日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 強震動・地震災害

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (22) (Ch.22)

コンビーナ:松元 康広(株式会社構造計画研究所)、コンビーナ:鈴木 亘(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)

11:00 〜 13:00

[SSS10-P15] 鉛直アレイの強震記録を用いた
地盤凍結が地盤震動特性に及ぼす影響の評価

*神津 真衣1山中 浩明1津野 靖士2高井 伸雄3 (1.東京工業大学、2.鉄道総合技術研究所、3.北海道大学)

キーワード:地盤凍結、地盤震動特性、スペクトル比、表層地盤、S波速度

強震動予測の対象地点の表層地盤の影響を適切に評価することは、想定される地震動を考える際に重要である。通常の強震動予測では、地盤の物性を一定として表層地盤の増幅効果を評価している。しかし、寒冷地では、降雪期に地盤の表層部分が凍結することで地盤の物性が変化し、表層地盤の増幅効果も変化することが予想される(例えば、津野・他、2021 や 高井・他、2021)。
本研究では、表層地盤の凍結が地盤震動特性に及ぼす影響を、鉛直アレイでの地表と地中の強震記録のスペクトル比を用いて検討した。はじめに、北海道の過去の気温データを調べ、北海道東部では12月下旬から2月にかけて最高気温が0度を下回ることから地盤が凍結すると考え、本研究での対象地域を北海道東部とした。12下旬~2月を凍結期間、6~10月を非凍結期間と設定し、2つの期間でのスペクトル比の差異を検討した。
まず、地盤の凍結を想定した表層地盤のモデルを用いて数値計算を行った。計算されるスペクトル比の差異を定量化し、表層地盤の厚さやS波速度との関係を検討した。定量的指標として、モードごとのピーク周波数の差や周波数範囲1~30Hzにおけるスペクトル比の凍結時と非凍結時の比を積分した値を用いた。その結果、ピーク周波数の差や積分値は、凍結部分の表層地盤に対する厚さの割合や表層地盤のS波速度、対象とするモードと関係があることがわかった。各指標の変化の大きさを比較すると、凍結部分の厚さの割合とスペクトル比の変化の関係に高い相関があり、凍結部分の割合が大きいほど、スペクトル比の変化が著しくなっている。さらに、表層地盤のS波速度が大きいほど、ピーク周波数の差は大きくなる。一方、S波速度が小さくなると、積分値が大きくなることがわかった。また、比較で考慮するモードも重要であり、検討する際はモードごとに分類分けをしたうえで、スペクトル比の差異を評価することが重要であると示された。
数値計算の結果で得られた結果を考慮して、北海道東部のKiK-net観測点で観測された地表と地中での強震記録を用いてスペクトル比の違いを検討した。このとき、対象とするピーク周波数については、スペクトル比の変化が見え始める直前のモードのピークの周波数とした。その結果、凍結部分(1mと仮定)の厚さの割合とスペクトル比の変化の大きさとの間に、相関性の高い関係はみられなかった。対象とするモードや凍結部分の厚さの割合で分類分けをした後、表層地盤の平均S波速度との関係を比較すると、数値計算で得られた結果と同様の関係を持つ観測点が多くみられた。とくに、ピーク周波数の差とS波速度との関係については、基本モードではあまり変化しないが、1次の高次モードではS波速度が大きくなると周波数の差が大きくなるという数値計算と同様の結果が得られた。
しかし、北海道東部の強震記録の結果において、スペクトル比の変化と凍結地盤の割合との間に相関関係がみられず、数値計算の結果との差異もみられた観測点も少なくないことから、凍結部の寄与の評価方法の改善や地盤の凍結によるS波速度以外の地盤の物性の変化の検討も必要であると考えられる。

謝辞
 
本研究では、防災科学技術研究所の強震観測網KiK-netの観測データを使用しました。