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[SSS07-P21] 伊豆半島東方沖の2006年、2009年群発地震活動における火山構造性地震の震源過程の特徴
キーワード:伊豆半島東方沖、震源過程、群発地震
1.序論
伊豆半島東方沖では、1970年代後半以降、群発地震活動が断続的に発生している。これらの地震は、地下の火山性流体の貫入に起因する火山構造性地震と考えられている(e.g. Ukawa & Tsukahara, 1996)。本研究では、伊豆半島東方沖で発生した群発地震活動のうち、2006年に発生した4地震(3.9≦Mw≦5.6)および2009年に発生した2地震(4.8≦Mw≦4.9)について、経験的グリーン関数(EGF)を用いた複数時間窓の波形インバージョンを行い、震源時間関数に見られる特徴の比較とその背景の考察を行った。
2.データと解析手法
同じ群発地震活動中に発生した複数の小地震の観測波形をEGFとして用いて、解析を行った。各年とも、解析対象地震とほぼ同じメカニズム解を持つ2地震の他に、解析対象地震とわずかに異なるメカニズム解を持つ地震をEGF地震として用いることで、結果の信頼性を確かめている。解析対象の6地震、およびEGFとして用いた7地震は、いずれも横ずれ断層型のメカニズム解を示す。解析には、防災科学技術研究所(NIED)のK-net強震計記録を用いた。加速度波形記録を積分して速度波形とした後、0.1-1.0 Hzのバンドパスフィルタをかけ、さらにS波を含む10秒間を切り出して解析に使用した。
解析には40個の時間窓を用い、各時間窓の間隔は0.05秒とした。次に、EGF地震の震源時間関数は破壊継続時間0.2 sの二等辺三角形で表せると仮定し、解析対象地震のモーメントがNIEDのCMT解に一致するとの条件の下、解析対象地震の震源時間関数を求めた。
3.結果と考察
解析から得た6地震の震源時間関数を図1に示す。以下、解析対象地震は、発生年の下2桁に加えて、規模の大きい順にAからDと名付ける。すなわち、06-A、09-B等と呼ぶこととする。2006年に発生した地震について、06-A(Mw5.6)は破壊開始後0.2秒程度でモーメントレートが最大になった後、破壊が1秒程度尾をひいている。06-B(Mw4.5)と06-C(Mw4.3)は、ともに2回の大きな破壊を起こしているが、特徴が異なる。06-Bは2回の破壊が同規模である一方、06-Cは2回目の破壊が明らかに小さい。06-D(Mw3.9)は破壊継続時間0.2秒程度の単一の破壊であった。また、2009年に発生した地震については、09-A(Mw4.9)は一度大きな破壊を起こした後、小規模な破壊が連続して発生している。一方で09-B(Mw4.8)では、一度の破壊後、0.2秒程度の間隔を空けて、小規模な破壊が発生している。
結果から得られた震源過程の特徴の違いは、震源の空間分布に関連すると考えられる。06-A, 06-Bは少なくとも20年程群発地震が発生していない領域で起こった地震である。一方、06-Cは1998年に発生した群発地震活動の震源域に近接している。このことから、以下のような推論が可能である。過去に破壊が起こった領域では、既に存在する強度の低い部分を、破壊が比較的スムースに進展するのに対し、過去に破壊の起こっていない領域では、フレッシュな強度の高い部分を破壊が進展するため、複雑な破壊過程を示すのかもしれない。すなわち、たとえばUmeda(1990)が本震と余震の破壊過程の相違について言及しているように、過去の地震活動による破砕の有無が、解析した地震の破壊過程の相違として見られたと考えられる。
伊豆半島東方沖では、1970年代後半以降、群発地震活動が断続的に発生している。これらの地震は、地下の火山性流体の貫入に起因する火山構造性地震と考えられている(e.g. Ukawa & Tsukahara, 1996)。本研究では、伊豆半島東方沖で発生した群発地震活動のうち、2006年に発生した4地震(3.9≦Mw≦5.6)および2009年に発生した2地震(4.8≦Mw≦4.9)について、経験的グリーン関数(EGF)を用いた複数時間窓の波形インバージョンを行い、震源時間関数に見られる特徴の比較とその背景の考察を行った。
2.データと解析手法
同じ群発地震活動中に発生した複数の小地震の観測波形をEGFとして用いて、解析を行った。各年とも、解析対象地震とほぼ同じメカニズム解を持つ2地震の他に、解析対象地震とわずかに異なるメカニズム解を持つ地震をEGF地震として用いることで、結果の信頼性を確かめている。解析対象の6地震、およびEGFとして用いた7地震は、いずれも横ずれ断層型のメカニズム解を示す。解析には、防災科学技術研究所(NIED)のK-net強震計記録を用いた。加速度波形記録を積分して速度波形とした後、0.1-1.0 Hzのバンドパスフィルタをかけ、さらにS波を含む10秒間を切り出して解析に使用した。
解析には40個の時間窓を用い、各時間窓の間隔は0.05秒とした。次に、EGF地震の震源時間関数は破壊継続時間0.2 sの二等辺三角形で表せると仮定し、解析対象地震のモーメントがNIEDのCMT解に一致するとの条件の下、解析対象地震の震源時間関数を求めた。
3.結果と考察
解析から得た6地震の震源時間関数を図1に示す。以下、解析対象地震は、発生年の下2桁に加えて、規模の大きい順にAからDと名付ける。すなわち、06-A、09-B等と呼ぶこととする。2006年に発生した地震について、06-A(Mw5.6)は破壊開始後0.2秒程度でモーメントレートが最大になった後、破壊が1秒程度尾をひいている。06-B(Mw4.5)と06-C(Mw4.3)は、ともに2回の大きな破壊を起こしているが、特徴が異なる。06-Bは2回の破壊が同規模である一方、06-Cは2回目の破壊が明らかに小さい。06-D(Mw3.9)は破壊継続時間0.2秒程度の単一の破壊であった。また、2009年に発生した地震については、09-A(Mw4.9)は一度大きな破壊を起こした後、小規模な破壊が連続して発生している。一方で09-B(Mw4.8)では、一度の破壊後、0.2秒程度の間隔を空けて、小規模な破壊が発生している。
結果から得られた震源過程の特徴の違いは、震源の空間分布に関連すると考えられる。06-A, 06-Bは少なくとも20年程群発地震が発生していない領域で起こった地震である。一方、06-Cは1998年に発生した群発地震活動の震源域に近接している。このことから、以下のような推論が可能である。過去に破壊が起こった領域では、既に存在する強度の低い部分を、破壊が比較的スムースに進展するのに対し、過去に破壊の起こっていない領域では、フレッシュな強度の高い部分を破壊が進展するため、複雑な破壊過程を示すのかもしれない。すなわち、たとえばUmeda(1990)が本震と余震の破壊過程の相違について言及しているように、過去の地震活動による破砕の有無が、解析した地震の破壊過程の相違として見られたと考えられる。