日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 地殻変動

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、座長:矢部 優(産業技術総合研究所)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)

14:45 〜 15:00

[SGD01-11] GNSS-A観測における海洋場の表現と解析における拘束条件

*横田 裕輔1石川 直史2渡邉 俊一2中村 優斗2 (1.東京大学生産技術研究所、2.海上保安庁海洋情報部)

キーワード:GNSS-A、海底測地、海底地殻変動

海上保安庁はGNSS-A海底地殻変動観測網(SGO-A)を20年以上運用しており [Ishikawa et al., 2020],南海トラフ沿いの浅部SSE信号の検知などの複雑かつ微小な海底地殻変動の検出に成功してきた [Yokota and Ishikawa, 2020; Watanabe et al., 2021].このようなプレート境界の複雑な物理を理解するためにはGNSS-A精度と誤差の正確な理解が不可欠である.本研究では,SGO-AデータセットとGARPOSが使用されている[Watanabeet al., 2020].
この発表では、音速構造の傾斜パラメータに特に焦点を当てる.音速構造傾斜は水平精度に大きな影響を与える.この傾斜場の表現は,横田 [2021] と Yokota et al. [under review] で議論されているように平面上に時間変化をプロットすることによって調べることができる.観測当日の場の状態,観測サイトの環境,予期しないノイズ源などを調査できる.本発表ではこのプロットを「G-plot」と呼ぶことにする.
G-plotを使用すると,さまざまな海洋構造の特性を理解できる.たとえば,単純な勾配層(内部波などによる)だけでなく、水塊が通過する複雑なケースもG-plotで簡単に表現できる.海底局アレイ形状の推定誤りの影響も,異常なG-plotとして区別できる.
G-plotと場の平均音速度の変化の関係からも,kmスケールの海洋場を理解することができる.G-plotが振動する場合,その位相変化と平均音速度の時間変化の位相の関係から,内部波や水塊の侵入方向や流入場の規模がわかる.
GNSS-Aに対する海洋場の影響の理解から,解析の拘束条件を改善できる可能性がある. たとえば,Honsho et al. [2019]では,単純な海洋構造を想定した傾斜場モデルが使用された.南海トラフ側の実データのG-plotの結果は,そのようなケースが南海トラフ側で頻繁に発生することを示している [Yokota et al., under review].一方,さまざまな制約を採用する方がよい観測データや観測点がいくつかある.これは,各観測ケースや観測点での海洋状態の特性を示しており,制約を適切に決定することがGNSS-Aの観測精度の鍵となることを示唆している.

SGO-A data: https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/chikaku/kaitei/sgs/datalist.html
GARPOS: https://doi.org/10.5281/zenodo.4522027