日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 合成開口レーダーとその応用

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (27) (Ch.27)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、コンビーナ:朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[STT39-P01] Sentinel SARを用いた2019年台風19号に伴う埼玉県都幾川周辺の洪水域の抽出

*木戸 洋斗1島田 政信1 (1.東京電機大学)

キーワード:合成開口レーダー、浸水、後方散乱係数

令和元年台風19号は静岡県や関東地方、甲信越地方、東北地方などで記録的な大雨となり、142箇所の河川堤防決壊と約3万5千 haの浸水を引き起こすなど、東日本における豪雨災害として過去最大規模の被害となった。また、近年は地球温暖化により大雨の発生確率が上昇し、それに伴う豪雨災害も多く発生している。今後さらに大雨や短時間強雨の、発生頻度や降水量の増加が予測されており、大規模水害の発災に対する懸念が高まっている。一方で水害の被災調査は多くの人員と多大な危険を要する。そこで本研究では、合成開口レーダー( SAR )の全天候性と広域かつ面的に観測できるという2つのメリットを災害対応に応用することを目的とし、まずは衛星画像に容易に映る水面の検出を主題として考え、
①台風19号の発災時に撮影されたSAR画像から浸水域される地点の後方散乱係数(σ0)と、非浸水域される地点の後方散乱係数(σ0)の分布関数を計測する。次にそれらの交点を閾値(σth)とする、閾値法による分類アルゴリズムの作成。
②分類アルゴリズムを基に、2021年度SentinelのSAR画像に適用し、水域検出の精度を計測し、本閾値法の手法の適正さ、閾値自体の適正さの検証。
③作成した分類アルゴリズムを台風19号当時に当てはめ、精度の検討。を行なった。
 対象地域とデータは、②の分類アルゴリズムの検証には2021年10月から12月にかけて関東地方を撮影したSentinel-1衛星による4枚のSAR画像と、SARの飛来と概ね同期した現地観測によるGPSログデータ、Sentinel-2光学衛星の観測データから作成したNormalized Difference Water Index(NDWI)を用いた。③には荒川水系越辺川、都幾川の堤防決壊による浸水被害の生じた埼玉県川越市、坂戸市、東松山市、比企郡川島町にわたる地域を、2019年11月12日に撮影したSentinel-1のSAR画像を用いた。
 この結果、陸域と水域の分類は、閾値 -19.54 dBで分類精度が83.36 %を(NDWIを用いた検証)、水域の抽出のみの分類は閾値 -16.37 dBで精度 98.92 %(NDWIを用いた検証)を記録した。次に、本アルゴリズムを令和元年台風19号のSAR画像に適用したところ、閾値 -19.54 dBで分類精度60.27 %を、閾値 -16.37 dBで同精度 74.02 %を記録した。この精度の乖離は、真値とした国土地理院の浸水推定段彩図の調査日時と、SARの観測日時におよそ34時間の時間差があることによると考える。
閾値法を用いて開けた水面の検出が高い精度で検出可能であることわかった。今後、市街地における浸水の検出、陸域と水域の二分類の精度向上に取り組み、水害による浸水域の検出精度向上に繋げたい。