日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS06] 地震波伝播:理論と応用

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (18) (Ch.18)

コンビーナ:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、新部 貴夫(石油資源開発株式会社)、コンビーナ:岡本 京祐(産業技術総合研究所)、座長:白石 和也(海洋研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[SSS06-P01] 地球シミュレータ(ES4)を用いたスペクトル要素法による精度1.6秒の理論地震波形計算

*坪井 誠司1、Butler Rhett2、中川 剛史1 (1.海洋研究開発機構、2.ハワイ大学)

キーワード:理論地震波形計算、スペクトル要素法、地球内部構造

我々はこれまで、現実的な地球モデルに対して有限要素法の一種であるスペクトル要素法を用いて、全球地震波伝播計算を実施してきた。2016年には、京コンピュータの82,134ノード(全ノードの99%)により、地球モデルを6,652億個の格子点に分割することで周期約1.2秒の精度での理論地震波形記録計算を実施している(Tsuboi et al., 2016)。今回、2021年3月より稼働を開始した地球シミュレータ(ES4)システムにより同規模の計算を実施したので報告する。スペクトル要素法の計算では地球モデルの分割は地球全体を6個の四角錐に分割し、それぞれの四角錐をさらに細かい四角錐に分割してスーパーコンピュータの個々のCPUに割り当てて計算を実行する。今回の計算では、2,447億個の格子点に分割し周期1.6秒の精度で全球を伝播する理論地震波形を計算した。この場合のスペクトル要素法の分割を示すパラメータであるNEXとNPROCはそれぞれ2656と83であり、計算に用いる総コア数は41,334個、ES4のベクトルエンジン(VE)5168個である。このメッシュにおける格子点間隔は平均0.94kmとなっている。この規模の計算に対して、メッシュの計算には約30分のCPU時間、また23分間の理論地震波形計算に4時間40分のCPU時間がかかった。メッシュの大きさは約41Tbyteである。計算はNECのMPIをflat MPIで用い、MPI Program Informationによる実効性能は1.13PFLOPS、ベクトル化率は99%であった。この実効性能は5168VEの理論ピーク性能に対して約8.8%となっている。計算に用いた地球内部構造モデルは、球対称構造モデルはtransersely isotropic PREM(Dziewonski and Anderson,1981)、マントル3次元構造はs362ani (Kustowski et al., 2006)である。また、楕円体形状を取り入れ、減衰を考慮しているが、重力と自転の影響は考慮していない。地震と観測点の組み合わせは、Butler and Tsuboi (2010, 2020, 2021)で扱った、地震とその対蹠点における観測波形を対象とした。特に、2009年4月17日のチリ北部の地震(Ms6.1)による中国のQiongzhong観測点における記録を計算した。これは、Butler and Tsuboi (2010)で議論したCdiff相を再現する構造について検討するためである。用いたモデルと計算した理論地震波形については発表の際に述べる。
謝辞:本研究には海洋研究開発機構の地球シミュレータを用いた。スペクトル要素法のプログラムはSPECFEM3D_GLOBEを用いた。