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[SGL24-08] 秋吉石灰岩体の逆転モデルの再検討-山口県美祢市のペルム系非石灰岩相の転倒褶曲構造-
キーワード:大規模逆転構造、転倒褶曲、付加体、秋吉帯、海山の沈み込み、美祢市
秋吉石灰岩は,山口県中央部に広く分布する石炭紀~ペルム紀の海山を覆う石灰岩である.小澤(1923)によってその大部分が逆転していることが発見されて以来,逆転構造に関して数多くの研究がなされてきた(藤川ほか,2019).その中でも,Sano and Kanmera(1991)は海溝域において沈み込む海山が崩壊するモデルを提唱し,それまでの解釈を一新した.しかし,近年,その堆積場や地質構造に関して,これと異なる見解も報告されていることから(Wakita et al.,2018;配川,2019など),逆転構造およびその成因の問題は解決していないと言える.これまでは,石灰岩に主眼を置いた研究が多く,非石灰岩相の詳細な研究は乏しかった.そこで,我々は秋吉帯の非石灰岩相の地質構造を把握することを目的とし,秋吉石灰岩体の南側および北西側にて,大田ユニット,別府ユニットの地表地質調査を実施した.その際,初生的堆積構造およびチャート-砕屑岩シークエンスによる上下判定および褶曲構造の記載等に基づき地質構造の推定を行った.
秋吉石灰岩体の南側,伊佐町には後期ペルム紀付加体の大田ユニットが分布する.これは秋吉石灰岩体の構造的・層序的下位に位置する.下位から,玄武岩質石灰質頁岩,石灰岩,石灰質珪質頁岩・チャート互層,チャート,多色頁岩,泥岩,砂岩というシークエンスが不完全ながら認められる.地層は東北東-西南西走向,高角度北および南傾斜,北上位であり,それらを北東-南西系,南北系の断層が切断する.地質図スケールの褶曲構造は認められない.秋吉石灰岩体の北西,於福町には後期ペルム紀付加体である別府ユニットが分布し,チャート,珪質泥岩,泥岩,砂岩を主体とし,酸性凝灰岩を伴う.岩の滝地域にはチャートが広く分布し,そのチャート中に北西-南東走向,低角度南西傾斜の転倒背斜が存在する.この褶曲の南西翼は南西上位で上下正常,北東翼は北東上位で逆転している.この逆転域では,チャート-砕屑岩シークエンスも逆転している.別府ユニットの上位には常森層の含礫泥岩が小規模に累重する.常森層は含礫泥岩,泥岩を主体とし,砂岩を含む後期ペルム紀の堆積岩である.泥岩中に数mを超える石灰岩の礫を含むことがある.これはSano and Kanmera(1991)によって付加体と解釈されたが,岩相,層序,変形組織の乏しさ,再堆積石灰質化石,植物化石,有機物熟成度,等に基づくと,付加体ではなくより浅海の前弧海盆ないし陸棚堆積盆にて形成された可能性が高い(Wakita et al.,2018;志原・辻,2022).秋吉石灰岩体の西側に分布する常森層は,低角度の軸面を有する転倒褶曲構造をなし,その構造を切るように上位に石灰岩体が低角度に累重する(志原・辻,2022).この石灰岩体は,逆転層をなす秋吉石灰岩体に連続する.このことは,逆転した秋吉石灰岩と,それより下位の地層で地質構造が全く異なることを意味する.以上のことから,秋吉石灰岩と常森層の接触関係について以下の仮説を提案する.まず,常森層の泥堆積時に,秋吉石灰岩を載せた海山の崩壊が発生し,礫として常森層の泥岩中に混在した.続いて,常森層に応力がかかり転倒褶曲が形成された.その後に,逆転した秋吉石灰岩が常森層の上位に移動してきた.この石灰岩の移動により,常森層の上部が切り取られた.
秋吉石灰岩体の南側,伊佐町には後期ペルム紀付加体の大田ユニットが分布する.これは秋吉石灰岩体の構造的・層序的下位に位置する.下位から,玄武岩質石灰質頁岩,石灰岩,石灰質珪質頁岩・チャート互層,チャート,多色頁岩,泥岩,砂岩というシークエンスが不完全ながら認められる.地層は東北東-西南西走向,高角度北および南傾斜,北上位であり,それらを北東-南西系,南北系の断層が切断する.地質図スケールの褶曲構造は認められない.秋吉石灰岩体の北西,於福町には後期ペルム紀付加体である別府ユニットが分布し,チャート,珪質泥岩,泥岩,砂岩を主体とし,酸性凝灰岩を伴う.岩の滝地域にはチャートが広く分布し,そのチャート中に北西-南東走向,低角度南西傾斜の転倒背斜が存在する.この褶曲の南西翼は南西上位で上下正常,北東翼は北東上位で逆転している.この逆転域では,チャート-砕屑岩シークエンスも逆転している.別府ユニットの上位には常森層の含礫泥岩が小規模に累重する.常森層は含礫泥岩,泥岩を主体とし,砂岩を含む後期ペルム紀の堆積岩である.泥岩中に数mを超える石灰岩の礫を含むことがある.これはSano and Kanmera(1991)によって付加体と解釈されたが,岩相,層序,変形組織の乏しさ,再堆積石灰質化石,植物化石,有機物熟成度,等に基づくと,付加体ではなくより浅海の前弧海盆ないし陸棚堆積盆にて形成された可能性が高い(Wakita et al.,2018;志原・辻,2022).秋吉石灰岩体の西側に分布する常森層は,低角度の軸面を有する転倒褶曲構造をなし,その構造を切るように上位に石灰岩体が低角度に累重する(志原・辻,2022).この石灰岩体は,逆転層をなす秋吉石灰岩体に連続する.このことは,逆転した秋吉石灰岩と,それより下位の地層で地質構造が全く異なることを意味する.以上のことから,秋吉石灰岩と常森層の接触関係について以下の仮説を提案する.まず,常森層の泥堆積時に,秋吉石灰岩を載せた海山の崩壊が発生し,礫として常森層の泥岩中に混在した.続いて,常森層に応力がかかり転倒褶曲が形成された.その後に,逆転した秋吉石灰岩が常森層の上位に移動してきた.この石灰岩の移動により,常森層の上部が切り取られた.