16:45 〜 17:00
[SGC35-12] 地球化学的リザーバーとしての大陸下マントルの希ガス同位体組成の特徴
キーワード:希ガス、大陸下マントル
研究の背景と目的: SCLM(大陸下のリソスフェリックマントル)の希ガス同位体組成はMORB(中央海嶺玄武岩)やOIB(海洋島玄武岩)における組成と比べて不明な点が多い。南米パタゴニアや南アルプスフィネロのSCLMよりMORBと比較して核破砕反応で得られるnucleogenic成分の寄与が強く見られるNe同位体組成が報告された。[1], [2] このような組成が得られるためにはU, Thに富むか始原的希ガスである22Neが少なくなければならないが、高い3He/22Neが報告されていることを根拠としてメルト抽出に伴う脱ガスでSCLMの始原的希ガスがMORB源と比べて失われている可能性が提案された。[3] 本研究では同様なNe同位体組成が他のSCLMからも確認できるか調べること、及び確認できた場合にその3He/22Neがどのようになっているか確認することを目的とした。
試料と分析手法: 南米西部Maracath flow, Lunar Crater volcanic field(アメリカ、ネバダ州)、Toroweap flow(アメリカ、アリゾナ州)、Mount Emma(アメリカ、アリゾナ州)、San Quintin volcanic field(メキシコ、バハ・カリフォルニア州)及びアフリカ北西部Beni Bousera peridotite body(モロッコ)にて採取されたかんらん岩について、真空中で試料を加熱することで希ガスを抽出し、分離した後に、質量分析計を用いてHe, Ne, Arの存在度及び同位体組成を測定した。加熱分析において十分な希ガス存在度が確認できた試料については段階破砕法で希ガスを抽出し、同様に、分離した後に質量分析計を用いて測定を行う予定である。
結果と考察: 加熱分析においては、南米北西部の試料からはMORBの範囲(8±1 Ra)を超え、更にはOIBにて確認されている最大値(~50 Ra)をも超えるようなHe同位体比(3He/4He)が確認された一方で、アフリカ北西部Beni Bousera peridotite bodyの試料では1 Raを下回るHe同位体比が確認された。南米西部の試料は宇宙線生成核種と推定される3Heと21Neの存在度の相関から宇宙線照射の寄与を受けていると考えられる。その一方で、アフリカ北西部の試料はU, Thの放射壊変によって生成される4Heの寄与が大きいと考えられる。また、Ne同位体組成についてはほぼ全ての試料において大気組成と宇宙線生成核種の混合のみでは説明できない組成が得られた。このことから大気と宇宙線生成核種以外にnucleogenic成分或いはマントル起源Neの寄与も存在している可能性が考えられる。但し、加熱分析においては宇宙線照射によって鉱物の結晶格子中で生成される核種の影響がより顕著に見られてしまうため、より具体的な検討のためには流体包有物など、マントルで捕獲した希ガス成分に富む相から希ガスを選択的に抽出しやすい段階破砕法を用いて分析を行う必要がある。段階破砕を行うためには試料に十分な希ガスが含まれている必要があるが、加熱分析により十分な希ガスが含有されている試料を確認出来たので、今後その試料について優先的に段階破砕を行っていく。
参考文献
[1] Jalowitzkt et al., EPSL 2016
[2] Fukushima et al., JpGU 2021
[3] Nick et al., EPSL 2018
試料と分析手法: 南米西部Maracath flow, Lunar Crater volcanic field(アメリカ、ネバダ州)、Toroweap flow(アメリカ、アリゾナ州)、Mount Emma(アメリカ、アリゾナ州)、San Quintin volcanic field(メキシコ、バハ・カリフォルニア州)及びアフリカ北西部Beni Bousera peridotite body(モロッコ)にて採取されたかんらん岩について、真空中で試料を加熱することで希ガスを抽出し、分離した後に、質量分析計を用いてHe, Ne, Arの存在度及び同位体組成を測定した。加熱分析において十分な希ガス存在度が確認できた試料については段階破砕法で希ガスを抽出し、同様に、分離した後に質量分析計を用いて測定を行う予定である。
結果と考察: 加熱分析においては、南米北西部の試料からはMORBの範囲(8±1 Ra)を超え、更にはOIBにて確認されている最大値(~50 Ra)をも超えるようなHe同位体比(3He/4He)が確認された一方で、アフリカ北西部Beni Bousera peridotite bodyの試料では1 Raを下回るHe同位体比が確認された。南米西部の試料は宇宙線生成核種と推定される3Heと21Neの存在度の相関から宇宙線照射の寄与を受けていると考えられる。その一方で、アフリカ北西部の試料はU, Thの放射壊変によって生成される4Heの寄与が大きいと考えられる。また、Ne同位体組成についてはほぼ全ての試料において大気組成と宇宙線生成核種の混合のみでは説明できない組成が得られた。このことから大気と宇宙線生成核種以外にnucleogenic成分或いはマントル起源Neの寄与も存在している可能性が考えられる。但し、加熱分析においては宇宙線照射によって鉱物の結晶格子中で生成される核種の影響がより顕著に見られてしまうため、より具体的な検討のためには流体包有物など、マントルで捕獲した希ガス成分に富む相から希ガスを選択的に抽出しやすい段階破砕法を用いて分析を行う必要がある。段階破砕を行うためには試料に十分な希ガスが含まれている必要があるが、加熱分析により十分な希ガスが含有されている試料を確認出来たので、今後その試料について優先的に段階破砕を行っていく。
参考文献
[1] Jalowitzkt et al., EPSL 2016
[2] Fukushima et al., JpGU 2021
[3] Nick et al., EPSL 2018