日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地震活動とその物理

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:楠城 一嘉(静岡県立大学)、コンビーナ:直井 誠(京都大学)、座長:楠城 一嘉(静岡県立大学)、熊澤 貴雄(東京大学 地震研究所)

09:45 〜 10:00

[SSS11-04] 階層型時空間ETASと時空間ポアソン過程モデルによる日本内陸部の地震発生確率の予測と検証

*尾形 良彦1 (1.大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所)

キーワード:赤池ベイズ情報量規準 (ABIC)、異方性余震クラスタ、最大事後分布(MAP)、プラグイン確率予測、クロスバリデーション、対数尤度スコア(情報利得)

現実の地震活動は異方的なクラスタリングや地域的に異なる統計的不均質性がある。このように多様な活動に最適に適合し予測できるように、ETASモデルの拡張版である階層的時空間(HIST-ETAS)モデルが構築されている(Ogata, 2011)。
本講演では、この精巧なモデルを、1885年から現在までの一世紀以上にわたる震源データ(Utsu, 1985; 気象庁震源カタログ)を用いて推定し、最近数年間(2019年~2021年9月)にわたる日本内陸地震の確率予測に対して、その結果を対数尤度比スコア(情報利得)で評価した。とくに中長期予測に使用する代替モデルと比較検討するため、数種類の定常時空間ポアソンモデルをHIST-ETASモデルと比較した。その結果、まず、M4以上の中規模地震に対して、より高度に不均質なHIST-ETASモデルが最も良い短期予測結果を示した。しかし、M5以上の、より大きな地震に対しては、性能を評価するのに十分な地震データが不足して、HIST-ETASモデルの優越性はいえない。
HIST-ETASモデルを中期予測(数日~数年間)で実施するのは現状で完成していないため、当座の代替えモデルとしてHIST-ETASモデルの背景地震活動度(空間的非一様ポアソン)モデルで予測する。しかし、この背景地震活動度に視覚的には類似しているが、最適な空間的非一様ポアソン空間モデルの予測性能方が稍々良い。他方、日本内陸全域で一様なポアソンモデルは予測性能が最悪である。これは内陸部で中規模以上の地震が起こりやすい地域と起こりにくい地域が明確にあることを示している。
長期予測のM6以上の大地震については、2つの方法で遡及的に性能を検証した。まず、1885年から現在までの全期間を2つに分け、最近30年間を予測期間とする予測実験を行った。第二に,1885年から現在までの133年間にわたるデータを用いて,歴史的な被害地震(599-1884; Utsu, 1990)の空間的配置の検証を行った.いずれの検証においても、機械式地震記録に基づく震源データを歴史的に編纂された記録に適用することにより、HIST-ETASモデルの内陸背景地震活動の空間強度は、最適フィットの非一様ポアソン空間モデルよりはるかに優れており、最良の結果を導くと判断された。
References
Ogata, Y. (2011). Significant improvements of the space-time ETAS model for forecasting of accurate baseline seismicity. Earth, Planets and Space 63 (3), 217–229, DOI: 10.5047/eps.2010.09.001.
Utsu, T. (1985) Catalog of large earthquakes in the region of Japan from 1885 through 1980: Correction and supplement. Bull. Earthq. Res. Inst., Univ. Tokyo, 60 (4), 639–642, DOI: https://doi.org/10.15083/0000032884.
Utsu, T. (1990). Catalog of Damaging Earthquakes in the World, http://iisee.kenken.go.jp/utsu/index.html. 
Ogata Y, Katsura K, Tanemura M, Harte D, Zhuang J (2021) Hierarchical Space-Time Point-Process Models (HIST-PPM): Software documentation and codes, Computer Science Monographs, The Institute of Statistical Mathematics, 35, https://www.ism.ac.jp/editsec/csm/pdf/csm_035.pdf.