日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、松尾 功二(国土地理院)、座長:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、松尾 功二(国土地理院)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)

11:00 〜 13:00

[SGD02-P04] 人工衛星による南極地域の地形情報把握手法の検証報告

*岡本 淳1、寳楽 裕1、柴山 卓史1、新城 安光1、高玉 秀之1、橋本 裕紀1 (1.株式会社パスコ)

キーワード:南極、SPOT6&7、ALOS-2、写真測量、レーダーグラメトリ

南極大陸における基礎的情報を整備することは重要であり、効率的に地形情報を把握するためには空中写真を用いることが有効である。しかし、極地域のような特殊かつ過酷な環境下では航空機の運用が難しく、航空写真は局地的な撮影に留まっている。このため、南極地域で広範囲の数値地形モデルデータ及び地図データを整備するにあたっては、衛星画像データが積極的に活用されている。この中で1/50,000地形図においては、ALOS/PRISM画像が使用されており、当センサーを搭載しているALOSは全球地域を対象として分解能2.5m相当のパンクロマチック画像を撮影しているため、数値地形モデルデータの作成に適した衛星であった。しかし、同衛星は2011年に運用を停止しているため、アーカイブ画像も現状把握を目的とするには古くなりつつあり、場所によっては被雲やブリザード等で地表が確認できない範囲も存在する。そこで本調査では、光学およびSAR両方の衛星による南極地域の数値地形モデルデータ作成を行い、地形情報を把握する手段としてALOS/PRISMに代替できるものであるか検証報告を行う。
対象地域は基準点が多く存在するオングル島昭和基地周辺とした。使用衛星は、光学画像を用いた手法として、ALOS/PRISMより分解能に優れステレオ撮影が可能であるAirbus社SPOT6&7を採用した。また、SAR画像を用いた手法としてALOS-2/PALSAR-2を採用した。
光学画像を用いた手法ではSPOT6&7を用いて2021年2月に昭和基地周辺でステレオ新規撮影を行った。これを用いて写真測量処理により数値地形モデルデータを作成した。ステレオ撮影範囲は昭和基地周辺に加えて、タイポイントを配せる程度のラップ範囲を維持しつつ南極大陸内陸部も併せて撮影した。SPOT6&7は分解能1.5m相当のパンクロマチックセンサに加え、マルチスペクトルセンサと合わせパンシャープン画像を作成することができるため、地物の視認性に優れている。このため、これまで判読が困難だった対空標識を標定可能となる、地表の細かな特徴にタイポイントを配することができるなど、画像標定の精度向上が期待できるものであった。
SAR画像を用いた手法では、SPOT6&7で観測された範囲に合わせて2018年撮影のALOS-2/PALSAR-2アーカイブ画像を調達し、レーダグラメトリによる数値地形モデルデータ作成を行った。SAR画像を数値図化に利用する例は多くないが、光学画像と比較して気象条件に左右されにくいためより確実に地形情報を捉えることができ、被雲ブリザード等の多い南極地域において非常に有効であると考えられる。一方で南極地域は地表面の多くが雪氷に覆われており、雪氷域に対してSAR画像がどの程度有効であるか検証した。
これら二つの手法から作成された数値地形モデルデータは基準点および既存のALOS/PRISMから作成された地形データと比較し、1/50,000地形図データを作成するのに十分な精度を確保できているか検証した。