11:00 〜 13:00
[SSS07-P10] スティック-スリップに伴う粗い表面形状を持つ断層周辺の変形特性の評価
キーワード:スティック-スリップ、室内岩石摩擦実験、断層、地震先行現象
地震の先行現象の物理モデルの一つに、断層を取り巻く岩盤の中でダイレイタンシーが起こると仮定したダイレイタンシー-拡散モデルがある (Nur, 1972, Bulletin of the Seismological Society of America) 。断層が活動を繰り返すメカニズムは、スティック-スリップ現象と呼ばれる摩擦挙動である (Brace and Byerlee, 1966, Science) ことから、スティック-スリップに伴う断層近傍の岩石変形様式の解明は先行現象の理解に役立つと期待される。本研究では、スティック-スリップにおける断層周辺領域の変形特性を明らかにすることを目的に、室内岩石摩擦実験を実施した。一般に、室内岩石摩擦実験では、摩擦面が平坦な岩石試料を用いることが多い。しかし、断層近傍の岩石変形には、断層の表面形状が影響することが予想される。そこで、本研究では、天然に類似する粗い断層面を持つ岩石試料を使用した。これにより、スティック-スリップの繰り返しに伴う断層の平滑化などの影響を評価できることが期待される。
実験試料には、直径20 mm、長さ50 mmの円柱形に整形した庵治花崗岩を使用した。東邦大学の三軸圧縮試験機を用いて、試料を封圧75 MPa、軸変位速度0.03 mm / minの条件で変形させ、あらかじめ施した2つのノッチ(破断面の生成位置を誘導するための切り欠き、試料の軸に対して30°の角度をなす)間に天然に類似する粗い破断面を作成した(破断面生成過程)。その後、軸変位を止めて封圧を100 MPaに上げた後、軸変位を再開してスティック-スリップを発生させた(スティック-スリップ過程)。これらの実験条件は、Goebel et al. (2012, Journal of Geophysical Research) を参考に実施した予備実験により決定した。試料には、断層面生成予定箇所を跨ぐ軸方向の直線上に6 mm間隔で4つのひずみゲージ(長さ1 mm)を周方向に貼り付け、ひずみを測定した。
全2回の実験(ME01、ME02)の結果、両実験で特徴的なスティック-スリップ挙動が観察された。ME01では応力低下量131~153 MPaのスリップ(大スリップ)が6回、12~31 MPaのスリップ(小スリップ)が3回みられ、ME02では応力低下量50~109 MPaの大スリップが7回、1~31 MPaの小スリップが7回観測された。両実験とも小スリップは初期段階に集中していた。
スリップ間の周ひずみ挙動について、スティック-スリップ過程では軸変位に伴って直線的に増加した(ひずみは引っ張りを正とする)。一部のスリップでは、スリップ前のある時点を境にひずみの増加率の低下がみられた。この時、同時に差応力の増加率も低下していた。スリップ発生時には、ひずみは一時的に上昇した後、スリップ前とは異なる値に遷移した。値の遷移の仕方には、断層両側で値が低下する場合(パターンa)、両側で値が増加する場合(パターンb)、片側で増加、片側で低下する場合(パターンc)がみられた。大スリップは、全13回中11回がパターンaであったのに対し、小スリップは、全10回のうち5回がパターンb、4回がパターンaであった。
応力とひずみの関係について、各スリップの応力低下量とひずみ変化量を算出したところ、相関係数が約0.54の正の相関がみられ、大スリップほどひずみ変化量が大きくなった。また、大スリップと小スリップの応力低下量の分布は連続的でなく、それらの間には乖離があった。
小スリップが断層面の粗い初期段階に集中していたこと、小スリップ前後でのひずみ変化のパターンが多様であること、大スリップと小スリップの応力低下量に乖離があることから、小スリップは断層面の凹凸を均すための局所的なすべり、大スリップは断層面全体のすべりを表すと考えられる。
また、スティック-スリップに伴う変形特性を次のように考察した。スリップ後の初期では、岩石は弾性変形をすることで周方向に伸長すると考えられる。続いて、断層面上で局所的な噛み合わせの解消が生じる。これはスリップ前の応力とひずみの増加率の低下から読み取ることができる。その後、断層面上のある箇所からすべりが開始して、局所的なすべりである小スリップや、面全体でのすべりである大スリップに至る。スリップ時のひずみの値の一時的な上昇は、すべり開始点から離れた場所の固着が剥がれる前にすべり開始点付近の岩石が引き延ばされたことを表す可能性がある。また、スリップ後にひずみ値が増加する場合がみられたのは、スリップに付随して亀裂の伸展や凹凸の乗り上げによる体積膨張が生じたためである可能性がある。
今後は、ひずみの測定箇所を増やして位置による変形様式の違いをより詳細に分析することが必要である。
実験試料には、直径20 mm、長さ50 mmの円柱形に整形した庵治花崗岩を使用した。東邦大学の三軸圧縮試験機を用いて、試料を封圧75 MPa、軸変位速度0.03 mm / minの条件で変形させ、あらかじめ施した2つのノッチ(破断面の生成位置を誘導するための切り欠き、試料の軸に対して30°の角度をなす)間に天然に類似する粗い破断面を作成した(破断面生成過程)。その後、軸変位を止めて封圧を100 MPaに上げた後、軸変位を再開してスティック-スリップを発生させた(スティック-スリップ過程)。これらの実験条件は、Goebel et al. (2012, Journal of Geophysical Research) を参考に実施した予備実験により決定した。試料には、断層面生成予定箇所を跨ぐ軸方向の直線上に6 mm間隔で4つのひずみゲージ(長さ1 mm)を周方向に貼り付け、ひずみを測定した。
全2回の実験(ME01、ME02)の結果、両実験で特徴的なスティック-スリップ挙動が観察された。ME01では応力低下量131~153 MPaのスリップ(大スリップ)が6回、12~31 MPaのスリップ(小スリップ)が3回みられ、ME02では応力低下量50~109 MPaの大スリップが7回、1~31 MPaの小スリップが7回観測された。両実験とも小スリップは初期段階に集中していた。
スリップ間の周ひずみ挙動について、スティック-スリップ過程では軸変位に伴って直線的に増加した(ひずみは引っ張りを正とする)。一部のスリップでは、スリップ前のある時点を境にひずみの増加率の低下がみられた。この時、同時に差応力の増加率も低下していた。スリップ発生時には、ひずみは一時的に上昇した後、スリップ前とは異なる値に遷移した。値の遷移の仕方には、断層両側で値が低下する場合(パターンa)、両側で値が増加する場合(パターンb)、片側で増加、片側で低下する場合(パターンc)がみられた。大スリップは、全13回中11回がパターンaであったのに対し、小スリップは、全10回のうち5回がパターンb、4回がパターンaであった。
応力とひずみの関係について、各スリップの応力低下量とひずみ変化量を算出したところ、相関係数が約0.54の正の相関がみられ、大スリップほどひずみ変化量が大きくなった。また、大スリップと小スリップの応力低下量の分布は連続的でなく、それらの間には乖離があった。
小スリップが断層面の粗い初期段階に集中していたこと、小スリップ前後でのひずみ変化のパターンが多様であること、大スリップと小スリップの応力低下量に乖離があることから、小スリップは断層面の凹凸を均すための局所的なすべり、大スリップは断層面全体のすべりを表すと考えられる。
また、スティック-スリップに伴う変形特性を次のように考察した。スリップ後の初期では、岩石は弾性変形をすることで周方向に伸長すると考えられる。続いて、断層面上で局所的な噛み合わせの解消が生じる。これはスリップ前の応力とひずみの増加率の低下から読み取ることができる。その後、断層面上のある箇所からすべりが開始して、局所的なすべりである小スリップや、面全体でのすべりである大スリップに至る。スリップ時のひずみの値の一時的な上昇は、すべり開始点から離れた場所の固着が剥がれる前にすべり開始点付近の岩石が引き延ばされたことを表す可能性がある。また、スリップ後にひずみ値が増加する場合がみられたのは、スリップに付随して亀裂の伸展や凹凸の乗り上げによる体積膨張が生じたためである可能性がある。
今後は、ひずみの測定箇所を増やして位置による変形様式の違いをより詳細に分析することが必要である。