日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 合成開口レーダーとその応用

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (27) (Ch.27)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、コンビーナ:朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、朴 慧美(宇宙航空研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[STT39-P05] 房総半島の地盤沈下地域におけるALOS-2高頻度観測データを用いた干渉SAR時系列解析の検証

*三木原 香乃1、石倉 信広1、島﨑 久実1市村 美沙1、石本 正芳1、佐藤 雄大1山下 達也1小林 知勝1 (1.国土交通省 国土地理院)

キーワード:だいち2号、SAR、地盤沈下、水準測量、干渉SAR時系列解析

国土地理院では、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の観測データを用いたSAR干渉解析を実施し、日本全国の地殻・地盤変動を監視している。従来のSAR差分干渉解析よりも地殻・地盤変動の時間的推移を高い精度で検出することを目的として、PSI法及びSBAS法による干渉SAR時系列解析システム「GSITSA」を開発した(小林ほか、2018)。GSITSAを用いて、国内38活火山(2022年2月現在)を対象に干渉SAR時系列解析を実施し、一部の火山においてこれまで十分に捉えられなかった微小な地殻変動の時間変化を捉えることができた(三木原ほか、2021;Ichimura et al., 2021)。さらに、2022年度に打ち上げ予定である先進レーダ衛星(ALOS-4)では、ALOS-2に比べ観測頻度が約5倍に向上するため、干渉SAR時系列解析を活用することでより高精度な変動の検出が可能になると期待されている。
以上のことから、ALOS-4データの活用に向けて、新たに国内の地盤沈下地域を対象とした干渉SAR時系列解析を実施し、微小な地殻変動の時間変化を捉えることが可能か検証を行っている。本発表では、主に千葉県の房総半島における解析結果について報告する。房総半島は、地盤沈下を対象とした水準測量データが毎年蓄積されており地上観測との比較が可能である。また、通常であれば年に3回程度のSAR観測を、2020年12月以降、月に1回程度の高頻度で実施しており、ALOS-4を想定した高頻度観測の効果等についての検証に適した地域である。こうした背景の下、干渉SAR時系列解析と水準測量成果との比較・検証結果について報告する。
検証では、2014年から2021年にかけて蓄積された南行右観測(パス18)と北行右観測(パス124、125)の3種類のデータを用いて干渉SAR時系列解析を行い、これらの結果を組合せて2.5次元解析を実施した。解析に使用した画像数は、パス18で32枚、パス124で29枚、パス125で22枚(2022年2月時点)であり、パス18とパス124は月1回程度の高頻度観測が行われた。2.5次元解析から得られた準上下方向の変位速度と千葉県が毎年実施し公開している水準測量の成果(2016年~2020年の1年ごとの成果)から算出した変位速度を比較したところ、千葉県内で沈下速度が最も大きい北総地域周辺を含む解析エリアの大部分で高い相関が得られた。この検証結果の詳細について報告するとともに、高頻度観測データの有効性について議論する。

謝辞:本研究で用いたALOS-2データは、「陸域観測技術衛星2号観測データ等の高度利用に関する協定」を通じて宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けた。原初データの所有権はJAXAにある。