11:00 〜 13:00
[SSS10-P06] 東北日本/チリ沖のプレート間地震の震源特性の地域性
キーワード:プレート間地震、日本海溝、ペルー・チリ海溝、震源スケーリング則、地域性
プレート間地震の地震動を予測する特性化震源モデルのパラメータを設定する際,プレートの地域ごとの違いを踏まえた震源スケーリング則に基づくことが望ましい(地震本部,2020).本研究は,東北日本沖(主に日本海溝)および発生数が比較的多いチリ沖(ペルー・チリ海溝)でのプレート間地震を対象に,震源インバージョンおよび強震動生成域 (SMGA) モデル等の既往研究結果を収集・整理し,それらをデータとして巨視的・微視的震源パラメータを抽出し,震源特性の地域差について検討した.
東北日本は23地震 (MW 6.2-9.1),チリは12地震 (MW 6.9-8.8) のデータを収集した.なお,南海・相模トラフなど西南日本の地震はデータが少なく,調査の対象から外している.巨視的震源パラメータとして断層面積・平均すべり量を,微視的震源パラメータとして大すべり域面積・SMGA面積・短周期レベルを整理した.断層面積の抽出にはSomerville et al. (1999) の規範を,大すべり域面積の抽出にはMurotani et al. (2008) の規範をそれぞれ使用した.また,SMGAモデルに基づく短周期レベルの計算には壇・他 (2001) の関係式を使用した.
プレート間地震に対して,自己相似則が成り立つモデル(MW 8.4程度以下の1st stage:e.g., Murotani et al., 2008)および断層幅の飽和により自己相似則から乖離するモデル(MW 8.4程度以上の2nd stage:田島・他,2013;Allen and Hayes, 2017)の震源スケーリング則が提案されている.本検討で収集・整理したデータのほとんどがMW 8.4以下の1st stageの地震規模であるが,東北日本で起きた地震の断層面積はMurotani et al. (2008) の震源スケーリング則と良く一致していた.これは宮腰・他 (2021) の検討結果と整合的である.これに対して,チリの地震の断層面積は東北日本に比べて有意に大きいことが分かった.同程度の地震規模の場合,チリの地震が東北日本の2倍程度の断層面積を有することが示唆された.一方,平均すべり量に関しては東北日本に比べて小さかった.これらの結果は,チリの地震の平均応力降下量が東北日本に比べて小さいというAllmann and Shearer (2009) の結果と調和的である.
次に,微視的震源パラメータの分析結果として,震源インバージョン結果に基づく大すべり域の面積は,断層面積と同様な地域性を示した.すなわち,東北日本はMurotani et al. (2008) と整合するが,チリはMurotani et al. (2008) に比べて大きかった(例えば,郭・他,本大会).なお,大すべり域面積の断層面積に対する比率(東北日本:21%,チリ:23%)は地域差が認められなかった.経験的グリーン関数等の結果に基づくSMGAの面積も同様に,東北日本は佐藤 (2010) によるSMGA面積のスケーリング則に比較的近く,チリは佐藤 (2010) に比べてやや大きい傾向が認められる.ただし,両地域ともデータのばらつきが大きく,確定的なことは言えない.異なる地域で発生した地震にもかかわらず,佐藤 (2010),田島・他 (2013),郭・他(本大会)などが示すように,大すべり域に対するSMGAの面積比が半分程度以下であることは両地域に共通した震源特性であると考えられる.短周期レベルに関しては,両地域でほぼ同程度であるが,チリのほうのばらつきが東北日本に比べてやや大きかった.
今回明らかになった震源特性の地域性は,震源パラメータのばらつきに関する研究のための重要な参考情報となりうる.また,今後,例えば両地域の同程度規模の地震の観測地震動を比較するなど,この地域性をさらに裏付けるための調査が重要であると考える.
謝辞:本研究は,原子力規制庁の委託業務「令和3年度原子力施設等防災対策等委託費(海溝型地震の特性化震源モデルに係る検討)事業」による成果の一部である.
東北日本は23地震 (MW 6.2-9.1),チリは12地震 (MW 6.9-8.8) のデータを収集した.なお,南海・相模トラフなど西南日本の地震はデータが少なく,調査の対象から外している.巨視的震源パラメータとして断層面積・平均すべり量を,微視的震源パラメータとして大すべり域面積・SMGA面積・短周期レベルを整理した.断層面積の抽出にはSomerville et al. (1999) の規範を,大すべり域面積の抽出にはMurotani et al. (2008) の規範をそれぞれ使用した.また,SMGAモデルに基づく短周期レベルの計算には壇・他 (2001) の関係式を使用した.
プレート間地震に対して,自己相似則が成り立つモデル(MW 8.4程度以下の1st stage:e.g., Murotani et al., 2008)および断層幅の飽和により自己相似則から乖離するモデル(MW 8.4程度以上の2nd stage:田島・他,2013;Allen and Hayes, 2017)の震源スケーリング則が提案されている.本検討で収集・整理したデータのほとんどがMW 8.4以下の1st stageの地震規模であるが,東北日本で起きた地震の断層面積はMurotani et al. (2008) の震源スケーリング則と良く一致していた.これは宮腰・他 (2021) の検討結果と整合的である.これに対して,チリの地震の断層面積は東北日本に比べて有意に大きいことが分かった.同程度の地震規模の場合,チリの地震が東北日本の2倍程度の断層面積を有することが示唆された.一方,平均すべり量に関しては東北日本に比べて小さかった.これらの結果は,チリの地震の平均応力降下量が東北日本に比べて小さいというAllmann and Shearer (2009) の結果と調和的である.
次に,微視的震源パラメータの分析結果として,震源インバージョン結果に基づく大すべり域の面積は,断層面積と同様な地域性を示した.すなわち,東北日本はMurotani et al. (2008) と整合するが,チリはMurotani et al. (2008) に比べて大きかった(例えば,郭・他,本大会).なお,大すべり域面積の断層面積に対する比率(東北日本:21%,チリ:23%)は地域差が認められなかった.経験的グリーン関数等の結果に基づくSMGAの面積も同様に,東北日本は佐藤 (2010) によるSMGA面積のスケーリング則に比較的近く,チリは佐藤 (2010) に比べてやや大きい傾向が認められる.ただし,両地域ともデータのばらつきが大きく,確定的なことは言えない.異なる地域で発生した地震にもかかわらず,佐藤 (2010),田島・他 (2013),郭・他(本大会)などが示すように,大すべり域に対するSMGAの面積比が半分程度以下であることは両地域に共通した震源特性であると考えられる.短周期レベルに関しては,両地域でほぼ同程度であるが,チリのほうのばらつきが東北日本に比べてやや大きかった.
今回明らかになった震源特性の地域性は,震源パラメータのばらつきに関する研究のための重要な参考情報となりうる.また,今後,例えば両地域の同程度規模の地震の観測地震動を比較するなど,この地域性をさらに裏付けるための調査が重要であると考える.
謝辞:本研究は,原子力規制庁の委託業務「令和3年度原子力施設等防災対策等委託費(海溝型地震の特性化震源モデルに係る検討)事業」による成果の一部である.