日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 強震動・地震災害

2022年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:松元 康広(株式会社構造計画研究所)、コンビーナ:鈴木 亘(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:岩城 麻子(防災科学技術研究所)

15:45 〜 16:00

[SSS10-14] ブータン南西部のヒマラヤ衝上断層セグメンテーションによる地震シナリオ評価

*はお 憲生1熊原 康博2中田 高2、Namgay Karma3、Drukpa Dowchu3、井上 公1藤原 広行1、Pagani Marco4 (1.国立研究開発法人 防災科学技術研究所、2.広島大学、3.ブータン地質調査所、4.グローバル地震モデル財団)

キーワード:ブータン、地震ハザード評価、地震シナリオシミュレーション、メイン ヒマラヤ スラスト

はじめに : . ブータンは、メイン ヒマラヤ スラスト(MHT)衝上断層の東部の地震ギャップに位置しており、長期的な予測で地震の脅威にさらされている。確率論的地震ハザード評価(PSHA)に示した低い超過確率(Pagani et al. 2018, Stevens et al. 2020)は、漏れ失考など不完全な歴史地震記録に影響されると考えられる。ブータンの南西部に、ヒマラヤ主前縁衝上断層(MFT)と主境界衝上断層(MBT)が東西走向通過しているプレート境界であるが、活断層の調査はほとんど進んでいない。空中写真を使用してアナグリフと等高線図を作成し、活断層の詳細な位置と形状を捉えた(中田 他, 2020)。また、ブータン南西部サムツェからシプスまで現地調査とトレンチが実施されている(熊原 他, 2020, Drukpa et al, 2020)。これらの情報を基づいて、ブータン南西部巨大地震被害想定のため地震動シナリオを開発する。

ブータン南西部のMHT断層モデル : . ほぼ同じヒマラヤ衝上断層地質環境MHTにおけるネパールに、2015年のゴルカ地震(Mw =7.9)は、深さ約15kmのMHTの基盤を破壊したが、MFTからカトマンズまでの地域を破壊しなかった(Grandin et al, 2015)。MHT巨大地震発生するポテンシャルを考慮し、ブータン南西部の浅部MFT破壊する同時に、その応力開放によってMHTの基盤まで破壊をトリガーするMw=7.8の巨大地震のシナリオをモデルした。
地震モーメントを伴う断層長のスケーリング規則(武村1998)により、ブータン南西境界にあるサムツェからゲレフーまでの26.94緯度に沿って130kmの長さのMFT/MBTを対象としている。 断層幅は20km、40km、60kmまで計算したが、断層破裂の不確実性と首都ティンプーを考慮すると、幅60kmの結果が重視される。 断層モデルは2kmの深さから北に向けで18km幅で30度で急傾斜し、それから42km幅で7度で緩やかに傾斜し、ティンプー周辺の深さ17kmに近づく。

評価方法とパラメート: . 幅60km、傾斜角度が30度から7度に変化したMHT断層モデルに、震源Mw=7.8, 震源深さH=10km、サイトがVs=800m/sの表層地盤に置いたシナリオは、OpenQuakeエンジン(GEM、2013年)を使用してシミュレートした。 シナリオ シミュレーションでは地震動予測式(GMPE)が重要な役割を果たしていることがわかり、いくつのGMPEs式を検討していた。

まとめ : . ブータン南西部におけるヒマラヤ衝上断層セグメンテーションによる地震シナリオでは、図1に示すようにMFTからティンプーまでの広範囲で強い地震動が見舞われた。シナリオシミュレーションの結果、強い地表地震動PGA = 0.6G(MMI震度VIIIクラス)である可能性があり、深刻な地震被害を引き起る可能性がある。 ブータンの世帯の約66%が伝統的な材料と技術で建てられた建物に住んでいるという現実の下で、それは重要な問題を提起する。
なお、この研究はSATREPS-Bhutan「ブータンにおける組積造建築の地震リスク評価と減災技術の開発プロジェクト(研究代表者:青木孝義 平成28年10月~令和5年3月)」に資する研究である。

参考文献 : . Grandin, R. et al. (2015), Geophys. Res.Lett., doi:10.1002/2015GL066044 ; . 熊原康博 他 (2020), The General Meeting of the AJG Spring 2020. ; . 中田高 他(2020), Japanese Society for Active Fault Studies, p8-9. ; . Drukpa, D. et al. (2020), International Symposium on Active Faulting, p23-24 ; . GEM (2013), http://www.globalquakemodel.org; . Pagani, M. et al. The 2018 version of the Global Earthquake Model ; . Stevens V. L. et al. 2020, Seismic hazard and risk in Bhutan, Natural Hazards.