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[STT39-08] InSARを用いた2011年東北地方太平洋沖地震時における宅地造成地での変動検出とその発生背景の考察
キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、谷埋め盛土、InSAR
1. はじめに
日本では、高度経済成長期以降の都市化に伴い、大都市圏における宅地造成の際に盛土や切土が多く行われてきた。盛土造成地では、東北地方太平洋沖地震や熊本地震、北海道胆振東部地震等で滑動崩落や沈下等の宅地盛土の変動が発生し問題となっている。中埜ほか(2021)は、合成開口レーダ干渉法(InSAR)を用いて熊本地震と北海道胆振東部地震に伴う宅地盛土の変動検出に成功した。InSARは、盛土造成地での被害域抽出のみならず現地調査では分からない程のわずかな変動を広域的に抽出可能な利点を持っており、解析事例を増やし盛土造成地の調査手法としての利用可能性を検討する意義がある。そこで、谷埋め盛土地が広く分布する宮城県仙台市に着目し、InSARを用いて東北地方太平洋沖地震により引き起こされた宅地造成地での変動を検出した。そして、捉えられた変動の詳細な空間分布に基づき、既往の宅地被害調査結果等も踏まえながら、宅地盛土の変動発生背景について考察した。本発表では、これらの結果について報告する。
2. 方法
本研究では、東北地方太平洋沖地震が発生した2011年3月11日前後にALOS衛星によって撮像されたデータを用いてInSAR解析を行い、北行軌道と南行軌道からの干渉画像を1枚ずつ作成した。盛土分布と詳細に比較するため、GIS上で国土地理院発行の5 m DEM(現地形DEM)と米軍撮影の航空写真から写真測量により作成された5 m DEM(旧地形DEM:(株)復建技術コンサルタントより提供)の差分を取って仙台市における盛土切土分布推定図を作成し、干渉画像と比較した。また、干渉画像上で顕著に見えた変動の検証やその変動の背景的要因を探るため、現地調査も行なった。
3. 結果と考察
北行軌道の干渉画像において、仙台市内の複数の盛土造成地(泉区七北田川流域、青葉区錦ヶ丘地区、太白区緑ヶ丘地区など)で衛星から遠ざかる方向の明瞭な位相変化が多数認められた。大局的には、変動の空間パターンは樹枝状であり、変動域は谷埋め盛土部分に対応していた。また、南行軌道からの干渉画像でも盛土部分における位相変化が認められたが、北行軌道からの干渉画像の方が明瞭に位相が変化し、変動域が広範囲にわたる結果となった。北行軌道からの干渉画像は、2011年4月7日23時32分に宮城県沖で発生したM7.2の地震による変動を含むため、盛土部分で再び沈下が生じた可能性が考えられる。また、造成地区によっては厚い宅地盛土で変動量が大きい特徴が見られた。東北大学理学部地質学古生物学教室(1979)は、仙台市の宅地盛土では地震動により締め固められると体積減少によって盛土が沈下(圧縮沈下)するとしている。そのため、圧縮沈下が発生すると盛土が厚いほど沈下量も大きくなると考えられ、干渉画像で見られた厚い盛土ほど変動量が大きい特徴は、圧縮沈下のメカニズムとより整合的である。
泉区南光台地区、北中山地区、太白区緑ヶ丘地区では、盛土部分で現れた衛星から遠ざかる方向の局所的な位相変化や非干渉領域が、既往の現地調査で報告された地表変状箇所と整合した。また、被災宅地として現地調査報告が確認出来ない地域(泉区南中山地区、青葉区錦ヶ丘地区)においても、干渉画像より変動が起きたと推測される。
4. おわりに
本研究では、InSAR解析により、東北地方太平洋沖地震後の現地調査により被災が報告された宅地造成地域で変動が確認され、さらに、被災報告がない複数の宅地造成地域においても変動が検出された。変動の特徴から、仙台市の宅地造成地では圧縮沈下が宅地盛土の変動メカニズムに関わる可能性が高いと推測された。本結果は、宅地盛土の変動検出におけるInSARの利用可能性を示すものである。
日本では、高度経済成長期以降の都市化に伴い、大都市圏における宅地造成の際に盛土や切土が多く行われてきた。盛土造成地では、東北地方太平洋沖地震や熊本地震、北海道胆振東部地震等で滑動崩落や沈下等の宅地盛土の変動が発生し問題となっている。中埜ほか(2021)は、合成開口レーダ干渉法(InSAR)を用いて熊本地震と北海道胆振東部地震に伴う宅地盛土の変動検出に成功した。InSARは、盛土造成地での被害域抽出のみならず現地調査では分からない程のわずかな変動を広域的に抽出可能な利点を持っており、解析事例を増やし盛土造成地の調査手法としての利用可能性を検討する意義がある。そこで、谷埋め盛土地が広く分布する宮城県仙台市に着目し、InSARを用いて東北地方太平洋沖地震により引き起こされた宅地造成地での変動を検出した。そして、捉えられた変動の詳細な空間分布に基づき、既往の宅地被害調査結果等も踏まえながら、宅地盛土の変動発生背景について考察した。本発表では、これらの結果について報告する。
2. 方法
本研究では、東北地方太平洋沖地震が発生した2011年3月11日前後にALOS衛星によって撮像されたデータを用いてInSAR解析を行い、北行軌道と南行軌道からの干渉画像を1枚ずつ作成した。盛土分布と詳細に比較するため、GIS上で国土地理院発行の5 m DEM(現地形DEM)と米軍撮影の航空写真から写真測量により作成された5 m DEM(旧地形DEM:(株)復建技術コンサルタントより提供)の差分を取って仙台市における盛土切土分布推定図を作成し、干渉画像と比較した。また、干渉画像上で顕著に見えた変動の検証やその変動の背景的要因を探るため、現地調査も行なった。
3. 結果と考察
北行軌道の干渉画像において、仙台市内の複数の盛土造成地(泉区七北田川流域、青葉区錦ヶ丘地区、太白区緑ヶ丘地区など)で衛星から遠ざかる方向の明瞭な位相変化が多数認められた。大局的には、変動の空間パターンは樹枝状であり、変動域は谷埋め盛土部分に対応していた。また、南行軌道からの干渉画像でも盛土部分における位相変化が認められたが、北行軌道からの干渉画像の方が明瞭に位相が変化し、変動域が広範囲にわたる結果となった。北行軌道からの干渉画像は、2011年4月7日23時32分に宮城県沖で発生したM7.2の地震による変動を含むため、盛土部分で再び沈下が生じた可能性が考えられる。また、造成地区によっては厚い宅地盛土で変動量が大きい特徴が見られた。東北大学理学部地質学古生物学教室(1979)は、仙台市の宅地盛土では地震動により締め固められると体積減少によって盛土が沈下(圧縮沈下)するとしている。そのため、圧縮沈下が発生すると盛土が厚いほど沈下量も大きくなると考えられ、干渉画像で見られた厚い盛土ほど変動量が大きい特徴は、圧縮沈下のメカニズムとより整合的である。
泉区南光台地区、北中山地区、太白区緑ヶ丘地区では、盛土部分で現れた衛星から遠ざかる方向の局所的な位相変化や非干渉領域が、既往の現地調査で報告された地表変状箇所と整合した。また、被災宅地として現地調査報告が確認出来ない地域(泉区南中山地区、青葉区錦ヶ丘地区)においても、干渉画像より変動が起きたと推測される。
4. おわりに
本研究では、InSAR解析により、東北地方太平洋沖地震後の現地調査により被災が報告された宅地造成地域で変動が確認され、さらに、被災報告がない複数の宅地造成地域においても変動が検出された。変動の特徴から、仙台市の宅地造成地では圧縮沈下が宅地盛土の変動メカニズムに関わる可能性が高いと推測された。本結果は、宅地盛土の変動検出におけるInSARの利用可能性を示すものである。