日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL23] 地球年代学・同位体地球科学

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (23) (Ch.23)

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:佐野 有司(高知大学海洋コア総合研究センター)、座長:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(高知大学海洋コア総合研究センター)

11:00 〜 13:00

[SGL23-P05] Am線源,Cf線源を利用したアルファリコイルトラックの形成実験

*中島 大輝1長谷部 徳子1、横山 明彦1、山田 記大1、飯沼 勇人2、高宮 幸一2 (1.金沢大学、2.京都大学)

キーワード:アルファリコイルトラック、年代測定

1.はじめに
アルファリコイルトラック(ART)は、238U、235U、232Th、およびその娘核種がアルファ壊変した際に残った原子核がその反動で動いたときにできる損傷のことである。ウランやトリウムの壊変定数は決まっているため、決まった速度で時間とともにARTが増加することから、ART数とウラン濃度を測定することで年代を算出することができると考えられている。
しかし、年代既知のジルコンにART年代測定法を適用したところ、期待される年代よりも若く算出された(早坂, 2018)。その原因として、ARTの認定の不正確さによるART数の過小評価やARTの形成過程が不明なため経過時間に比例してARTが増加しているのかどうかがわからないことが考えられる。そのことを確認するためには、ジルコンに人工的にARTを発生させ、観察することが必要である。
本研究ではARTが時間とともに増加するか確認する最初のステップとして、鉱物に人工的にARTを作成する方法を確立することを目的とする。

2.人工的なARTの作成
ARTを人工的に作成するためには、アルファ壊変する重元素を鉱物表面に作用させる必要がある。放射性元素はアルファ壊変を行うものを用い、アルファ壊変によって動いた原子核が鉱物の方へ移動することによって、ARTを形成する。中島他(2021)では、自作の241Am線源と3MBqの金属板を利用したが濃度の低さや線源のコーティングの問題でうまくいかなかった。本研究では、241Am線源(300Bq)と 252Cf線源(100Bqと1kBq)の三種類を使用した。照射実験は京都大学複合原子力科学研究所で行った。照射時間はAm線源では1日と2週間、Cf線源では5分、10分、1日のパターンで照射を行った。今回は照射試料として、白雲母を用いて観察を行った。白雲母は劈開面を観察することにより、ノイズや研磨の影響を考慮する必要がなく、またエッチングによりARTを大きくできるため、顕微鏡で容易にARTを観察することができる(Googen and Wagner, 2000)。

3,結果
 Am線源による照射試料では、照射時間の増加に伴って照射面の凹凸が増加していることが観察できた。今回は照射時間が2パターン(1日と2週間)であったため、今後照射時間のパターンを増やして検討を行っていく必要がある。Cf線源では、どちらの線源も自発核分裂によって生じるフィッショントラックが多すぎて、ARTの吟味を行うことができなかった。