日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、松尾 功二(国土地理院)、座長:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、松尾 功二(国土地理院)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)

11:00 〜 13:00

[SGD02-P07] (準)周期的変動を含む時系列データのLSTM深層学習

*三井 雄太1 (1.静岡大学理学部地球科学科)

キーワード:Deep learning、LSTM、Machine learning

測地学で扱う時系列データには、潮汐や地球回転、地下水などを起源とする周期的変動が頻繁に含まれる。潮汐のように精巧な物理モデルが構築されている場合や、変動周期が固定の場合、これらの周期的変動を評価することは容易である。しかし、変動周期が揺らぐ場合や、様々なノイズの影響で変動周期が明瞭でない場合もある。このようなデータを解析するための1つの手段として、多層型ニューラルネットワーク(深層学習)を導入し、(準)周期的変動の評価を試みる。

GNSS時系列データに対する機械学習を試行した先行研究(Yamaga and Mitsui, 2019)と同様に、時系列データの学習に適した再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いる。RNNでは、ある時間窓ぶんのデータを入力として、続くデータを出力とする。時間窓をずらしながら、入力と出力の間にある中間層のパラメータを推定し、入力―出力間の関係性を学習させる。その後、学習に用いていない時間範囲のデータを改めて入力し、その出力を予測値として得る。中間層には、長期間の履歴情報を記憶できるLSTMユニット(Hochreiter and Schmidhuber, 1997)を複数配置する。本研究では、中間層自体も4層設定し、深層学習を可能とする。

まず、周期的変動へランダムノイズを加えた人工データに対する数値テストを試行した。三角関数5周期分の人工データに対し、2周期分の時間窓をずらしながらLSTMの深層学習を行った。その後、3周期分の予測値を出力し、人工データとの整合性を調べた。この深層学習の結果と、三角関数の周期を予め与えた回帰分析の結果とを、残差絶対値和の値で比較した。その結果、ランダムノイズの振幅が三角関数の振幅に対して数十%程度だったとき、深層学習が回帰分析を超える予測性能を発揮した。一方で、ノイズ振幅がさらに大きくなると、深層学習の予測性能は大きく低下した。逆に、ノイズ振幅がより小さい場合も、単純な回帰分析を超える予測性能は得られなかった。このように、深層学習はノイズ除去等に強力なツールとなり得るが、高い性能を発揮するには、ある程度整った条件が必要と考えられる。発表では、実際の測地データに対する数値実験の結果も示す。