精度のよい周波数応答関数を広帯域 (0.02~3000 s) で推定できれば,上部マントル程度の深部までの電気比抵抗構造を推定することが可能である.比抵抗は主に流体の存在とその連結度に敏感な物理量であり,地震学的構造とは独立であるため両者を比較することで不均質構造の実体にせまることができる.警固断層の重点的な調査観測では,機動的地震観測によって地下にいくつもの地震波反射体が確認され流体の存在が示唆された.また稠密反射法探査において,反射に乏しい領域が警固断層地表トレース (下山ほか,1999) 下部の幅 1km, 深さ~17kmの範囲でイメージングされ断層破壊域として解釈された.さらに,断層の東西で反射強度に違いが見られ,岩相の異なる領域で破壊が行なわれたことが示唆された.このように地震波探査からは警固断層周辺に不均質構造の存在が示されているのに対し,過去に地磁気変換関数のみから推定された比抵抗構造では警固断層周辺に比抵抗異常はみられない (Handa et al., 2005).
本研究は,警固断層周辺でこれまで観測例がなかった広帯域MT観測を行い,地下の比抵抗構造を推定し, 過去の調査報告と合わせて警固断層周辺の不均質構造の実体を明らかにすることを目的とする.地震観測による反射体や断層直下の低反射域と比抵抗構造がどのように対応するかの確認を目指す.また,2016年熊本地震を起こした布田川-日奈久断層帯においては断層端周辺の低比抵抗体が地震破壊の成長および停止に役割を果たしていることが示唆されているため(Aizawa et al., 2021), 警固断層の南東端付近にも観測点を設置した. 2021年2月6日現在,探査は進行中であるが,これまで警固断層西部の30 x 30kmの領域で22点の観測点を設置しデータを取得した.MT観測は人工ノイズの多い都市部では不向きとされてきたが,本研究対象地域では電車の漏洩電流によるノイズは夜間0時~4時は減少することや,人工ノイズを軽減する手法であるremote reference法 (Gamble et al., 1979)を適用することで周波数応答関数算出の際の人工ノイズを減らすことを試みた.発表では,得られたデータの特徴と予察的な比抵抗構造を示す.