日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT37] 空中からの地球計測とモニタリング

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (26) (Ch.26)

コンビーナ:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、コンビーナ:楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、コンビーナ:大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、座長:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

11:00 〜 13:00

[STT37-P02] 火山性二酸化硫黄(SO2)ガスと温度分布を画像計測するためのマルチバンド非冷却赤外線カメラプロトタイプシステムの開発

*實渕 哲也1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:二酸化硫黄ガス、火山観測、赤外リモートセンシング

火山から放出されるSO2ガス量を測定することは,火山の短期的な活動を予測するのに有効である.その為の観測手法として,我々は,「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト 次世代火山研究推進事業 課題B:先端的な火山観測技術の開発(リモートセンシングを活用した火山観測技術の開発)B2の2:火山表面現象遠隔観測技術の開発」の下で,SO2ガスをリモートセンシングするためのイメージングシステムを開発中である.このプロジェクトでは,非冷却赤外線カメラを搭載した表面現象イメージングカメラ(SPIC-UC)と呼ばれる新しい観測装置の開発を計画している.我々は,SPIC-UCを地上からの観測と空中からの観測の両方で使用できる,手持ち可能なイメージングシステムにすることを目指している.

この研究では,SPIC-UCのプロトタイプ用のマルチバンド非冷却赤外線カメラプロトタイプシステム:SPIC-UC-4VGAプロトタイプの開発結果を示す.SPIC-UC-4VGAは,内蔵型光学フィルターを備えた4台の非冷却赤外線カメラ(カメラ1,カメラ2,カメラ3,カメラ4)で構成される.これらのカメラはすべて,焦点面アレイ(FPA)タイプのアモルファスシリコンマイクロボロメータエレメントを採用している.カメラ1は7500-14000 nmの領域を測定し,カメラ2は9000-14000 nmの領域を測定し,カメラ3はSO2吸収帯に一致する7950-9300 nmの領域を測定し,カメラ4はSO2吸収のない11750-12750nmの領域を測定する.これらの4台のカメラは,30fpsでフレーム同期データを取得できる.また,SPIC-UC-4VGAプロトタイプは,屋外での使用を考慮した耐環境型として実現されている.このシステムの性能評価結果は,すべてのカメラが±2K以内の絶対温度精度を達成できることを示している.また,SO2検出用のカメラ3は約0.39KのNETDを達成できる.2008年4月8日に桜島で実施した,当所の航空機搭載型ハイパースペクトルセンサー(ARTS)で得られた実際の観測結果と同じSO2ガス濃度分布条件を使用したシミュレーションによるSO2測定精度の評価により,開発したカメラ3は,50°Cの地表面のバックグラウンド条件下で±1ppmvの誤差内でSO2ガス濃度分布を検出できることがわかった.これらの結果は,開発したSPIC-UC-4VGAプロトタイプが火山性のSO2ガスの定量的検出に使用できることを示している.