11:00 〜 13:00
[SSS06-P04] 遠地地震記録を用いた近畿地域地殻構造のリバースタイム反射波イメージング
キーワード:リバースタイム・イメージング、地震波イメージング、地殻構造
Hi-netなど稠密な常時地震観測網の発達により、日本全国で地震観測データが日々蓄積されており、これらを地下構造の推定に用いることが可能である。地震波干渉法(例えば、Wapenaar, 2003, Wapenaar and Fokkema, 2006)に基づく反射波を使ったイメージング手法は、地震波トモグラフィやレシーバ関数解析と比較してより高い解像度の構造推定が可能であるが発展中の手法である。
Artman (2006)は自然地震記録にイメージ条件(Claerbout, 1971)を適用して反射波イメージングを行う手法を提案した。Shiraishi and Watanabe (2021)は人工震源記録に対して用いられるリバースタイム・マイグレーション(RTM)を自然地震記録に適用するイメージング手法を提案した。本研究では、この手法を近畿地方における遠地地震記録へ適用した。まず構造モデルを用いた数値シミュレーションを行い、その後、臨時地震観測と定常地震観測網で得られた地震波形データを用いた構造イメージングを行った。
紀伊半島を中心とした距離400 km×深さ60 kmの速度構造モデル (Nakanishi et al., 2018)に対して、モデル底面より平面P波を入力して差分法(Virieux, 1986, Levander, 1988)により遠地地震による観測波形記録を作成し、本手法を適用して反射イメージを作成した。Shiraishi and Watanabe (2021)による近地地震記録の結果と比較すると、遠地地震を使用した方が浅部の偽像が低減し、深部構造もよりクリアにイメージされた。これは、遠地地震波が広い範囲にわたって均一に構造を照射するためと考えられる。実際の観測記録の使用を考慮して観測点の配置と数を変更したシミュレーションを行った結果、定常観測点だけでは十分でなく、臨時観測点を加えて平均間隔5 km程度の観測点密度とすることで構造解釈が可能であることがわかった。
2005年から2009年に行われた近畿地方の地殻構造探査(澁谷, 伊藤, 2007)の記録に本手法を適用した。連続波形データから841個の遠地地震のP波初動を含む60秒間の波形記録を切り出した。地震計特性の補正、Band-pass filter (0.2 – 1.5 Hz) と時間窓2秒のAutomatic Gain Control (AGC)を適用し、鉛直成分の波形記録を使用して音響波RTMイメージングを行った。速度構造にはMatsubara et al. (2019) を用いた。地震ごとに得られたイメージをスタックし、高傾斜の偽像と低周波ノイズを除去する波数フィルターを適用した後、ゲイン調整を行い、イメージを作成した。
測線北部では、水平方向に断続した反射イメージが複数認められ、これらは反射に富む断面上部の領域の下限となっているため陸側モホ面と解釈され、Matsubara et al. (2019)の速度構造やレシーバ関数解析 (Shibutani et al. 2008) による陸側モホ面とおおむね対応する。また、丹波山地直下の地殻内浅部地震の分布の下限を規定するほぼ水平な構造など、深さ10-25 kmに複数の反射イメージが得られた。これらは反射法探査 (Ito et al. 2006) 、自然地震(片尾, 2007) により有馬・高槻構造線(ATL)や中央構造線(MTL)との関連が指摘された反射面と対応している。測線の南部において、レシーバ関数解析 (Shibutani et al., 2008, Shiomi et al., 2008)では沈み込むフィリピン海プレートの海洋モホ面が推定されているが、本研究のイメージング結果ではプレートの沈み込みに沿って複数の反射体がイメージされたが、明瞭な連続した面として認められなかった。全体に反射イメージは連続性の低い断続的な散乱点イメージとして得られており、この理由として、地殻内の構造不均質の影響や速度構造の影響に加え、観測点密度と配置の影響や断面外からの波動の影響などが考えられる。
Artman (2006)は自然地震記録にイメージ条件(Claerbout, 1971)を適用して反射波イメージングを行う手法を提案した。Shiraishi and Watanabe (2021)は人工震源記録に対して用いられるリバースタイム・マイグレーション(RTM)を自然地震記録に適用するイメージング手法を提案した。本研究では、この手法を近畿地方における遠地地震記録へ適用した。まず構造モデルを用いた数値シミュレーションを行い、その後、臨時地震観測と定常地震観測網で得られた地震波形データを用いた構造イメージングを行った。
紀伊半島を中心とした距離400 km×深さ60 kmの速度構造モデル (Nakanishi et al., 2018)に対して、モデル底面より平面P波を入力して差分法(Virieux, 1986, Levander, 1988)により遠地地震による観測波形記録を作成し、本手法を適用して反射イメージを作成した。Shiraishi and Watanabe (2021)による近地地震記録の結果と比較すると、遠地地震を使用した方が浅部の偽像が低減し、深部構造もよりクリアにイメージされた。これは、遠地地震波が広い範囲にわたって均一に構造を照射するためと考えられる。実際の観測記録の使用を考慮して観測点の配置と数を変更したシミュレーションを行った結果、定常観測点だけでは十分でなく、臨時観測点を加えて平均間隔5 km程度の観測点密度とすることで構造解釈が可能であることがわかった。
2005年から2009年に行われた近畿地方の地殻構造探査(澁谷, 伊藤, 2007)の記録に本手法を適用した。連続波形データから841個の遠地地震のP波初動を含む60秒間の波形記録を切り出した。地震計特性の補正、Band-pass filter (0.2 – 1.5 Hz) と時間窓2秒のAutomatic Gain Control (AGC)を適用し、鉛直成分の波形記録を使用して音響波RTMイメージングを行った。速度構造にはMatsubara et al. (2019) を用いた。地震ごとに得られたイメージをスタックし、高傾斜の偽像と低周波ノイズを除去する波数フィルターを適用した後、ゲイン調整を行い、イメージを作成した。
測線北部では、水平方向に断続した反射イメージが複数認められ、これらは反射に富む断面上部の領域の下限となっているため陸側モホ面と解釈され、Matsubara et al. (2019)の速度構造やレシーバ関数解析 (Shibutani et al. 2008) による陸側モホ面とおおむね対応する。また、丹波山地直下の地殻内浅部地震の分布の下限を規定するほぼ水平な構造など、深さ10-25 kmに複数の反射イメージが得られた。これらは反射法探査 (Ito et al. 2006) 、自然地震(片尾, 2007) により有馬・高槻構造線(ATL)や中央構造線(MTL)との関連が指摘された反射面と対応している。測線の南部において、レシーバ関数解析 (Shibutani et al., 2008, Shiomi et al., 2008)では沈み込むフィリピン海プレートの海洋モホ面が推定されているが、本研究のイメージング結果ではプレートの沈み込みに沿って複数の反射体がイメージされたが、明瞭な連続した面として認められなかった。全体に反射イメージは連続性の低い断続的な散乱点イメージとして得られており、この理由として、地殻内の構造不均質の影響や速度構造の影響に加え、観測点密度と配置の影響や断面外からの波動の影響などが考えられる。