日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT22] 固体地球科学と材料科学の融合が切り拓く新展開

2022年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:土屋 旬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、大村 訓史(広島工業大学)、コンビーナ:辻野 典秀(岡山大学・惑星物質研究所)、座長:河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、土屋 旬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、大村 訓史(広島工業大学)、辻野 典秀(岡山大学・惑星物質研究所)

15:00 〜 15:15

[SIT22-05] 透明ナノセラミックスの超高圧合成と地球惑星科学への応用

*入舩 徹男1 (1.愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:透明ナノセラミックス、超高圧合成、ナノ多結晶ダイヤモンド

セラミックスはケイ酸塩・酸化物・窒化物などからなる多結晶体であり、通常は粒界における空孔や不純物の存在により不透明であるが、低い熱伝導率や電気伝導率を持つことにより様々な用途にもちいられている。近年の焼結技術や原料として用いる粉体の改良により、空孔が極めて少なく透光性の高いセラミックス(「透明セラミックス」)の合成が可能になり、レーザーやレンズなどに応用されている。これらの透明セラミックスは光学的等方体である立方晶系の結晶からできているが、結晶粒径を光の波長よりはるかに小さいナノ領域(100 nm以下)にできれば、非立方晶系の結晶でも高い透光性を示すことが予想されていた。しかし、通常の常圧下や比較的低い圧力下でのHIPやSPSなどの手法では、空孔のないナノセラミックスの合成は困難であった。
我々はマルチアンビル装置を用いた超高圧合成技術により、ナノ多結晶ダイヤモンド(「ヒメダイヤ」)やナノ多結晶ガーネットを始め、ナノ領域の粒径を有する様々な高圧相鉱物の高品質な多結晶体の合成を可能にした。これらのナノ多結晶体の多くは高い透光性を示すとともに、単結晶に比べて高い硬度を有している。また高い靭性や耐熱性を示すものもあり、今後様々な分野への応用が期待される。実際ヒメダイヤは製品化されるとともに、超高圧装置のアンビル等として活用されている。その他のナノ多結晶体も、それらの高い透光性により、ブリルアン散乱法による弾性波速度測定や、レーザー圧縮実験の試料としても利用されている。本発表では、このような超高圧下で得られる「透明ナノセラミックス」の合成方法や試料の特徴について概観するとともに、その地球惑星科学への応用例について報告する。