日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS06] 地震波伝播:理論と応用

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (18) (Ch.18)

コンビーナ:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、新部 貴夫(石油資源開発株式会社)、コンビーナ:岡本 京祐(産業技術総合研究所)、座長:白石 和也(海洋研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[SSS06-P02] Quantifying the nonlinearity of strong-motion waveforms due to liquefaction using recurrence plots: The case of the 2016 Fukushima earthquake recorded on S-net

*村本 智也1,2久保 久彦3、古市 紀之2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.産業技術総合研究所 計量標準総合センター、3.防災科学技術研究所)

海底地震計で観測される強震動記録記録には、海底という設置環境に所以して、液状化に伴う非線形な地盤応答が往々にして生じるということが知られている(e.g., Kubo et al., 2019)。本研究では交差再帰定量化解析を用いて強振動記録に含まれる液状化に起因する波形の非線形性を定量的に評価する解析手法の開発を行った。交差再帰定量化解析はリカレンスプロット(e.g., Eckmann et al., 1987; Marwan et al., 2007)によって視覚化された時系列に対して行う解析であり、近年では固体地球物理学の分野でも活用され始めてきている(e.g., Hobbs and Ord, 2018)。リカレンスプロットは「2つの対応する時刻の状態間の距離が近ければ対応する場所に点を打つ」といった操作によるプロットである。リカレンスプロットはこのようにシンプルな定義ではあるが、ここから時系列データの背後にある力学系の様々な情報がわかる(Marwan et al., 2007)。強振動記録の非線形性の評価に交差再帰定量化解析を用いる利点としては、同一のフレームワークの中でエントロピー及びリアプノフ指数に準ずる複数の指標が計算できる点にある(Marwan et al., 2002)。本研究では得られたリカレンスプロットの斜めの線及び縦線・横線を特徴づける量としてそれらのパターンに関するエントロピーを計算し、得られた各種エントロピーが強震動記録の非線形性を代表する量かどうかを検討する為にKubo et al. (2019)に準じ最大加速度(PGA)との比較を行った。また、本研究ではリカレンスプロットを計算する為に構成されたアトラクタの次元依存性・遅れ時間依存性についても検討を行った。開発した解析手法を、2016年福島沖地震による強震動を観測した防災科学技術研究所の日本海溝海底地震津波観測網S-netの地震動記録記録に適用した。同地震の震源はS-netの近傍である為に、記録顕著な非線形地盤応答が生じていたと考えられる。本発表で提案する手法を適用したところ、各波形に階層的な構造が存在することが確認され、それは特に後続波において顕著であることが明らかになった。また、Determinism(線形性の指標)とエントロピーの負の相関が成り立っているということが明らかになった。これは、交差再起定量化解析を基に計算されたエントロピーの比較が波形間で可能であることを示唆する。