日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 地殻変動

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (19) (Ch.19)

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、座長:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

11:00 〜 13:00

[SGD01-P02] GNSS-A海底地殻変動観測から推定される南海トラフ沿いのプレート間固着状態の空間分布と時間変動

*石川 直史1渡邉 俊一1中村 優斗1横田 裕輔2 (1.海上保安庁海洋情報部、2.東京大学生産技術研究所)

キーワード:GNSS-A、海底地殻変動観測、南海トラフ地震

1 はじめに

海上保安庁では、GNSS-A方式による海底地殻変動観測を定常的に実施し、日本海溝及び南海トラフ沿いにおけるプレート境界の固着状態を把握するためのデータを収集している。海溝型地震の震源域となるプレート境界では、多様なスロー地震現象が種々の地震・測地観測網から検出されており、それらの発生・非発生の時空間的な把握が将来の巨大地震への備えとして重要な課題となっている。特に南海トラフにおいては、通常と異なる状態が観測された際には、気象庁から南海トラフ地震臨時情報が発せられることになっており、プレート境界の固着状態の監視・観測は地震防災上の重要な鍵となる。GNSS-A観測は、震源域直上の海底における地殻変動を直接測定できることから、固着状態の把握に極めて有効なデータを提供する。

2 GNSS-A観測によるプレート境界固着状態の把握

現状の海上保安庁のGNSS-A観測は有人船によるキャンペーン観測によって実施されるため、観測頻度が年に数回程度となる。そのためデータの時間分解能が低くスロースリップのような短期の地殻変動現象を捉えにくいという弱点があるものの、これまでに実施してきた約10年間の観測データの蓄積から、固着状態の時間変動がある程度把握できるようになっており、スロー地震発生域と強固着域の棲み分けも見えつつある。本発表では、GNSS-A観測時系列から得られる地殻変動速度場の時間発展から、プレート境界の固着状態の時間変動を推定した結果について報告する。

3 不均質構造を考慮した推定

これまでプレート境界のすべりの推定には半無限均質媒質による簡易な近似計算が広く用いられてきた。しかしながら、GNSS-A観測によって得られた海底における地殻変動データを使用する場合、データ分布は陸上から海底までの広範囲にわたり、地下構造の不均質性、観測点の標高差、地球の曲率などの効果が無視できなくなると考えられる。しかしながら、こうした計算は複雑で非常に高い計算コストが要求され、容易には計算できない。Hori et al. (2021) は、これらの効果を考慮したグリーン関数をあらかじめ計算し、ライブラリ化することで、計算コストをかけずにより現実的な構造によるすべり推定を可能にした。本発表では、これら不均質構造等を反映した結果についても報告を行う予定である。