日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP25] Supercontinents and Crustal Evolution

2022年5月26日(木) 15:30 〜 17:00 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:外田 智千(国立極地研究所)、コンビーナ:河上 哲生(京都大学大学院理学研究科)、Satish-Kumar Madhusoodhan(Department of Geology, Faculty of Science, Niigata University)、コンビーナ:Sajeev Krishnan(Centre for Earth Sciences, Indian Institute of Science)、座長:Sajeev Krishnan(Centre for Earth Sciences, Indian Institute of Science)、Satish-Kumar Madhusoodhan(Department of Geology, Faculty of Science, Niigata University)

15:45 〜 16:00

[SMP25-08] 島弧深部プロセスの解明に向けて
阿武隈帯西堂平層に産する角閃石質超苦鉄質岩

*若園 映1森下 知晃2田村 明弘3板野 敬太4 (1.金沢大学大学院自然科学研究科自然システム学専攻、2.金沢大学理工研究域地球社会基盤学系、3.金沢大学理工学域自然システム学類、4.秋田大学)

キーワード:角閃石質超苦鉄質岩

はじめに
島弧火山岩の希土類元素量比の分析により、地殻深部においてメルトから角閃石が取り除かれるプロセスが生じている可能性があることが指摘されている(Davidson., 2007)。しかしながら、メルトから取り除かれる角閃石が火山岩中の斑晶として確認することは難しい。深成岩体に産出する角閃石に富む超苦鉄質岩を調査することで、地殻深部プロセスの解明に貢献することが期待される。
本研究では,粗粒な角閃石がカンラン石を包むポイキリティック組織を持つことが特徴である,カンラン石輝石角閃石岩∼角閃石カンラン岩に着目する.以下ではこれを角閃石質超苦鉄質岩と呼ぶ.
 角閃石質超苦鉄質岩は,日本でも産出規模は小さいが,飛騨帯・領家帯・阿武隈帯といった広域変成帯や(小楠2018卒論:手塚,1980:嶋岡・渡辺,1976など),オフィオライトの下部地殻-マントル境界の岩体において(Ishiwatari et al., 1985:Ozawa et al., 2015など)いくつかの報告例がある.今回我々は阿武隈帯に属する茨城県常陸太田市で産出する角閃石質超苦鉄質岩及び,花崗岩を研究対象とし,それらの全岩及び鉱物の化学組成及び,ジルコンのU-Pb年代測定・Hf同位体分析から,形成時の温度圧力条件や,親マグマの推定を行い,島弧の形成過程解明の手掛かりを得ること目的としている.
結果
西堂平産の角閃石質超苦鉄質岩は角閃石,単斜輝石,カンラン石,黒雲母,少量の直方輝石,少量の不透明鉱物(硫化鉄鉱・イルメナイト),少量の滑石によって構成されている.カンラン石・単斜輝石・黒雲母・直方輝石・不透明鉱物は角閃石に包有されている.直方輝石は滑石を包有する.
全岩化学組成のSiO₂含有量は48~49wt%,Mg#は0.74~0.76である.
角閃石は黒色~褐色~緑色と色の遷移がある.黒色角閃石はTiO₂が高く,褐色~緑色角閃石にかけてTiO₂が乏しくなる傾向がある.また微量元素はどの色の角閃石も軽希土類元素に富み,重希土類元素に枯渇する.黒色角閃石と褐色角閃石はその傾向が類似しているが,褐色角閃石中の軽希土類元素は黒色角閃石よりやや富んでいる.緑色角閃石は上記の角閃石よりも低濃度を示している.
角閃石質超苦鉄質岩から得られたジルコンの大きさは100~200 µm,他形で振動累帯構造をもつ.CL像で内部が黒く見えるものが多い.花崗岩から得られたジルコンの大きさは100~200 µm,自形で振動累帯構造をもち,いくつかの内部にはアパタイトの包有物が存在する.
考察
黒色角閃石と褐色角閃石の希土類元素パターンは類似した傾向を示しているため,同一マグマからの結晶化によるものであると考えられる.褐色角閃石は黒色角閃石よりやや希土類元素に富む特徴は,晶出順序を反映している.黒色角閃石が晶出後の残液は希土類元素に富んでいる.その残液から晶出した角閃石は褐色角閃石となる.