日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 活断層と古地震

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (18) (Ch.18)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:白濱 吉起(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層火山研究部門活断層評価研究グループ)、佐藤 善輝(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 平野地質研究グループ)、コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

11:00 〜 13:00

[SSS12-P10] 安政南海地震時に徳島県と和歌山県で発生した火災の特徴

*南 怜奈1馬場 俊孝2 (1.徳島大学大学院創成科学研究科理工学部専攻(工学)、2.徳島大学大学院社会産業理工学研究部)


キーワード:古地震、火災

地震により発生する被害として,揺れによる建物倒壊や津波,地すべりなどが挙げられるが,火災も無視できない.歴史地震においても火災の記録が多数存在するものの,整理が不十分である.そこで本研究では安政南海地震において徳島県と和歌山県で発生した火災の状況を古文書と絵図から読み取った.特に焼止まり地点に注目して整理した.
詳細な記録が残されていた火災は徳島市内町,小松島市,田辺市の3地域であった.徳島市内町の火災では,「佐古郷土史」によると3ヶ所から出火し,四方に広がり,約23時間にわたる火災となった.死者73人,怪我人131人を出した.「御城下絵図」から焼失した2つの屋敷の場所が特定でき,さらに内町は藩士や家老などの屋敷,町人町であったことが分かる.火は屋敷の塀や道路,川が焼止まり地点となり,拡大を防いだと推測できる.今回調査した3地域の中では,焼失面積が最も大きく,死者怪我人においても最も多い火災であった.小松島市の火災では,「小松島市史上巻」によると料理屋から出火し,北西の風によって町全体に広がった.人的被害は出なかったが348軒が焼失する火災であった.絵図から出火地点の位置が特定でき,火は寺院の塀や川,水田が焼止まり地点となり,拡大を防いだと推測できる.3地域の中では,死者怪我人が1人も出ず,鎮火までの時間が最も短い火災であった.田辺市の火災では,「和歌山県災害史」によると倒壊した潰家から出火し,変化する風向きによって下級武士屋敷を中心に広がった.死者は1人,怪我人が多数,家屋が355焼失した.「田辺城下図」から当時,田辺城とそれを囲む堀があったことがわかり,火は堀,川などの水辺や屋敷,道路が焼止まり地点となり,拡大を防いだと推測できる.3地域の中では鎮火までの時間が最も長く,焼失面積が最も小さい火災であった.本研究により,安政南海地震によって出火した火災の出火地点は倒壊した家屋や夕食の準備中の店で,焼止まり地点は武家屋敷や寺院,建築物の塀,道路,川や堀などの水辺が特定でき,これらが各地の延焼の拡大を防いだことが分かった.