11:00 〜 13:00
[SMP26-P02] B2-bcc Fe1-xSixの状態方程式
キーワード:FeSi、状態方程式、内核、KKR-CPA
地球の内核は、ニッケルと数%の軽元素を含む鉄合金であると考えられている(例えば、Birch 1952)。軽元素の候補のひとつであるSiを多く含むFe–Si系合金では、高温高圧下でB2構造または体心立方(bcc)構造を取る立方晶相が安定になる(Fischer et al. 2013, Ikuta et al. 2021)。FeSi合金におけるB2構造とは、(0, 0, 0)に位置するFe原子に対してSi原子が(1/2, 1/2, 1/2)に規則的に配列した構造である。これに対し、bcc構造はFe原子とSi原子がこれらふたつのサイトを不規則に占有した構造である。規則的なB2構造と不規則的なbcc構造間の転移は2次の相転移であるため、その不規則度は連続的に変化しうる。先行研究の実験ではX線回折構造解析を用い、B2構造に特有の001面と111面の回折線の観察により相同定している。しかしこれらの回折線は完全なbcc相でない限り消失せず、B2相であっても有限の不規則度を持ちうる。そこで本研究では、Korringa-Kohn-Rostoker (KKR)法にコヒーレントポテンシャル近似(CPA)を組み合わせてB2及びbcc構造を持つFe1-xSixの状態方程式を求めた。このことは、ギブスエネルギーを比較することで2つの構造間の相転移温度の議論につながる可能性がある。
Fe1-xSix(x =0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5)の各組成のB2構造、bcc構造、及びその中間構造の全エネルギーを計算した。Kohn-Sham方程式はKKR法により解いた。化学不規則は、CPAにより取り扱った。体積範囲は75-200 Bohr3 (11.11-29.64 Å3)とした。交換相関汎関数として一般化勾配近似型のもの(PBE)を用いた(Perdew et al. 1996)。スピン分極計算と非スピン分極計算の両方を行った。得られた全エネルギーを3次のBirch-Murnaghan状態方程式でフィッティングした。
まずは端成分となる組成(x = 0, 0.5)の計算結果が、先行研究の実験結果を再現することを確認した。強磁性の純鉄の計算結果はJephcoat et al. (1986)の実験とよく一致し、非磁性のFeSiのB2構造の結果はSata et al. (2010)の実験とよく一致した。次に組成や磁性、不規則度の変化に対する格子体積への影響を確認した。組成の影響に関しては、非磁性のB2構造に着目すると、Fe濃度が増加するにつれて体積が増大する傾向が見られた。磁性の影響に関しては、非磁性よりも強磁性の体積の方が大きくなった。不規則度の影響に関しては、B2相よりもbcc相の体積の方が大きくなった。最後に内核がB2またはbcc Fe1-xSix単相であると仮定して、Si濃度の議論を行う。本研究により得られた状態方程式から、内核に相当する密度における圧力とバルク音速を計算した。その結果、Si濃度が上昇するほど圧力もバルク音速も上昇することが明らかになった。ただし、本研究により得られた状態方程式は絶対零度におけるものである。一般的に、温度上昇に伴って圧力は上昇し、バルク音速は低下することが期待される。本研究により得られた圧力とバルク音速を地球内部構造モデルのひとつであるPreliminary reference Earth model (PREM) (Dziewonski and Anderson 1981)と比較した。Fe0.8Si0.2の内核密度における圧力は、PREMの値よりも高くなった。この事は、内核組成に対して x < 0.2 の制約を課す。同様にFe0.9Si0.1のバルク音速は、PREMの値よりも低くなり、内核組成に x > 0.1 の制約を課す。したがって、内核がB2相やbcc相のみからなるとすると、内核の組成はFe0.8Si0.2とFe0.9Si0.1の間であると考えられる。
Fe1-xSix(x =0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5)の各組成のB2構造、bcc構造、及びその中間構造の全エネルギーを計算した。Kohn-Sham方程式はKKR法により解いた。化学不規則は、CPAにより取り扱った。体積範囲は75-200 Bohr3 (11.11-29.64 Å3)とした。交換相関汎関数として一般化勾配近似型のもの(PBE)を用いた(Perdew et al. 1996)。スピン分極計算と非スピン分極計算の両方を行った。得られた全エネルギーを3次のBirch-Murnaghan状態方程式でフィッティングした。
まずは端成分となる組成(x = 0, 0.5)の計算結果が、先行研究の実験結果を再現することを確認した。強磁性の純鉄の計算結果はJephcoat et al. (1986)の実験とよく一致し、非磁性のFeSiのB2構造の結果はSata et al. (2010)の実験とよく一致した。次に組成や磁性、不規則度の変化に対する格子体積への影響を確認した。組成の影響に関しては、非磁性のB2構造に着目すると、Fe濃度が増加するにつれて体積が増大する傾向が見られた。磁性の影響に関しては、非磁性よりも強磁性の体積の方が大きくなった。不規則度の影響に関しては、B2相よりもbcc相の体積の方が大きくなった。最後に内核がB2またはbcc Fe1-xSix単相であると仮定して、Si濃度の議論を行う。本研究により得られた状態方程式から、内核に相当する密度における圧力とバルク音速を計算した。その結果、Si濃度が上昇するほど圧力もバルク音速も上昇することが明らかになった。ただし、本研究により得られた状態方程式は絶対零度におけるものである。一般的に、温度上昇に伴って圧力は上昇し、バルク音速は低下することが期待される。本研究により得られた圧力とバルク音速を地球内部構造モデルのひとつであるPreliminary reference Earth model (PREM) (Dziewonski and Anderson 1981)と比較した。Fe0.8Si0.2の内核密度における圧力は、PREMの値よりも高くなった。この事は、内核組成に対して x < 0.2 の制約を課す。同様にFe0.9Si0.1のバルク音速は、PREMの値よりも低くなり、内核組成に x > 0.1 の制約を課す。したがって、内核がB2相やbcc相のみからなるとすると、内核の組成はFe0.8Si0.2とFe0.9Si0.1の間であると考えられる。