日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 地殻変動

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、座長:矢部 優(産業技術総合研究所)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)

14:15 〜 14:30

[SGD01-09] 2011年東北地方太平洋沖地震の地震時断層すべり推定におけるGreen関数の比較

*高田 大成1田中 愛幸1 (1.東京大学大学院理学系研究科)


キーワード:断層すべり推定、Green関数、2011年東北地方太平洋沖地震

地震時の地殻変動を計算するGreen関数がいくつか提案されている.地震時断層すべりを推定する測地インヴァージョンにおいては,半無限媒質を仮定したOkada(1992)のグリーン関数(以下,半無限モデル)が広く用いられている.半無限モデルは,空間スケールの小さい地殻変動を精度良く近似できる.しかしながら,地殻変動が広範囲に生じる場合は,密度,弾性定数などの不均質・曲率・自己重力などの影響が無視できない可能性がある.
本研究では,Tanaka et al.(2014)の手法を用いて自己重力の働くPREMに基づくGreen関数を計算した(以下,球モデル).その結果を2011年M9東北地震のインヴァージョン解析に適用し,半無限モデルによる結果と比較した.インヴァージョンには,国土地理院のGNSSデータ及び海上保安庁の海底地殻変動データを用いた.プレート境界面を小矩形断層で近似し,Yabuki & Matsu'ura (1992)の手法を用いてスムージングを考慮した.
半無限モデルと球モデルによるABIC最小値を比較すると,半無限モデルの値よりも球モデルの値の方が小さいことが分かった.ABICの値はモデルパラメータの数に依存し,半無限モデルと球モデルで使用しているパラメータ数は同一である.したがってこの結果は,半無限モデルよりも球モデルの方が良い断層すべりを求めることができることを示す.また,球モデルの方が最適なすべり分布から計算される地表変位と観測変位との一致が有意に改善することが分かった.すべり分布は,球モデルの方が福島県沖(北緯38度付近)においてより深い場所まですべりが分布した.すべりのピークの位置は2つのモデルで差はそれほどないが,半無限モデルのすべり最大値は47 m,球モデルのすべり最大値は39 mであり,半無限モデルの方が大きかった. これらの結果は,地震時すべり分布の不確かさを議論する際に,グリーン関数の差を考慮する必要があることを示す.