11:30 〜 11:45
[SSS11-10] 千葉県北西部のM6クラス繰り返し相似地震
キーワード:相似地震、繰り返し地震、千葉県北西部、デジタル化、東北地方太平洋沖地震、太平洋プレート
1.はじめに
2021年10月7日、千葉県北西部でM5.9の地震が発生し、最大震度5強が観測された。この地震は、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震と考えられる。この地震及び過去に周辺で発生したM6クラスの下記地震(図1)は波形が似ていることが指摘されており(地震調査委員会、2021)、ほぼ同じ場所で繰り返し発生している相似地震である可能性がある。
2021/10/07 22:41 深さ75km Mj5.9 最大震度5強
2005/07/23 16:34 深さ73km Mj6.0 最大震度5強
1980/09/25 02:54 深さ80km Mj6.0 最大震度4
1956/09/30 08:20 深さ81km Mj6.3 最大震度4
1928/05/21 01:29 深さ75km Mj6.2 最大震度5
このため、1980年及び1956年の地震についてマイクロフィルムに画像として残されている地震波形をデジタル化し、デジタル地震波形のある2005年及び2021年の地震も含めた地震間の相関係数を算出して相似地震であるか確認した。
2.解析手法
1956年の地震は気象研究所に所蔵されているマイクロフィルム、1980年の地震は地震調査研究推進本部の地震記象紙検索システムから取得した、東京観測点の52型一倍強震計の東西成分の地震波形画像データを解析に使用した。地震波形の読み取りは、グラフ数値読み取りシステムGSYS2.4を使用し手作業で行った(図2)。さらに菊地 他(1999)の手法を用いて円弧補正を行い、サンプリング間隔をデジタル波形データに合わせるために、適宜データを間引きした後に線形補間で0.01秒サンプリングのデータを作成した。
2005年及び2021年の地震については、東京都千代田区大手町の震度計データの東西成分に52型一倍強震計の特性に合わせるフィルターをかけたものを使用した。
相関係数は、S-P時間に40秒加えた時間窓を、お互いの地震のP波到達時刻の前1秒~後1秒の間について0.01秒ずつ動かしつつ計算し、最大値を取った。
3.解析結果
解析結果の例として、図3に2005年の地震と各地震の波形の重ね合わせ及び相関係数を示した。相関係数の全解析結果は表1に示してあり、0.69~0.93であった。
4.議論
2021年と2005年の地震の相関係数は0.93と高いことから、相似地震と考えられる。1980年及び1956年の地震については相関係数が0.9に届かない結果となっているが、これらは手作業での読み取りであることや、地震計のペン先が太く、細かな揺れを読み取るには限界があることを考えると、十分高い相関係数であると思われる。地震波形の重ね合わせでは良く似ていることが見て取れることからも、これらの地震もほぼ同じアスペリティを破壊する繰り返し相似地震であろうと考えられる。
1928年の地震については未解析であるが、それも含めて相似地震と仮定し、各地震によるすべり量をHanks and Kanamori (1979)及びNadeau and Johnson (1998)の式を用いて求め、積算すべり量のグラフに示したのが図4である。2005年までの地震のプロットは最小自乗法で求めた直線(青)にほぼ乗ることから、この繰り返し相似地震活動はすべり予測モデルに合うものであり、地震時にはアスペリティのすべり残しがほぼない活動であると考えられる。また、各地震の発生直前の累積すべり量は最小自乗法で求めた直線(緑)にほぼ乗ることから、時間予測モデルにも合うものであると考えられる。また、どちらの直線も傾きがほぼ同じことから、ほぼ同じすべり量の地震がほぼ一定の時間間隔で発生していると考えられる。時間予測モデルからは、2005年の次の地震は2028年半ばに発生すると予測されるが、実際には前回の地震から16.2年後の2021年10月に発生した。これは、2011年の東北地方太平洋沖地震の影響により太平洋プレートの沈み込み速度が速くなったことが原因と考えられる。
謝辞
解析に使用させていただいた地震記象紙検索システムは、気象庁所蔵の地震記象紙を文部科学省および(公財)地震予知総合研究振興会が高解像度スキャンし、デジタル画像化したものである。地震波形読み取りには、日本荷電粒子核反応データグループが開発したGSYS2.4を使用させていただいた。ここに記して感謝申し上げる。
2021年10月7日、千葉県北西部でM5.9の地震が発生し、最大震度5強が観測された。この地震は、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震と考えられる。この地震及び過去に周辺で発生したM6クラスの下記地震(図1)は波形が似ていることが指摘されており(地震調査委員会、2021)、ほぼ同じ場所で繰り返し発生している相似地震である可能性がある。
2021/10/07 22:41 深さ75km Mj5.9 最大震度5強
2005/07/23 16:34 深さ73km Mj6.0 最大震度5強
1980/09/25 02:54 深さ80km Mj6.0 最大震度4
1956/09/30 08:20 深さ81km Mj6.3 最大震度4
1928/05/21 01:29 深さ75km Mj6.2 最大震度5
このため、1980年及び1956年の地震についてマイクロフィルムに画像として残されている地震波形をデジタル化し、デジタル地震波形のある2005年及び2021年の地震も含めた地震間の相関係数を算出して相似地震であるか確認した。
2.解析手法
1956年の地震は気象研究所に所蔵されているマイクロフィルム、1980年の地震は地震調査研究推進本部の地震記象紙検索システムから取得した、東京観測点の52型一倍強震計の東西成分の地震波形画像データを解析に使用した。地震波形の読み取りは、グラフ数値読み取りシステムGSYS2.4を使用し手作業で行った(図2)。さらに菊地 他(1999)の手法を用いて円弧補正を行い、サンプリング間隔をデジタル波形データに合わせるために、適宜データを間引きした後に線形補間で0.01秒サンプリングのデータを作成した。
2005年及び2021年の地震については、東京都千代田区大手町の震度計データの東西成分に52型一倍強震計の特性に合わせるフィルターをかけたものを使用した。
相関係数は、S-P時間に40秒加えた時間窓を、お互いの地震のP波到達時刻の前1秒~後1秒の間について0.01秒ずつ動かしつつ計算し、最大値を取った。
3.解析結果
解析結果の例として、図3に2005年の地震と各地震の波形の重ね合わせ及び相関係数を示した。相関係数の全解析結果は表1に示してあり、0.69~0.93であった。
4.議論
2021年と2005年の地震の相関係数は0.93と高いことから、相似地震と考えられる。1980年及び1956年の地震については相関係数が0.9に届かない結果となっているが、これらは手作業での読み取りであることや、地震計のペン先が太く、細かな揺れを読み取るには限界があることを考えると、十分高い相関係数であると思われる。地震波形の重ね合わせでは良く似ていることが見て取れることからも、これらの地震もほぼ同じアスペリティを破壊する繰り返し相似地震であろうと考えられる。
1928年の地震については未解析であるが、それも含めて相似地震と仮定し、各地震によるすべり量をHanks and Kanamori (1979)及びNadeau and Johnson (1998)の式を用いて求め、積算すべり量のグラフに示したのが図4である。2005年までの地震のプロットは最小自乗法で求めた直線(青)にほぼ乗ることから、この繰り返し相似地震活動はすべり予測モデルに合うものであり、地震時にはアスペリティのすべり残しがほぼない活動であると考えられる。また、各地震の発生直前の累積すべり量は最小自乗法で求めた直線(緑)にほぼ乗ることから、時間予測モデルにも合うものであると考えられる。また、どちらの直線も傾きがほぼ同じことから、ほぼ同じすべり量の地震がほぼ一定の時間間隔で発生していると考えられる。時間予測モデルからは、2005年の次の地震は2028年半ばに発生すると予測されるが、実際には前回の地震から16.2年後の2021年10月に発生した。これは、2011年の東北地方太平洋沖地震の影響により太平洋プレートの沈み込み速度が速くなったことが原因と考えられる。
謝辞
解析に使用させていただいた地震記象紙検索システムは、気象庁所蔵の地震記象紙を文部科学省および(公財)地震予知総合研究振興会が高解像度スキャンし、デジタル画像化したものである。地震波形読み取りには、日本荷電粒子核反応データグループが開発したGSYS2.4を使用させていただいた。ここに記して感謝申し上げる。