日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2022年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、松尾 功二(国土地理院)、座長:三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、古屋 智秋(国土地理院)

15:00 〜 15:15

[SGD02-06] GPSおよびGLONASSの受信アンテナ位相特性の違いとその影響

*畑中 雄樹1、阿部 聡1、村松 弘規1古屋 智秋1 (1.国土地理院)

キーワード:GNSS、位相特性、GEONET

GEONETの観測データにはレドームやアンテナ架台からのマルチパスの影響が含まれており、精密な解析にはその補正が欠かせない。現在の定常解析システムで使用されている位相特性モデルは、これらの影響を含め、GPSのL1およびL2の2周波についてフィールド観測による検定で得られたものである。GLONASSを解析に組み込むためにこれまで我々が行ってきた取り組みにおいてはGPS用のモデルを適用し、近似としてきた。
GLONASSのL1およびL2帯の周波数はGPSと若干の違いがあり、国際GPSサービス(IGS)においては、IGS08モデル以降、GLONASSの周波数帯用に検定されたアンテナ位相特性モデルが徐々に取り入れられ適用されている。Dach et al. (2011) はIGS観測網を用いて衛星送信アンテナおよび受信アンテナのGLONASS用位相特性モデルのインパクトを評価し、GLONASS衛星の軌道決定への効果は顕著であるものの、観測点座標値のバイアスへの影響については上下成分について1mm以内という結果を得た。ただし、この評価はGPSとGLONASSを組み合わせて解析した結果に対するものである。GLONASS用位相特性のインパクトとその性質を見極めるには、まずはGLONASSのみによる解析に対する影響を取り出して評価するのが適当であろう。
そこで、国土地理院でこれまでに行われたGEONETの位相特性検定のための観測のうち、GPSに加えてGLONASSのデータを取得した2019年2月から3月にかけての観測のデータを用いて試験的な解析を行い、位相特性の違いとその影響について予備的な評価を行った。解析にはBERNESE ver. 5.0を使用し、まず、GPSおよびGLONASSのそれぞれについてL1およびL2帯の位相特性を推定した。次に、同じデータを使用し、各アンテナ-架台タイプの組み合わせについて、GLONASSデータを使用してGLONASS用位相特性モデルを適用した場合とGPS用位相特性モデルで代用した場合で基線解析を行い、得られた基線解をGPSデータによる基線解と比較した。
その結果、GPS用位相特性モデルで代用して得られたGLONASS解とGPS解との間にはアンテナ-架台タイプの組み合わせによって異なる顕著な差がみられ、その大きさが数mmから最大1cm程度に及ぶことが分かった。一方、GLONASSデータで検定された位相特性モデルを適用した場合は、GPS解との差が、高さ成分および水平成分で、それぞれ、概ね3mm以内および1mm以内、最大でもそれぞれ、5mmおよび2mm程度となった。この結果は、GEONETの架台を含むアンテナ位相特性について、GPSとGLONASSの違いを無視して解析を行った場合、両者の結合結果に最大1cm程度の内部不整合を持ち込む可能性があることを意味しており、それを防ぐにはGLONASS用の位相特性の検定を行って補正する必要があることが示唆される。