日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 地殻変動

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、座長:矢部 優(産業技術総合研究所)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)

14:00 〜 14:15

[SGD01-08] 2016年オーストラリア中央部の地震の断層モデル推定と低傾斜角の意味

*坂本 佳奈美1福島 洋2 (1.東北大学 理学研究科、2.東北大学 災害科学国際研究所)


キーワード:InSAR、ALOS-2/PALSAR-2、Sentinel-1、断層すべり分布、低角逆断層

インド・オーストラリアプレートの中心に位置するオーストラリア中央部では地震活動が少ないため、この地域におけるプレート内地震の原因となる断層の形状やキネマティクスはよくわかっていない(Polcari et al., 2018)。著者らは、2016年5月20日に発生したMw 6.0 オーストラリア中央部Petermann山脈における地震について、ALOS-2データを用いた予察的な解析を行っていたが(Sakamoto and Fukushima, 2021, JpGU)、本研究では、新たにSentinel-1データも加えて地震時の断層すべりモデルの再解析を行うとともに、得られたすべりモデルの特徴について考察した。InSARデータは、観測日2015年12月15日と2016年6月14日(アセンディング軌道)のALOS-2データおよび観測日2015年10月18日と2016年6月1日(ディセンディング軌道)のSentinel-1データを用いた。インバージョン手法は、Fukushima et al. (2013) に従い、断層の傾斜角・すべり角・平滑化の重みの非線形パラメータと断層面上のすべり分布を同時に解いた。この手法では、非線形パラメータの推定には粒子群最適化法(Particle Swarm Optimization: PSO)(Kennedy and Eberhart, 1995)を用い、すべり分布推定には非負の拘束条件を課した重み付き最小二乗法を用いる。
InSAR解析の結果、既知の活断層トレースに沿って、逆断層に調和的なLOS短縮成分卓越の変動パターンが確認された(図)。また、この地震の断層すべりインバージョン解析はPolcari et al. (2018) により先行的に行われているが、彼らの解析における断層近傍の位相アンラッピング結果には問題があり、再検討を要することも確認した。
インバージョンの結果、断層の傾斜角とすべり角はそれぞれ17°、66°と推定されたが、これらの値は、Polcari et al. (2018)による推定値(傾斜角39°、すべり角49°)と有意に異なる。特に傾斜角に関しては、通常の逆断層地震の傾斜角(30〜50°程度)よりも小さく、断層強度が極端に弱いなど特殊な条件下にあることが推測される。本地震の震源断層は、より大きな構造であるWoodroffe Thrust断層(傾斜角6°以下, Wex et al., 2017)と共役の位置関係にあることになり、本解析結果は当該地域のテクトニクスに示唆を与える。