15:30 〜 15:45
[SIT19-07] 下部マントル条件下での天然含水玄武岩の相関係
キーワード:下部マントル、含水玄武岩、水輸送、Alに富む含水H相
地球深部に沈み込むスラブ上部を構成する玄武岩層は、水を地球深部へもたらす役割を担っていないと考えられていた。玄武岩中に存在可能な含水鉱物であるフェンジャイトやローソナイトが、10GPa以下の低圧領域で脱水分解するからである。しかし比較的低温である沈み込む冷たいスラブの玄武岩岩中では、より高い圧力まで連続して、含水鉱物が存在する可能性が示唆されている。即ち、近年の圧力26GPaまでの含水玄武岩に対する実験結果によると、比較的低圧の領域ではFe-Ti酸化水酸化物、マントル遷移層付近ではAlに富む含水D相、下部マントル領域ではAlに富む含水H相(以下Al-PhH)の存在が報告されている。広範な圧力下で玄武岩中に含水鉱物が存在する事実は、玄武岩による下部マントル領域への水輸送が起こり得ることを意味する。本研究では、圧力27GPa以上の、下部マントルのより深い領域に対応する圧力条件下において、含水玄武岩中の相関係を、特に含水鉱物の安定性に焦点を当てて解明することを目指した。
出発物質として、2.59wt%の水を含む天然玄武岩試料であるJB-1bを用いた。高温高圧実験にはマルチアンビル型装置を用い、圧力27GPaで1000℃、1200℃、1400℃、また30GPaでは1200℃、1400℃の温度において、2時間から36時間の保持を行った。実験の結果、これらの圧力温度領域では、Alに富むブリッジマナイト、Alに富むスティショヴァイト、カルシウムペロヴスカイト、NAL相、Kに富むホランダイト、含水鉱物であるAl-PhHの生成が確認された。このうちAl-PhHは、27GPaでは1200℃、30GPaでは1200℃と1400℃の温度圧力条件下で確認された。SEM-EDS定量分析に基づくAl-PhH中の水の量と、マスバランス計算による鉱物割合の推定結果を考慮すると、下部マントル上部領域においては、含水玄武岩JB-1b中のAl-PhHに1.5-3.0wt%程度の水が保持可能である。本研究の結果から、沈み込むスラブ上部に対応する比較的低温の条件では、少なくとも30GPaまでは含水鉱物Al-PhHが安定して存在可能であり、含水玄武岩によって下部マントル領域に水がもたらされる可能性が示唆される。発表では、焼結ダイヤモンドアンビルを用いた更に高温高圧領域での実験結果も加えた報告を行う予定である。
出発物質として、2.59wt%の水を含む天然玄武岩試料であるJB-1bを用いた。高温高圧実験にはマルチアンビル型装置を用い、圧力27GPaで1000℃、1200℃、1400℃、また30GPaでは1200℃、1400℃の温度において、2時間から36時間の保持を行った。実験の結果、これらの圧力温度領域では、Alに富むブリッジマナイト、Alに富むスティショヴァイト、カルシウムペロヴスカイト、NAL相、Kに富むホランダイト、含水鉱物であるAl-PhHの生成が確認された。このうちAl-PhHは、27GPaでは1200℃、30GPaでは1200℃と1400℃の温度圧力条件下で確認された。SEM-EDS定量分析に基づくAl-PhH中の水の量と、マスバランス計算による鉱物割合の推定結果を考慮すると、下部マントル上部領域においては、含水玄武岩JB-1b中のAl-PhHに1.5-3.0wt%程度の水が保持可能である。本研究の結果から、沈み込むスラブ上部に対応する比較的低温の条件では、少なくとも30GPaまでは含水鉱物Al-PhHが安定して存在可能であり、含水玄武岩によって下部マントル領域に水がもたらされる可能性が示唆される。発表では、焼結ダイヤモンドアンビルを用いた更に高温高圧領域での実験結果も加えた報告を行う予定である。