日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL24] 日本列島および東アジアの地質と構造発達史

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (24) (Ch.24)

コンビーナ:細井 淳(産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)、コンビーナ:大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

11:00 〜 13:00

[SGL24-P07] 高知県室戸半島に露出した古第三系室戸層の変形構造

*松元 日向子1藤内 智士1 (1.高知大学)


キーワード:四万十帯、古第三紀、沈み込み帯、海底地すべり体

四国沖のフィリピン海プレートの沈み込みは,中新世初期から中期(約23〜16 Ma)に始まる.それ以前の沈み込み帯地域の様子については,複数の先行研究があるものの,まだ議論の余地がある.日本南西部,室戸半島の古第三紀の堆積物の変形構造が当時のプレート沈み込みの影響を反映している必要がある.このため,この地域の形成観察の推定がこの問題を解決するための鍵となると考えた.本研究では、行当岬の古第三紀室戸層の地質図と構造解析を行った.
この地域の地層は全層厚が約230 mで,全体として北東-南西走向,北西に60度以上傾斜しており,北西上位である.地層は主に砂岩と泥岩の比率と変形特性に基づいて7つの岩相に分類した.さらに,これらの岩相のいくつかは,主に下部の砂質泥岩層と上部の砕屑注入岩層によって特徴付けられる特定のシーケンスを示す.このシーケンスの下部から中部には層平行短縮を示すスラストが,上部には層平行伸張を示す正断層が発達している.シーケンスの褶曲とスラストに基づいて推定したせん断方向は,周囲の砂岩の底痕から推定した古流向と平行である.
合計9つのシーケンスを調査地域で認めた.個々の厚さは約1から25 mであり、調査地域の総層厚の40%を占める.層厚の薄い層や露出が不十分な層ではシーケンスの一部が欠如するが,内部構造は類似している.したがって,すべてのシーケンスはいずれも同じメカニズムによって形成されたと判断した.砕屑注入岩,未固結の褶曲,引張断層は,これらの変形が未固結の層で起こったことを示す.底部の砂質泥岩層は,変形した層が粒子分離前の短距離移動によって堆積したことを示す.以上のことから,砂岩優勢層とシーケンスは,それぞれチャネルフィルと海底地すべり堆積物であると考えた.砕屑注入岩は他の変形構造を切っており,かつ,複数のシーケンスには跨っていないことから,多くは地すべり体の移動直後にできたと判断した.他の地域の室戸層でも同様の変形特性が見られ,この地域の古第三紀プレート再構築の鍵となる可能性がある.