14:45 〜 15:00
[SGD02-05] 船舶搭載GNSSによるリアルタイム可降水量解析とその品質管理
キーワード:GNSS、可降水量、海洋観測、キネマティック精密単独測位、準天頂衛星システム
Shoji(2021)では海洋における水蒸気観測を拡充する目的で、船舶に搭載した二周波GNSS受信機を用いたリアルタイム海上可降水量(PWV)解析システムに最適な解析設定の考察を行った。精密単独測位手法(Precise Point Positioning: PPP)を移動体に適用する場合の最適な設定を得るため、オープンソースの測位解析ツールRTKLIB 2.4.3 b33を使用し、天頂遅延量のRandom Walk Process Noise(RWPN)シグマ、解析時間幅、カルマンフィルターの更新時間間隔を変化させ、解析を行った。気象庁のメソ解析と比較することで、移動体に対する精密単独測位では、鉛直座標と天頂遅延量は完全に分離することができず、各々の誤差が相関をもつことが分かった。リアルタイム解析の設定としてa)RWPNシグマを3E-5 m/sqrt(s)、b)時間幅90分のsliding-window(Foster et al. 2005)解析、c)2秒の時間更新を選択した。
上記設定を適用したシステムを、気象庁の2隻の海洋気象観測船、凌風丸、啓風丸に搭載し、2021年3月26日より観測を開始した。このシステムは日本の準天頂衛星システムから送信されるリアルタイム衛星軌道情報MADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis) リアルタイムプロダクトを船上のGNSS受信機で受信し、10分間隔で移動体測位を自動起動する(Fig. 1)。7月22日までの4カ月弱の観測では、データ取得率が両船で97%を超えた。気象庁メソ解析値(MA)、ラジオゾンデ観測及び衛星搭載マイクロ波放射計による可降水量観測との比較では、いずれも二乗平均平方根差が2.5mm未満、バイアスの絶対値は1mm程度かそれより小さかった。
しかし、MAや前後のPWV解析値と比較し、10mmを超える相違がある異常値がまれに発生した。GNSS PWVが異常値となる場合、以下の特徴がある。
(1)解析の初期段階から異常が発生している。
(2)直前や直後のPWVに異常は見られない。
(3) この解析では天頂遅延量とともに大気遅延量勾配(MacMillan 1996)も2秒間隔で推定している。大気遅延量勾配の99%以上は20mm未満であるが、PWVが異常値となる場合、大気遅延量勾配が20mmを超える場合がほとんどで、遅延量勾配が長いほど異常の程度も大きい傾向にあった(Fig. 2)。
以上のことから、大気遅延量勾配が40mmを超えた場合、sliding-windowの開始時刻を10分前方にずらした解析を行うこととした。このことで異常値の多くを回避できることがわかった。遅延量勾配40mmの妥当性は、今後吟味する必要がある。また、異常値発生の要因についても今後調査を行う。
謝辞
本研究の一部はJSPS科研費20H02420の支援を受けました。
測位解析にはRTKLIB 2.4.3 b33を用いました。
引用文献
MacMillan, D. S., 1995: Atmospheric gradients from very long baseline interferometry observations, Geophys. Res. Let., 22, 1041-1044.
Foster J., M. Bevis, S. Businger, 2005: GPS Meteorology: Sliding-Window Analysis, J. Atmos. Oceanic Technol., 22, 687-695.
Shoji Y., 2021: Optimization of water vapor analysis using ship-borne GNSS measurement, Japan Geoscience Union Meeting 2021, SGD01-17.
上記設定を適用したシステムを、気象庁の2隻の海洋気象観測船、凌風丸、啓風丸に搭載し、2021年3月26日より観測を開始した。このシステムは日本の準天頂衛星システムから送信されるリアルタイム衛星軌道情報MADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis) リアルタイムプロダクトを船上のGNSS受信機で受信し、10分間隔で移動体測位を自動起動する(Fig. 1)。7月22日までの4カ月弱の観測では、データ取得率が両船で97%を超えた。気象庁メソ解析値(MA)、ラジオゾンデ観測及び衛星搭載マイクロ波放射計による可降水量観測との比較では、いずれも二乗平均平方根差が2.5mm未満、バイアスの絶対値は1mm程度かそれより小さかった。
しかし、MAや前後のPWV解析値と比較し、10mmを超える相違がある異常値がまれに発生した。GNSS PWVが異常値となる場合、以下の特徴がある。
(1)解析の初期段階から異常が発生している。
(2)直前や直後のPWVに異常は見られない。
(3) この解析では天頂遅延量とともに大気遅延量勾配(MacMillan 1996)も2秒間隔で推定している。大気遅延量勾配の99%以上は20mm未満であるが、PWVが異常値となる場合、大気遅延量勾配が20mmを超える場合がほとんどで、遅延量勾配が長いほど異常の程度も大きい傾向にあった(Fig. 2)。
以上のことから、大気遅延量勾配が40mmを超えた場合、sliding-windowの開始時刻を10分前方にずらした解析を行うこととした。このことで異常値の多くを回避できることがわかった。遅延量勾配40mmの妥当性は、今後吟味する必要がある。また、異常値発生の要因についても今後調査を行う。
謝辞
本研究の一部はJSPS科研費20H02420の支援を受けました。
測位解析にはRTKLIB 2.4.3 b33を用いました。
引用文献
MacMillan, D. S., 1995: Atmospheric gradients from very long baseline interferometry observations, Geophys. Res. Let., 22, 1041-1044.
Foster J., M. Bevis, S. Businger, 2005: GPS Meteorology: Sliding-Window Analysis, J. Atmos. Oceanic Technol., 22, 687-695.
Shoji Y., 2021: Optimization of water vapor analysis using ship-borne GNSS measurement, Japan Geoscience Union Meeting 2021, SGD01-17.