日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP27] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2022年5月27日(金) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、コンビーナ:針金 由美子(産業技術総合研究所)、座長:谷部 功将(東京大学地震研究所)、針金 由美子(産業技術総合研究所)

15:45 〜 16:00

[SMP27-14] 新潟・山形県境に分布する日本国マイロナイトの構造岩石学的研究

*渡部 海翔1武藤 潤1横山 裕晃1長濱 裕幸1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)


キーワード:マイロナイト、動的再結晶、EBSD、格子定向配列(LPO)

新潟県・山形県境に位置する日本国山周辺には、日本国マイロナイト(高橋, 1998)が分布している。日本国マイロナイトは、高橋(1998)によって構造地質学的な研究が行われており、構成岩石はジュラ紀堆積岩起源の黒雲母白雲母片岩と、白亜紀深成岩起源の片麻状黒雲母花崗閃緑岩、片麻状黒雲母花崗岩、片麻状角閃石黒雲母花崗閃緑岩、石英閃緑岩からなる(高橋, 1998; 土谷ほか, 1999)。日本国マイロナイトは、白亜紀のマイロナイト帯であり、日本国マイロナイトの位置する日本国−三面帯(島津, 1964)は、剪断センス及びマイロナイト化作用の時期(越谷, 1986; 高橋, 1998)の点から、棚倉破砕帯の北方延長であるとされている。棚倉破砕帯では、マイロナイト化後に千枚岩化作用や脆性破壊などの運動により運動像が上書きされている(越谷, 1986)ことから、マイロナイト化当時の変形条件を解明するのは難しい。一方、日本国マイロナイト帯では、マイロナイト化後に脆性破壊などの新たな運動は生じておらず、剪断帯形成時の変形組織が保存された状態にある。このことから、日本国マイロナイトの変形条件を明らかにすることは、棚倉破砕帯のマイロナイト化の変形条件の推定にも繋がる。また、東北日本には、他にも畑川破砕帯(重松ほか, 2002; Tsurumi et al., 2003など)や、入良川マイロナイト帯(高橋, 2001; 綿貫ほか, 2017など)など、同様の白亜紀横ずれマイロナイト帯が存在している。日本国マイロナイトの変形条件を明らかにすることで、これらのマイロナイト帯との比較を行うことも可能である。
本研究では、現地にて日本国マイロナイトの構成岩石のうち黒雲母白雲母片岩と片麻状黒雲母花崗閃緑岩を採取し、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope; SEM)および電子線後方散乱回折 (Electron Backscattered Diffraction; EBSD) 分析を用いて変形条件を推定した。EBSD分析では、岩石中に含まれる動的再結晶石英粒子を対象とし分析を行った。その結果、明確な格子定向配列(Lattice Preferred Orientation; LPO)パターンが得られ、転位クリープによる流動変形であることが示された。また、EBSD分析にて得られた結晶方位データより、動的再結晶石英粒子の優先すべり系はrhomb <a>あるいはprism <a>のすべりを示した。このLPOパターン及び優先すべり系のデータより、他の優先すべり系から変形温度を制約する先行研究(竹下, 1996; Okudaira and Shigematsu, 2012; 綿貫ほか, 2017)を用いて、変形温度は400-450℃と推定した。また、EBSD分析時に得られた動的再結晶石英粒子の粒径から、Stipp and Tullis (2003)の粒径古応力計を用いて差応力を推定し、その値は62-114MPaであった。その後、Hirth et al. (2001)の石英の転位クリープの流動則を用いて、歪速度を推定し、その値は3.3×10-12-3.8×10-11 s-1であった。これらのデータをもとに、日本国マイロナイトの変形条件について報告する。

引用文献
Hirth, G. et al., 2001, Int. Jour. Earth Sci, 90, 77-87.
越谷信, 1986, 地質雑, 92, 15-29.
Okudaira, T. and Shigematsu, N., 2012, Jour. Geophys. Res., 117, B03210.
重松紀生ほか, 2003, 地学雑誌, 112, 897-914.
島津光夫, 1964, 地球科学, 71, 18-27.
Stipp, M. and Tullis, J., 2003, Geophys. Res. Lett., 30, 2088.
高橋浩, 1998, 地質雑, 104, 122-136.
高橋浩, 2001, 日本地質学会第108年学術大会講演要旨, 210.
竹下徹, 1996, 地質雑, 102, 211-222.
土谷信之ほか, 1999, 20万分の1地質図幅「村上」および同解説面. 8p.
Tsurumi, J. et al., 2003, Jour. Struct. Geol., 25, 557-574.
綿貫峻介ほか, 2017, 地質雑, 123, 533-549.