日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT17] 地球型惑星内部での液体の特性とその役割

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:坂巻 竜也(東北大学大学院理学研究科)、コンビーナ:中島 陽一(熊本大学大学院先導機構)、座長:坂巻 竜也(東北大学大学院理学研究科)、中島 陽一(熊本大学大学院先導機構)

13:45 〜 14:05

[SIT17-01] 太陽系の内部海に関するいくつかの研究トピックス

★招待講演

*鎌田 俊一1 (1.北海道大学 理学研究院)

キーワード:内部海、氷天体、太陽系

ここ数十年にわたる数々の惑星探査において、様々な種類の詳細な接近・その場観測が行われてきた。それにより、地球以外にも海をもっている天体がこの太陽系の中にも複数あることが確実視されてきた。これらの海は氷天体の地下深くにあるため、「内部海(または地下海)」と呼ばれている。現在までに得られた限定的な情報をもとに、内部海を対象とした多様な研究が展開されている。本発表では、3つの研究テーマについて取り扱う。

 1点目は、内部海までの深さ(海より上にある氷で出来た地殻の厚さ)である。これは、氷天体表面のテクトニクスや表層と海洋の物質交換における重要な要素である。エウロパでは表面の地形から、エンセラダスでは衛星の回転運動から見積もられている。ガニメデについては、日欧共同のJUICEミッションにおける潮汐変形の観測で制約が与えられるだろう。

 2点目は内部海の組成であり、これは内部海のハビタビリティの評価に必須である。エウロパでは表層物質から、エンセラダスではプルーム組成から推定が進んでいる。後者ついては、海底で高温水岩石反応が今現在進行中であることも示唆されている。

 3点目は、内部海の維持メカニズムであり、これは内部海の普遍性の理解に重要な要素である。熱輸送の観点からすると、水氷でできた「蓋」は海を現在まで保たせることはできない。そのため、今現在内部海が存在しているということは、天体内部での熱生成が十分であるか、天体内部での熱輸送が非効率であることが必要である。氷衛星では潮汐による熱生成が重要であるが、古典的な潮汐理論の予測する加熱量では不十分な場合も多い。そのため、衛星系における潮汐の理論的研究が進められている。また、冥王星のような太陽系外縁天体では潮汐加熱が効かないため、非効率な熱輸送が必要である。クラスレートハイドレートの形成は、熱輸送効率低下に大きく寄与するだろう。