11:00 〜 13:00
[SSS12-P04] 根尾谷断層ボーリングコア中の変形構造の分布とその特徴
キーワード:変形構造、根尾谷断層
根尾谷断層は,岐阜県本巣市根尾地域を中心に位置する活断層であり,1891年に起きた濃尾地震の際に最大左横ずれ8 m,最大縦ずれ6 mの変位を引き起こした大規模な断層である.根尾谷断層については古くから多くの研究が行われ,地球科学研究室においても研究が行われてきたが,根尾谷断層の断層破砕帯の内部構造についてはまだ不明な点が多い.
根尾谷断層では2019年に原子力規制庁によって本巣市根尾水鳥でボーリング掘削が行われた(原子力規制庁, 2019).このボーリングコアを詳細に観察することで断層の内部構造が明らかになることが期待される.
断層破砕帯には最新すべり面の他に多数の変形構造が発達している.そのため,断層破砕帯の内部構造を明らかにするためには変形構造の分布と特徴を把握する必要がある.
本研究の目的は,根尾谷断層ボーリングコア中の変形構造の分布とその特徴を把握するとともに、最新すべり面との関係を明らかにすることにより,断層破砕帯の内部構造を明らかにすることである.
研究対象としたボーリングコアは,パイロット孔のNDFP-1と本孔であるNDFD-1-S1の2本である.NDFP-1は比較的浅い地点で,NDFD1-S1は深い地点で最新すべり面を貫通する.両ボーリングコアは,根尾谷断層の走向にほぼ直交する方向に掘削されている.掘削地付近の地質は,ジュラ紀付加体である美濃帯であり,泥岩基質のメランジュが分布し,砂岩・チャート・玄武岩等がブロックとして含まれる.
ボーリング柱状図の記載事項や,ボーリングコアの観察結果に基づいて,変形構造が現れる掘削深度と変形構造の角度を計測し,断層破砕帯における変形構造の分布を把握する.
ボーリングコア中に変位が確認できた場合、そこにせん断面が発達していると判断する.せん断面には,単独で発達しているものと連続して発達しているものが存在するため、前者を”単独のせん断面”,後者を”複数のせん断面”と分けて定義する.せん断面の角度θは、コア軸に垂直な面となす角度と定義する.
NDFD-1-S1での角度分布図を作成した結果,せん断面の角度は掘削深度に関係なく30°~60°にかけて分布し,全体として60°付近に集中が見られることが明らかになった.
なお,せん断面とコア軸がなす角度αによってコア中でのせん断面の出現する頻度が異なるために,出現率の補正を行う必要がある.その補正は,1∕sinα=1∕cosθ をせん断面の出現率に乗じることで行っている.また,NDFP-1については掘削傾斜が50°であり,せん断面とコア軸がなす角度がせん断面の実際の傾斜と大きく異なるため,角度分布についての検討は行っていない.
矢田部(2022)による最新すべり面周辺のX線CT画像から読み取ったNDFD-1-S1最新すべり面の角度は74°であった.このことと、NDFD-1-S1中のせん断面の角度分布が60°付近に集中が見られることを照らし合わせると、NDFD-1-S1中に発達するせん断面は最新すべり面に対して低角に斜交する傾向があるといえる.
複合面構造を考慮すると, R1せん断面は主断層面であるY面に対してわずかに斜交する.根尾水鳥では北東側を隆起させる縦ずれが卓越していることから,R1せん断面は北東側に中~高角に傾斜する.このことと,NDFD-1-S1中のせん断面が最新すべり面と低角に斜交し60°付近に角度集中が見られることは矛盾しないことから,NDFD-1-S1中のせん断面はR1せん断面であるものが多いと考えられる.
原子力規制庁(2019)平成30年度原子力規制庁請負成果報告書, 断層活動性評価手法の構築に係る破砕帯掘削調査.
矢田部ほか(2021)根尾谷断層ボーリング孔から得られた低密度の最新すべり面と鉱物充填. 第128年学術大会日本地質学会学術大会講演要旨集.
根尾谷断層では2019年に原子力規制庁によって本巣市根尾水鳥でボーリング掘削が行われた(原子力規制庁, 2019).このボーリングコアを詳細に観察することで断層の内部構造が明らかになることが期待される.
断層破砕帯には最新すべり面の他に多数の変形構造が発達している.そのため,断層破砕帯の内部構造を明らかにするためには変形構造の分布と特徴を把握する必要がある.
本研究の目的は,根尾谷断層ボーリングコア中の変形構造の分布とその特徴を把握するとともに、最新すべり面との関係を明らかにすることにより,断層破砕帯の内部構造を明らかにすることである.
研究対象としたボーリングコアは,パイロット孔のNDFP-1と本孔であるNDFD-1-S1の2本である.NDFP-1は比較的浅い地点で,NDFD1-S1は深い地点で最新すべり面を貫通する.両ボーリングコアは,根尾谷断層の走向にほぼ直交する方向に掘削されている.掘削地付近の地質は,ジュラ紀付加体である美濃帯であり,泥岩基質のメランジュが分布し,砂岩・チャート・玄武岩等がブロックとして含まれる.
ボーリング柱状図の記載事項や,ボーリングコアの観察結果に基づいて,変形構造が現れる掘削深度と変形構造の角度を計測し,断層破砕帯における変形構造の分布を把握する.
ボーリングコア中に変位が確認できた場合、そこにせん断面が発達していると判断する.せん断面には,単独で発達しているものと連続して発達しているものが存在するため、前者を”単独のせん断面”,後者を”複数のせん断面”と分けて定義する.せん断面の角度θは、コア軸に垂直な面となす角度と定義する.
NDFD-1-S1での角度分布図を作成した結果,せん断面の角度は掘削深度に関係なく30°~60°にかけて分布し,全体として60°付近に集中が見られることが明らかになった.
なお,せん断面とコア軸がなす角度αによってコア中でのせん断面の出現する頻度が異なるために,出現率の補正を行う必要がある.その補正は,1∕sinα=1∕cosθ をせん断面の出現率に乗じることで行っている.また,NDFP-1については掘削傾斜が50°であり,せん断面とコア軸がなす角度がせん断面の実際の傾斜と大きく異なるため,角度分布についての検討は行っていない.
矢田部(2022)による最新すべり面周辺のX線CT画像から読み取ったNDFD-1-S1最新すべり面の角度は74°であった.このことと、NDFD-1-S1中のせん断面の角度分布が60°付近に集中が見られることを照らし合わせると、NDFD-1-S1中に発達するせん断面は最新すべり面に対して低角に斜交する傾向があるといえる.
複合面構造を考慮すると, R1せん断面は主断層面であるY面に対してわずかに斜交する.根尾水鳥では北東側を隆起させる縦ずれが卓越していることから,R1せん断面は北東側に中~高角に傾斜する.このことと,NDFD-1-S1中のせん断面が最新すべり面と低角に斜交し60°付近に角度集中が見られることは矛盾しないことから,NDFD-1-S1中のせん断面はR1せん断面であるものが多いと考えられる.
原子力規制庁(2019)平成30年度原子力規制庁請負成果報告書, 断層活動性評価手法の構築に係る破砕帯掘削調査.
矢田部ほか(2021)根尾谷断層ボーリング孔から得られた低密度の最新すべり面と鉱物充填. 第128年学術大会日本地質学会学術大会講演要旨集.