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[SSS07-P20] ニュージーランド南島北西部の応力場と発生した地震の断層面との関係
キーワード:地震、ニュージーランド、スリップテンデンシー、断層、応力場
目的
ニュージーランドはプレートの境界に位置し、北島から南島北部にかけてオーストラリアプレートに太平洋プレートが沈み込んでいる。ニュージーランド南島北部では、およそESE-WNW方向の圧縮応力場が分布する(Townend et al., 2012)。また、沈み込みの境界を定義するアルパイン断層より北西側の地域では、タスマン海の形成とエメラルド海盆の形成に伴う引張応力場により発達した古い地溝や正断層が存在し(Ghisetti et al., 2014)、古い正断層(高傾斜角面)が逆断層として活動する反転テクトニクスが確認されている(例えば Ghisetti and Sibson, 2006)。
現在の東北日本の応力場は東西方向に圧縮軸を持つ逆断層型応力場(例えばTerakawa and Matsu’ura, 2010)が分布し、日本海形成時の引張応力場によって発達した古い正断層が逆断層として活動する反転テクトニクスが確認されている(例えばOkamura et al., 1995)。そのため、東北日本とニュージーランドは類似した環境を持つ。反転テクトニクスにおいては古い正断層を起源とする逆断層と新しく形成された逆断層が共存しており、実際の地震がどのように発生しているのか理解する必要がある。
我々はこれまでに東北日本で発生した大規模地震周辺の応力場に対する断層面のすべりやすさの検討をSlip Tendency法を用いて行い、日本海東縁地域では低角東傾斜の面が高角西傾斜の面よりすべりやすく、概ね実際に発生した地震の断層面に対応していることを確認した(田上・他, JpGU Meeting, 2021; 田上・他, 日本地震学会, 2021)。
本研究では比較のためニュージーランドに着目し、ニュージーランド北西部で発生した2つの大規模地震(1929年Buller地震、1962年Westport地震)を対象に応力場に対するすべりやすさの検討を行なった。
データと手法
応力場は、臨時観測データ(Okada et al., 2019)と定常観測(GeoNet)データを用いP波初動極性から決定したメカニズム解とGNS Scienceのモーメントテンソル解を使用し、応力テンソルインバージョン法(Michael, 1984; Michael, 1987)を用いて推定した。応力場に対する断層面のすべりやすさはSlip Tendency法(Morris et al., 1996)を用いて検討を行なった。
結果1 応力場
アルパイン断層より北西側の地域を対象に応力場の推定を行った。メカニズム解は逆断層型と横ずれ断層型が支配し、応力場は逆断層型と横ずれ断層型の中間の傾向を示した。また、南部から北部にかけて最大圧縮方向がE-WからENE-SWS方向に回転する。しかし、この傾向は統計的に優位ではない。
結果2 Slip Tendency
1929年Buller地震、1962年Westport地震周辺の応力場は逆断層型を示す。最大圧縮方向はENE-SWSであった。
・1929年 Buller地震(Mw 7.3)
東傾斜の面が高いST値(0.7以上)を示し、応力場に対してすべりやすい状態であった。Buller地震はWhite Creek断層で発生したと考えられている(Doser et al., 1999)。White Creek断層が東に傾斜している(Ghisetti and Sibson, 2006)ことから、今回得られた結果は実際の活動と整合的であると考えられる。
・1962年 Westport 地震(Mw 5.6)
東傾斜の面が高いST値(0.7以上)を示し、応力場に対してすべりやすい状態であった。Westport地震はCape Foulwind断層と近い値の走向のCape Foulwind断層から3kmほど沖合に位置する断層で生じたと考えられる(Doser et al., 1999)。Cape Foulwind断層が東に傾斜している(Ghisetti and Sibson, 2006)ことから、今回得られた結果は実際の活動と整合的であると考えられる。
References
Doser, D. I., Webb, T. H., and Maunder, D.E., 1999, Geophys. J. Int., 139, 760-694.
Ghisetti, F.C., Barnes, P. M., and Sibson, R. H., 2014, New Zealand Journal of Geology and Geophysics, 57(3), 271-294.
Ghisetti, F. C., and Sibson, R. H., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 1994-2010.
Michael, A. J., 1984, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 89(B13), 11517-11526.
Michael, A. J., 1987, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 92(B1), 357–368.
Morris, A., Ferril, D. A., and Henderson, D. B., 1996, Geology, 24(3), 275-278.
Okamura, Y., Watanabe, M., Morijiri, R., and Satoh, M., 1995, Island Arc, 4(3), 166-181.
Terakawa, T., & Matsu’ura, M., 2010, Tectonics, 29:TC6008.
Townend, J., Sherburn, S., Arnold, B. C., and Woods, L., 2012, Earth Planet. Sci. Lett., 353-354, 47-59.
ニュージーランドはプレートの境界に位置し、北島から南島北部にかけてオーストラリアプレートに太平洋プレートが沈み込んでいる。ニュージーランド南島北部では、およそESE-WNW方向の圧縮応力場が分布する(Townend et al., 2012)。また、沈み込みの境界を定義するアルパイン断層より北西側の地域では、タスマン海の形成とエメラルド海盆の形成に伴う引張応力場により発達した古い地溝や正断層が存在し(Ghisetti et al., 2014)、古い正断層(高傾斜角面)が逆断層として活動する反転テクトニクスが確認されている(例えば Ghisetti and Sibson, 2006)。
現在の東北日本の応力場は東西方向に圧縮軸を持つ逆断層型応力場(例えばTerakawa and Matsu’ura, 2010)が分布し、日本海形成時の引張応力場によって発達した古い正断層が逆断層として活動する反転テクトニクスが確認されている(例えばOkamura et al., 1995)。そのため、東北日本とニュージーランドは類似した環境を持つ。反転テクトニクスにおいては古い正断層を起源とする逆断層と新しく形成された逆断層が共存しており、実際の地震がどのように発生しているのか理解する必要がある。
我々はこれまでに東北日本で発生した大規模地震周辺の応力場に対する断層面のすべりやすさの検討をSlip Tendency法を用いて行い、日本海東縁地域では低角東傾斜の面が高角西傾斜の面よりすべりやすく、概ね実際に発生した地震の断層面に対応していることを確認した(田上・他, JpGU Meeting, 2021; 田上・他, 日本地震学会, 2021)。
本研究では比較のためニュージーランドに着目し、ニュージーランド北西部で発生した2つの大規模地震(1929年Buller地震、1962年Westport地震)を対象に応力場に対するすべりやすさの検討を行なった。
データと手法
応力場は、臨時観測データ(Okada et al., 2019)と定常観測(GeoNet)データを用いP波初動極性から決定したメカニズム解とGNS Scienceのモーメントテンソル解を使用し、応力テンソルインバージョン法(Michael, 1984; Michael, 1987)を用いて推定した。応力場に対する断層面のすべりやすさはSlip Tendency法(Morris et al., 1996)を用いて検討を行なった。
結果1 応力場
アルパイン断層より北西側の地域を対象に応力場の推定を行った。メカニズム解は逆断層型と横ずれ断層型が支配し、応力場は逆断層型と横ずれ断層型の中間の傾向を示した。また、南部から北部にかけて最大圧縮方向がE-WからENE-SWS方向に回転する。しかし、この傾向は統計的に優位ではない。
結果2 Slip Tendency
1929年Buller地震、1962年Westport地震周辺の応力場は逆断層型を示す。最大圧縮方向はENE-SWSであった。
・1929年 Buller地震(Mw 7.3)
東傾斜の面が高いST値(0.7以上)を示し、応力場に対してすべりやすい状態であった。Buller地震はWhite Creek断層で発生したと考えられている(Doser et al., 1999)。White Creek断層が東に傾斜している(Ghisetti and Sibson, 2006)ことから、今回得られた結果は実際の活動と整合的であると考えられる。
・1962年 Westport 地震(Mw 5.6)
東傾斜の面が高いST値(0.7以上)を示し、応力場に対してすべりやすい状態であった。Westport地震はCape Foulwind断層と近い値の走向のCape Foulwind断層から3kmほど沖合に位置する断層で生じたと考えられる(Doser et al., 1999)。Cape Foulwind断層が東に傾斜している(Ghisetti and Sibson, 2006)ことから、今回得られた結果は実際の活動と整合的であると考えられる。
References
Doser, D. I., Webb, T. H., and Maunder, D.E., 1999, Geophys. J. Int., 139, 760-694.
Ghisetti, F.C., Barnes, P. M., and Sibson, R. H., 2014, New Zealand Journal of Geology and Geophysics, 57(3), 271-294.
Ghisetti, F. C., and Sibson, R. H., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 1994-2010.
Michael, A. J., 1984, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 89(B13), 11517-11526.
Michael, A. J., 1987, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 92(B1), 357–368.
Morris, A., Ferril, D. A., and Henderson, D. B., 1996, Geology, 24(3), 275-278.
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Terakawa, T., & Matsu’ura, M., 2010, Tectonics, 29:TC6008.
Townend, J., Sherburn, S., Arnold, B. C., and Woods, L., 2012, Earth Planet. Sci. Lett., 353-354, 47-59.