11:00 〜 13:00
[SSS12-P01] 丹生山地西縁、朝日・蝉口断層の断層変位地形と変位速度
キーワード:朝日・蝉口断層、活断層、変位速度、丹生山地
丹生山地は福井県北部に位置する標高600 m程度以下の山地で、西は日本海に面し、東は福井平野に接する。調査対象である朝日・蝉口断層は丹生山地南部の東縁沿いに分布している(活断層研究会編,1991など)。朝日・蝉口断層は、活断層研究会編(1991)では確実度IIの活断層とされていたが、その後に発表された今泉ほか編(2018)では推定活断層として図示されており、確実な活断層とは認定されていない。また、田力ほか(2019)では本断層の詳細な位置形状が示されているが、空中写真判読のみによる調査であったため、変位地形・変位様式の詳細や活動性については不明の点が多い。そこで本研究では、これらを明らかにすることを目的として、より詳細な空中写真判読に加え、現地調査による変位地形の詳細の確認、現地測量または図上計測による地形断面図の作成、変位基準となる河成段丘面の被覆層の試料採取と分析を行った。
調査地域には、日野川の支流である天王川や和田川、およびその支流群が形成した河成段丘群が良く発達する。これらの段丘面について、その連続性や高度分布、形態(開析度や段丘崖の形状など)に基づいてT1~T6面の6つに分類した。朝日・蝉口断層はこれらの段丘面を西上がりに変位させている。断層変位地形は朝日~岩開付近、佐々生付近、蝉口付近で特に顕著で、朝日~岩開付近ではT1面を、佐々生および蝉口付近ではT5面を西上がりに撓曲変形させている。また、岩開~八田付近の断層西側の山地中には、西流する河川群の上流が断ち切られたような風隙地形が多数発達すること、佐々生・蝉口・八田付近に閉塞凹地状の小盆地が発達すること、八田新保付近の谷底面(T3面)が背斜状の形態を示すことも、ここに西上がり変位が生じていることを示唆する。
現地においては、露頭調査1地点(FIW地点,T1面)、ボーリング掘削を2地点(FSAB地点,T5面;FHTB地点,T3面)、地形断面測量を5測線で行った。露頭・ボーリングで採取した試料については、テフラ対比のための各種分析(粒子組成分析、火山ガラス・角閃石の主成分分析)を行った。T1面のFIW露頭では大山ホーキ、DKP、K-Tz、美浜テフラ等、多くのテフラが含まれると推定された。特に段丘堆積物の最上部を構成すると思われる砂層(2.2-1.7m)を覆う粘土層上部にhpm1(FT年代は約23万年前;木村ほか,1999)が認められることから、T1面の年代を23万年前頃とした。T3面のFHTBボーリングでは、AT、DKP、K-Tzが含まれると推定された。段丘面を構成する地層と思われる0.85-1.63 mの礫混じり泥層にK-Tz(約9.5万年前;町田・新井編,2003)が含まれること、それを覆うフラッドロームと思われるシルト層(0.34-0.85 m)上部にDKP(約6万年前;長橋ほか,2016)が含まれることから、T3面の年代は6~9.5万年前と推定される。T5面のFSABボーリングでは、段丘堆積物中のシルト層中にDKP、段丘堆積物を覆うフラッドローム層にATと再堆積と思われるDKPが含まれる。以上のことから、T5面は最終氷期に堆積が進み、最終氷期終わり頃~後氷期に離水した段丘面と考えられる。丹生山地内にはT5面に対比される段丘面が広く発達し、既報(五味,1995MS)でも段丘堆積物中にDKPを含む露頭が複数報告されている。以上のことから、ここではATの年代(約3万年前;町田・新井編,2003)から、段丘の年代は3万年前頃とした。以上の各段丘面の年代と、地形断面図上で測定した上下変位量から、断層の上下変位速度を算出した。T1面の変位量(約30 m)から、岩開付近の上下変位速度は0.13 mm/yrと算出された。断層低下側のT3面は沖積面下に埋没している可能性が高いため、この辺に速度は最小値である。佐々生~蝉口付近のT5面の変位量は1.7~5.9 mで、上下変位速度は0.06~0.20 mm/yrと算出された。ここでも断層低下側のT5面が沖積面下に埋没していると考えられるため、変位速度は最小値である。T1面、T5面とも、変位速度は0.1~0.2 mm/yr程度で類似しており、少なくとも過去20万年間程度は同様な変位が累積してきた可能性が考えられる。
調査地域には、日野川の支流である天王川や和田川、およびその支流群が形成した河成段丘群が良く発達する。これらの段丘面について、その連続性や高度分布、形態(開析度や段丘崖の形状など)に基づいてT1~T6面の6つに分類した。朝日・蝉口断層はこれらの段丘面を西上がりに変位させている。断層変位地形は朝日~岩開付近、佐々生付近、蝉口付近で特に顕著で、朝日~岩開付近ではT1面を、佐々生および蝉口付近ではT5面を西上がりに撓曲変形させている。また、岩開~八田付近の断層西側の山地中には、西流する河川群の上流が断ち切られたような風隙地形が多数発達すること、佐々生・蝉口・八田付近に閉塞凹地状の小盆地が発達すること、八田新保付近の谷底面(T3面)が背斜状の形態を示すことも、ここに西上がり変位が生じていることを示唆する。
現地においては、露頭調査1地点(FIW地点,T1面)、ボーリング掘削を2地点(FSAB地点,T5面;FHTB地点,T3面)、地形断面測量を5測線で行った。露頭・ボーリングで採取した試料については、テフラ対比のための各種分析(粒子組成分析、火山ガラス・角閃石の主成分分析)を行った。T1面のFIW露頭では大山ホーキ、DKP、K-Tz、美浜テフラ等、多くのテフラが含まれると推定された。特に段丘堆積物の最上部を構成すると思われる砂層(2.2-1.7m)を覆う粘土層上部にhpm1(FT年代は約23万年前;木村ほか,1999)が認められることから、T1面の年代を23万年前頃とした。T3面のFHTBボーリングでは、AT、DKP、K-Tzが含まれると推定された。段丘面を構成する地層と思われる0.85-1.63 mの礫混じり泥層にK-Tz(約9.5万年前;町田・新井編,2003)が含まれること、それを覆うフラッドロームと思われるシルト層(0.34-0.85 m)上部にDKP(約6万年前;長橋ほか,2016)が含まれることから、T3面の年代は6~9.5万年前と推定される。T5面のFSABボーリングでは、段丘堆積物中のシルト層中にDKP、段丘堆積物を覆うフラッドローム層にATと再堆積と思われるDKPが含まれる。以上のことから、T5面は最終氷期に堆積が進み、最終氷期終わり頃~後氷期に離水した段丘面と考えられる。丹生山地内にはT5面に対比される段丘面が広く発達し、既報(五味,1995MS)でも段丘堆積物中にDKPを含む露頭が複数報告されている。以上のことから、ここではATの年代(約3万年前;町田・新井編,2003)から、段丘の年代は3万年前頃とした。以上の各段丘面の年代と、地形断面図上で測定した上下変位量から、断層の上下変位速度を算出した。T1面の変位量(約30 m)から、岩開付近の上下変位速度は0.13 mm/yrと算出された。断層低下側のT3面は沖積面下に埋没している可能性が高いため、この辺に速度は最小値である。佐々生~蝉口付近のT5面の変位量は1.7~5.9 mで、上下変位速度は0.06~0.20 mm/yrと算出された。ここでも断層低下側のT5面が沖積面下に埋没していると考えられるため、変位速度は最小値である。T1面、T5面とも、変位速度は0.1~0.2 mm/yr程度で類似しており、少なくとも過去20万年間程度は同様な変位が累積してきた可能性が考えられる。