11:00 〜 13:00
[SSS10-P08] 東京湾周辺の広帯域地震計の波形記録への地震波干渉法解析の適用
キーワード:地震波干渉法、自己相関関数、地震基盤
【はじめに】
地震波干渉法は,観測される地震波形の相互相関関数や自己相関関数がグリーン関数に相当することを利用して地下構造を推定する手法であり,既に多くの研究成果が得られている.1次元水平成層構造の場合の解析原理については,Nakahara(2006) などで詳しく示されており,自然地震の際の地表観測記録の自己相関関数を求めることで,地表に震源がある場合のグリーン関数が評価できることが知られている.
関東平野における地震基盤構造を対象とした地震波干渉法の検討事例としては,Yoshimoto et al. (2008), 吉本(2010) などが,近地地震のSH波部分の自己相関関数を使った検討が行われている.それらの研究では,多数の加速度記録を用いて地震基盤からの反射S波位相の検出に成功しており,それらが地下構造と良く対応することも報告されている.既にこれらの成果があり,今更の感はあるものの,本検討では,同様の手法を東京電力HDが主に東京湾沿岸の火力発電所に設置する広帯域速度型地震計の観測記録に適用し,地震基盤などの境界面からの反射波の検出を試みた.従来の報告では比較的観測点が少ない東京湾岸地域の地下構造に関する情報が得られるものと期待される.
【解析手法】
データには火力発電所に設置する広帯域速度型地震計(東京測振:VSE355-G3)による観測波形(植竹, 2012, など)を用いた.解析に用いる地震としては,観測点にできるだけ鉛直に近い角度で入射するとともにある程度の地震数を確保できるものとして,主に千葉県北西部~茨城県南部で発生した地震を選択した.予稿作成時点で使用した地震はマグニチュード4.1~5.5の20地震である.
地震波干渉法解析では,各観測点の速度波形を積分して変位波形に変換し,直達S波を含む15秒間のTransverse成分について自己相関関数を求め,それらをスタックしたものを擬似反射波形と見なした.なお,解析の際には,反射位相を検出しやすくするため,0.3 Hz~2 Hzのバンドパスフィルタを適用した.
【解析結果】
東京湾の東側に位置する観測点では,往復走時で7秒程度の位置に比較的明瞭な位相が認められた.これらは吉本(2010)が地震基盤からの反射S波位相と認めた発現時間とほぼ同じである.また,全国1次地下構造モデル(暫定版)(JIVSM; Koketsu et al. , 2012)による各観測点直下の構造を用いて計算されるS波の往復走時は概ね6~7秒程度であり,それらとも整合している.一方,東京湾の西側に位置する観測点でも,往復走時で6~8秒付近に負の振幅となる位相が見られ,地下の境界面からの反射波に相当するものと解釈されるが必ずしも明瞭ではない.これらは,東京湾の東側と西側の地下構造の違いを反映したものと見ることもできるが,より詳細な検討が必要である.
また,往復走時で0~4秒程度には,Vs=0.9 km/s,Vs=1.5 km/s層での反射に相当する位相が現れることが想定されるが,相関波形に見られる各観測点での特徴が異なっており,これらを用いて比較的浅部の地下構造についても検討できる可能性がある.
今後,JIVSMだけでなく関東地方の浅部・深部統合地盤構造モデル(防災科学技術研究所,2021)なども参照して既存の地下構造モデルとの対応を確認するとともに,各地点での最適な地下構造モデルについての検討を進める予定である.また,反射位相の検出の信頼性を高めるためには,周辺の観測点との連続性も重要と思われる.
地震波干渉法は,観測される地震波形の相互相関関数や自己相関関数がグリーン関数に相当することを利用して地下構造を推定する手法であり,既に多くの研究成果が得られている.1次元水平成層構造の場合の解析原理については,Nakahara(2006) などで詳しく示されており,自然地震の際の地表観測記録の自己相関関数を求めることで,地表に震源がある場合のグリーン関数が評価できることが知られている.
関東平野における地震基盤構造を対象とした地震波干渉法の検討事例としては,Yoshimoto et al. (2008), 吉本(2010) などが,近地地震のSH波部分の自己相関関数を使った検討が行われている.それらの研究では,多数の加速度記録を用いて地震基盤からの反射S波位相の検出に成功しており,それらが地下構造と良く対応することも報告されている.既にこれらの成果があり,今更の感はあるものの,本検討では,同様の手法を東京電力HDが主に東京湾沿岸の火力発電所に設置する広帯域速度型地震計の観測記録に適用し,地震基盤などの境界面からの反射波の検出を試みた.従来の報告では比較的観測点が少ない東京湾岸地域の地下構造に関する情報が得られるものと期待される.
【解析手法】
データには火力発電所に設置する広帯域速度型地震計(東京測振:VSE355-G3)による観測波形(植竹, 2012, など)を用いた.解析に用いる地震としては,観測点にできるだけ鉛直に近い角度で入射するとともにある程度の地震数を確保できるものとして,主に千葉県北西部~茨城県南部で発生した地震を選択した.予稿作成時点で使用した地震はマグニチュード4.1~5.5の20地震である.
地震波干渉法解析では,各観測点の速度波形を積分して変位波形に変換し,直達S波を含む15秒間のTransverse成分について自己相関関数を求め,それらをスタックしたものを擬似反射波形と見なした.なお,解析の際には,反射位相を検出しやすくするため,0.3 Hz~2 Hzのバンドパスフィルタを適用した.
【解析結果】
東京湾の東側に位置する観測点では,往復走時で7秒程度の位置に比較的明瞭な位相が認められた.これらは吉本(2010)が地震基盤からの反射S波位相と認めた発現時間とほぼ同じである.また,全国1次地下構造モデル(暫定版)(JIVSM; Koketsu et al. , 2012)による各観測点直下の構造を用いて計算されるS波の往復走時は概ね6~7秒程度であり,それらとも整合している.一方,東京湾の西側に位置する観測点でも,往復走時で6~8秒付近に負の振幅となる位相が見られ,地下の境界面からの反射波に相当するものと解釈されるが必ずしも明瞭ではない.これらは,東京湾の東側と西側の地下構造の違いを反映したものと見ることもできるが,より詳細な検討が必要である.
また,往復走時で0~4秒程度には,Vs=0.9 km/s,Vs=1.5 km/s層での反射に相当する位相が現れることが想定されるが,相関波形に見られる各観測点での特徴が異なっており,これらを用いて比較的浅部の地下構造についても検討できる可能性がある.
今後,JIVSMだけでなく関東地方の浅部・深部統合地盤構造モデル(防災科学技術研究所,2021)なども参照して既存の地下構造モデルとの対応を確認するとともに,各地点での最適な地下構造モデルについての検討を進める予定である.また,反射位相の検出の信頼性を高めるためには,周辺の観測点との連続性も重要と思われる.