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[STT39-01] GNSS観測を用いた日本でのL-band InSAR PWVの推定とその精度評価
キーワード:InSAR、ALOS2、可降水量推定、GNSS
近年, 日本では局所的かつ短時間で発達し激しい降雨をもたらす豪雨による被害が発生している. 現状の降水予測では降水量を過小評価してしまうなどの課題があり, 豪雨に対する予測精度を改善する必要がある. 高密度な水蒸気観測データを降水予測に使用することは, 予測精度改善に繋がる手法の1つである. 今回, 高密度な水蒸気情報を観測する手法として, 干渉合成開口レーダ(Interferometric synthetic aperture radar, InSAR)に着目した. InSARは元々衛星視線方向の地表面変位量を観測することができる手法である. 加えて, GNSS(Global Navigation Satellite System)と同じく大気遅延効果によって天頂遅延量や可降水量といった対流圏情報も高い水平分解能で近似的に測定することもできる. InSARによって得られた可降水量をデータ同化させることで、気象モデルはより現実に近い初期値を用いたシミュレーションを行うことが可能になる. 先行研究(例:Mateus et al. 2016 and Miranda et al. 2019)では, InSARによる可降水量データをデータ同化した再予測実験において降水量に対する予測精度が改善したという結果が示されている. InSAR可降水量をデータ同化する前には. まずInSARデータから1時期の可降水量を推定する手法を開発する必要がある。しかし, 先行研究ではC-bandレーダによって得られたInSARデータから推定した可降水量のみを使用しており, 日本の降水事例を対象とした再予測実験も行われていない. 本研究ではGNSS PWVを用いた1時期でのInSAR PWV推定手法を開発し、その推定精度を独立したGNSS PWV観測データを比較した。
1時期のInSAR PWV推定のために、まずGNSSによって観測された天頂遅延量(ZTD)とInSARデータを用いて2回目SAR観測時のZTD分布を推定する. 次に楕円体高・気圧データから天頂静水圧遅延量(ZHD)を計算し, ZTDからZHDを差し引くことで天頂湿潤遅延量(ZWD)を求める. そして, 標高・気温データから計算した比例常数をZWDに掛け合わせ可降水量を計算する. このようにして、1時期でのPWV分布をInSARデータから推定することができる。求めた1時期のInSAR可降水量については、GNSSによって推定された可降水量と比較することで、InSAR PWV推定の精度評価を行なった. 本研究では, Nevada大学Geodetic Laboratory が5分間隔のPPP解析を行ったGNSS連続観測システム(GEONET)のZTDデータと気象庁が提供しているAMeDASによって10分間隔で観測された気温・気圧データを使用した. Nevada大学提供のデータにはPWV推定値も含まれているが、PWV推定手法をInSARと統一するために、生の観測値であるZTDデータのみを使用している。
InSAR解析ではSLC画像を使用しRINC ver. 0.41[Ozawa et al. 2016]によって干渉処理を行った. L-band InSARデータに含まれる電離層遅延ノイズはSplit-Spectrum Methodを用いて補正した. 使用したSARデータはALOS2/PALSAR2のStripmapモードで得られたデータである. 使用データは日本内の茨城南部, 東京・神奈川西部, 大阪, 九州南部の4地域を対象地域とし, 2014年から2020年にかけて観測されたSARデータを用いたInSAR 46シーンとなる. また, ノイズ低減のためにInSARデータの分解能が100×100mとなるようなマルチルック処理を行った.
InSAR 46シーンを使用した可降水量推定の精度検証結果としてGNSS可降水量とInSAR可降水量との残差の平均値は-0.241mm, 標準偏差は1.315mm, RMSE(平均平方二乗誤差)は1.337mmとなった. GNSS可降水量の誤差を考慮すると今回の手法から推定したInSAR可降水量の誤差は3.10mmほどである. この誤差値はMatsuzawa and Kinoshita (2021)で評価したL-Band InSAR可降水量の誤差2.97mmよりもわずかに大きくなったものの、PWVの値域が一般に0~60mmであるため, 今回のPWV推定手法は十分良い精度だと言える. 今後, 今回開発したInSAR可降水量推定手法とMatsuzawa and Kinoshita (2021)で得られた観測誤差を用いて、InSAR水蒸気情報を気象モデルにデータ同化し、降水予測の再現実験を行う予定である.
1時期のInSAR PWV推定のために、まずGNSSによって観測された天頂遅延量(ZTD)とInSARデータを用いて2回目SAR観測時のZTD分布を推定する. 次に楕円体高・気圧データから天頂静水圧遅延量(ZHD)を計算し, ZTDからZHDを差し引くことで天頂湿潤遅延量(ZWD)を求める. そして, 標高・気温データから計算した比例常数をZWDに掛け合わせ可降水量を計算する. このようにして、1時期でのPWV分布をInSARデータから推定することができる。求めた1時期のInSAR可降水量については、GNSSによって推定された可降水量と比較することで、InSAR PWV推定の精度評価を行なった. 本研究では, Nevada大学Geodetic Laboratory が5分間隔のPPP解析を行ったGNSS連続観測システム(GEONET)のZTDデータと気象庁が提供しているAMeDASによって10分間隔で観測された気温・気圧データを使用した. Nevada大学提供のデータにはPWV推定値も含まれているが、PWV推定手法をInSARと統一するために、生の観測値であるZTDデータのみを使用している。
InSAR解析ではSLC画像を使用しRINC ver. 0.41[Ozawa et al. 2016]によって干渉処理を行った. L-band InSARデータに含まれる電離層遅延ノイズはSplit-Spectrum Methodを用いて補正した. 使用したSARデータはALOS2/PALSAR2のStripmapモードで得られたデータである. 使用データは日本内の茨城南部, 東京・神奈川西部, 大阪, 九州南部の4地域を対象地域とし, 2014年から2020年にかけて観測されたSARデータを用いたInSAR 46シーンとなる. また, ノイズ低減のためにInSARデータの分解能が100×100mとなるようなマルチルック処理を行った.
InSAR 46シーンを使用した可降水量推定の精度検証結果としてGNSS可降水量とInSAR可降水量との残差の平均値は-0.241mm, 標準偏差は1.315mm, RMSE(平均平方二乗誤差)は1.337mmとなった. GNSS可降水量の誤差を考慮すると今回の手法から推定したInSAR可降水量の誤差は3.10mmほどである. この誤差値はMatsuzawa and Kinoshita (2021)で評価したL-Band InSAR可降水量の誤差2.97mmよりもわずかに大きくなったものの、PWVの値域が一般に0~60mmであるため, 今回のPWV推定手法は十分良い精度だと言える. 今後, 今回開発したInSAR可降水量推定手法とMatsuzawa and Kinoshita (2021)で得られた観測誤差を用いて、InSAR水蒸気情報を気象モデルにデータ同化し、降水予測の再現実験を行う予定である.