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[SMP27-08] 中部地方三波川帯渋川地域の変成条件と苦鉄質片岩の起源
キーワード:三波川帯、ラマン分光法、低変成度、変成条件、原岩
中部地方渋川地域の三波川結晶片岩類にラマン分光法を応用した地質温度圧力計を適用し、ピーク変成条件の制約を試みた。渋川地域は愛知・静岡県境付近に位置し、緑泥石帯に相当する三波川結晶片岩類と超苦鉄質岩や角閃石岩を伴う御荷鉾緑色岩類からなる(牧本ほか, 2004)。本地域は結晶片岩中からひすい輝石、ローソン石、Na角閃石といった低温高圧変成作用の指標とされる鉱物の報告がある(関ほか, 1959; 磯貝, 1977)一方、近年の研究に乏しく、定量的な変成条件の検討は行われていない。
炭質物ラマン温度計により求められた温度は307–395℃の範囲を示し、調査地域北西の中央構造線に向かって上昇する傾向が見られた。また、ざくろ石中の石英包有物にラマン地質圧力計を適用し、炭質物ラマン温度計で得られた温度を制約範囲とすると、ピーク変成条件0.76–0.93 GPa, 360–390℃が得られた。この数値は変成鉱物の出現と調和的であり、四国中央部ざくろ石帯のピーク圧力条件に相当する。
研究地域の苦鉄質片岩の一部は、斑れい岩的な組織や残晶といった原岩の痕跡を残す。単斜輝石残晶の組成分析から、原岩の一部はアルカリ玄武岩であると考えられる。また、角閃石残晶は塩素やチタンに富む、海洋底変成作用を示唆する組成を示した。この特徴は本地域の御荷鉾緑色岩に伴われる角閃石岩体と共通する。角閃石岩体は三波川結晶片岩類の原岩の沈み込み時には上盤側にあったと考えられるため、その一部が削剥され、沈み込んだ可能性がある。
磯貝(1977)広島大学出版会, 237–245.
牧本ほか(2004)地質調査総合センター, 7p.
関ほか(1959)地質雑 65, 618–623.
炭質物ラマン温度計により求められた温度は307–395℃の範囲を示し、調査地域北西の中央構造線に向かって上昇する傾向が見られた。また、ざくろ石中の石英包有物にラマン地質圧力計を適用し、炭質物ラマン温度計で得られた温度を制約範囲とすると、ピーク変成条件0.76–0.93 GPa, 360–390℃が得られた。この数値は変成鉱物の出現と調和的であり、四国中央部ざくろ石帯のピーク圧力条件に相当する。
研究地域の苦鉄質片岩の一部は、斑れい岩的な組織や残晶といった原岩の痕跡を残す。単斜輝石残晶の組成分析から、原岩の一部はアルカリ玄武岩であると考えられる。また、角閃石残晶は塩素やチタンに富む、海洋底変成作用を示唆する組成を示した。この特徴は本地域の御荷鉾緑色岩に伴われる角閃石岩体と共通する。角閃石岩体は三波川結晶片岩類の原岩の沈み込み時には上盤側にあったと考えられるため、その一部が削剥され、沈み込んだ可能性がある。
磯貝(1977)広島大学出版会, 237–245.
牧本ほか(2004)地質調査総合センター, 7p.
関ほか(1959)地質雑 65, 618–623.