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[SSS07-P09] 断層面に沿った剪断応力分布からすべり分布及び断層摩擦構成則を推定する手法
キーワード:断層すべり、境界積分方程式法、断層摩擦構成則
近年、シェールオイルガス採掘や高温岩体地熱発電などに伴う地下注水などにより、誘発地震の発生が問題となっている。その破壊伝播メカニズムを解明し、誘発地震発生リスクの軽減に資する必要がある。断層面上のすべりの時空間分布や岩石の摩擦構成則を推定し、誘発地震の発生過程を推定することは重要である。ここでは、大型岩石摩擦実験によりFukuyama et al. (2018)によって得られた断層面近傍の剪断歪みの時空間分布から断層面上のすべりの時空間分布と断層摩擦構成則の推定を行うための準備として数値実験を行った。室内実験では断層面付近の歪み分布を計測する事は可能であるが2次元断層面上のすべり分布を直接測定する事は困難である。本研究では実験で得られた剪断歪みの時空間分布を模擬する剪断応力の時空間分布データを作成し、断層すべりの時空間分布や断層摩擦構成則が推定出来るかどうかの検討を行う。
計算は、境界積分方程式法を用いた平面断層の動的破壊伝播の計算手法(Hok and Fukuyama、 2010)を用いた。この計算手法では断層面を三角形要素に分割しその要素上ですべり速度が一定と仮定し断層面全体のすべり速度、剪断応力を計算する。この計算ではすべての時空間分布から剪断応力の時空間分布、摩擦構成則を求める計算と初期剪断応力と摩擦構成則から剪断応力の時空間分布をとすべりの時空間分布を求める二つの計算をすることが出来る。摩擦構成則にはすべり弱化摩擦構成則(Ida, 1972; Andrews, 1976)を用いる。この構成則は静摩擦力、動摩擦力とすべり弱化距離をパラメータとしている。
まず、真のすべり関数を正規化Yoffe関数(Tinti et al., 2005)を用いて作成する。すべり量はすべり面全体にわたって均一の0.1 mmとした。すべりの開始位置を断層面中央に設定し、すべりが開始位置から放射状にS波速度の70%の破壊伝播速度で広がっていくすべりの時空間分布を作成した。断層面はFukuyama et al. (2018)の実験試料と同じ長さ1.5 m幅0.5 mとし媒質は変斑レイ岩(P波速度6919 m/s、S波速度3631 m/s、剛性率30.25 GPa)とした。このすべりの時空間分布からHok and Fukuyama (2010)の境界積分方程式により剪断応力の時空間分布を計算した。計算された剪断応力分布は相対値であるため、絶対値に焼き直す必要がある。すべりが終了した時間での応力分布が一様となるように剪断応力値のオフセットを補正し、これを擬似剪断応力データとした。
次に、擬似剪断応力データから、初期クラックの位置と大きさを設定し、初期応力分布を作成した。真の剪断応力分布から初期クラック内では、静摩擦力は初期応力よりもわずかに小さい値に固定した。初期クラック外の静摩擦、動摩擦、すべり弱化距離の値をモンテカルロ法的に変化させ、Hok and Fukuyama (2010)の動的破壊伝播プログラムによりすべり分布の計算を行った。計算された剪断応力分布が擬似剪断応力データの時空間分布を最もよく説明するような摩擦パラメータを試行錯誤的に求めた。最後に、最適な摩擦パラメータを用いて得られたすべり分布を、真のすべり分布と比較し、本手法の精度を評価した。
すべり開始位置から近い位置ですべり量、剪断応力分布を精度良く求めることが出来たものの、破壊開始点から遠ざかるにつれて誤差が大きくなっていった。これは、摩擦構成則パラメータが断層面上で均一であるとの仮定を置いたためであり、一定速度で伝播する正規化Yoffe関数からは構成則パラメータが空間的に不均質になることが予想され、この点をうまく手法に取り入れる必要があることがわかった。今後、本手法を、実際の実験データに適用し、2次元断層面のすべり分布をより直接的な推定を行っていく予定である。
References
Andrews, J. D. (1974) https://doi.org/ 10.1029/JB081i032p05679
Fukuyama, E. et al. (2018) https://doi.org/10.1016/j.tecto.2017.12.023
Hok, S. and E. Fukuyama (2010) https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.2010.04835.x
Ida, Y, (1972) https://doi.org/10.1029/JB077i020p03796
Tinti, E. et al. (2005) https://doi.org/10.1785/0120040177
計算は、境界積分方程式法を用いた平面断層の動的破壊伝播の計算手法(Hok and Fukuyama、 2010)を用いた。この計算手法では断層面を三角形要素に分割しその要素上ですべり速度が一定と仮定し断層面全体のすべり速度、剪断応力を計算する。この計算ではすべての時空間分布から剪断応力の時空間分布、摩擦構成則を求める計算と初期剪断応力と摩擦構成則から剪断応力の時空間分布をとすべりの時空間分布を求める二つの計算をすることが出来る。摩擦構成則にはすべり弱化摩擦構成則(Ida, 1972; Andrews, 1976)を用いる。この構成則は静摩擦力、動摩擦力とすべり弱化距離をパラメータとしている。
まず、真のすべり関数を正規化Yoffe関数(Tinti et al., 2005)を用いて作成する。すべり量はすべり面全体にわたって均一の0.1 mmとした。すべりの開始位置を断層面中央に設定し、すべりが開始位置から放射状にS波速度の70%の破壊伝播速度で広がっていくすべりの時空間分布を作成した。断層面はFukuyama et al. (2018)の実験試料と同じ長さ1.5 m幅0.5 mとし媒質は変斑レイ岩(P波速度6919 m/s、S波速度3631 m/s、剛性率30.25 GPa)とした。このすべりの時空間分布からHok and Fukuyama (2010)の境界積分方程式により剪断応力の時空間分布を計算した。計算された剪断応力分布は相対値であるため、絶対値に焼き直す必要がある。すべりが終了した時間での応力分布が一様となるように剪断応力値のオフセットを補正し、これを擬似剪断応力データとした。
次に、擬似剪断応力データから、初期クラックの位置と大きさを設定し、初期応力分布を作成した。真の剪断応力分布から初期クラック内では、静摩擦力は初期応力よりもわずかに小さい値に固定した。初期クラック外の静摩擦、動摩擦、すべり弱化距離の値をモンテカルロ法的に変化させ、Hok and Fukuyama (2010)の動的破壊伝播プログラムによりすべり分布の計算を行った。計算された剪断応力分布が擬似剪断応力データの時空間分布を最もよく説明するような摩擦パラメータを試行錯誤的に求めた。最後に、最適な摩擦パラメータを用いて得られたすべり分布を、真のすべり分布と比較し、本手法の精度を評価した。
すべり開始位置から近い位置ですべり量、剪断応力分布を精度良く求めることが出来たものの、破壊開始点から遠ざかるにつれて誤差が大きくなっていった。これは、摩擦構成則パラメータが断層面上で均一であるとの仮定を置いたためであり、一定速度で伝播する正規化Yoffe関数からは構成則パラメータが空間的に不均質になることが予想され、この点をうまく手法に取り入れる必要があることがわかった。今後、本手法を、実際の実験データに適用し、2次元断層面のすべり分布をより直接的な推定を行っていく予定である。
References
Andrews, J. D. (1974) https://doi.org/ 10.1029/JB081i032p05679
Fukuyama, E. et al. (2018) https://doi.org/10.1016/j.tecto.2017.12.023
Hok, S. and E. Fukuyama (2010) https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.2010.04835.x
Ida, Y, (1972) https://doi.org/10.1029/JB077i020p03796
Tinti, E. et al. (2005) https://doi.org/10.1785/0120040177