11:00 〜 13:00
[STT39-P06] 衛星SAR差分干渉解析による市街地における地表変位の検出
キーワード:差分干渉、InSAR、地表変位、地盤沈下、Sentinel
衛星搭載合成開口レーダ(SAR)データの差分干渉解析により、地表や構造物の変位を mm~cm オーダーで検出することが可能である。多時期の観測データを用いて差分干渉解析を実施することにより、時系列の変位履歴を得ることができる。本発表では、衛星 SAR 差分干渉解析による、市街地における地表変位の検出結果を報告する。
2020/10/18に、東京外郭環状道路のトンネル工事のルート直上付近に位置する、調布市東つつじケ丘2丁目付近において、地表面陥没が発生した。当該事象はトンネル工事の影響によるものと考えられている。トンネルは地下47mにおいて直径約16mのシールドマシンにより掘削されたことを考慮すると、地表で確認された離散的な陥没は、その周辺において地盤沈下等の地表変位が生じた可能性を示唆する。このような地表変位の有無及びその影響範囲を調査する場合、衛星SAR差分干渉解析は比較的短時間且つ低コストで広範囲の調査が可能であり、有効な調査手法のひとつであると言える。
解析に使用した衛星SARデータは、欧州宇宙機構の衛星であるSentinel-1 のCバンド(波長約6cm)SARデータである。Sentinel-1データの特徴として、回帰日数である12日間隔の頻度で毎軌道の観測が行われることと、無償で利用可能であることが挙げられる。また一般に衛星SAR差分干渉解析による変位の検出分解能はマイクロ波の波長の1/10程度とされることから、CバンドSARデータの場合はmm~cmオーダーの変位が検出可能と考えられる。但しCバンドSARデータは植生(枝、葉等)による散乱の影響を被るために、一般に植生被覆地域の解析には不向きとされる。解析対象地域は市街地であり、CバンドSARデータの適用上、大きな問題は生じないと考える。解析対象地域を観測するSentinel-1データのうち、北行軌道で2020/7/14~2020/11/23に観測された12シーン、および南行軌道で2020/7/20~2020/11/29に観測された12シーンを用いた。北行軌道、南行軌道共に、これらのデータから2シーンを選択して成立する干渉ペアのうち、両軌道とも観測間隔が12日(1回帰)から84日(7回帰)までの干渉ペア56組を選定し、差分干渉解析を実施し時系列解析を通じて変位のタイムシリーズを構築した。その結果、以下が判明した。
・北行軌道では、掘削ルートの西側において衛星から遠ざかる変位が、東側では衛星に近づく変位が確認された。
・南行軌道では、北行軌道の結果とは逆に、掘削ルートの東側において衛星から遠ざかる変位が、西側では衛星に近づく変位が確認された。
・北行軌道では9/24以降のデータで、南行軌道では9/18以降のデータで、それぞれ変位が確認された。
異なる軌道で全く逆の変位パターンが検出されており、これらから掘削ルート付近を中心とする沈下の存在が示唆される。また報道によると陥没が生じた地点付近をシールドマシンが通過したのは9/14とされており、変位が確認された時期と整合する。
変位パターンの詳細な調査を目的として、北行軌道の7/14 – 10/30の干渉ペアと、南行軌道の7/20 – 11/5の干渉ペアの差分干渉解析結果を用いて、2.5次元解析を実施した。その結果は、準東西方向の変位について、掘削ルートよりもやや東側を中心として、西側で東向きの地表変位が、東側で西向きの地表変位が、それぞれ生じたことを示している。変位量は東西どちらも最大で2cm程度であった。上下方向については、掘削ルートよりもやや東側を中心とする、最大3cm程度の沈下が示された。
CバンドSARデータを用いた差分干渉解析により、mm~cmオーダーで都市部における地表変位を検出できることを示した。衛星SAR差分干渉解析は、短時間に地表変位状況を把握するための極めて有効な手法である。工事施工時における周辺環境影響のモニタリング調査等への援用が期待される。
2020/10/18に、東京外郭環状道路のトンネル工事のルート直上付近に位置する、調布市東つつじケ丘2丁目付近において、地表面陥没が発生した。当該事象はトンネル工事の影響によるものと考えられている。トンネルは地下47mにおいて直径約16mのシールドマシンにより掘削されたことを考慮すると、地表で確認された離散的な陥没は、その周辺において地盤沈下等の地表変位が生じた可能性を示唆する。このような地表変位の有無及びその影響範囲を調査する場合、衛星SAR差分干渉解析は比較的短時間且つ低コストで広範囲の調査が可能であり、有効な調査手法のひとつであると言える。
解析に使用した衛星SARデータは、欧州宇宙機構の衛星であるSentinel-1 のCバンド(波長約6cm)SARデータである。Sentinel-1データの特徴として、回帰日数である12日間隔の頻度で毎軌道の観測が行われることと、無償で利用可能であることが挙げられる。また一般に衛星SAR差分干渉解析による変位の検出分解能はマイクロ波の波長の1/10程度とされることから、CバンドSARデータの場合はmm~cmオーダーの変位が検出可能と考えられる。但しCバンドSARデータは植生(枝、葉等)による散乱の影響を被るために、一般に植生被覆地域の解析には不向きとされる。解析対象地域は市街地であり、CバンドSARデータの適用上、大きな問題は生じないと考える。解析対象地域を観測するSentinel-1データのうち、北行軌道で2020/7/14~2020/11/23に観測された12シーン、および南行軌道で2020/7/20~2020/11/29に観測された12シーンを用いた。北行軌道、南行軌道共に、これらのデータから2シーンを選択して成立する干渉ペアのうち、両軌道とも観測間隔が12日(1回帰)から84日(7回帰)までの干渉ペア56組を選定し、差分干渉解析を実施し時系列解析を通じて変位のタイムシリーズを構築した。その結果、以下が判明した。
・北行軌道では、掘削ルートの西側において衛星から遠ざかる変位が、東側では衛星に近づく変位が確認された。
・南行軌道では、北行軌道の結果とは逆に、掘削ルートの東側において衛星から遠ざかる変位が、西側では衛星に近づく変位が確認された。
・北行軌道では9/24以降のデータで、南行軌道では9/18以降のデータで、それぞれ変位が確認された。
異なる軌道で全く逆の変位パターンが検出されており、これらから掘削ルート付近を中心とする沈下の存在が示唆される。また報道によると陥没が生じた地点付近をシールドマシンが通過したのは9/14とされており、変位が確認された時期と整合する。
変位パターンの詳細な調査を目的として、北行軌道の7/14 – 10/30の干渉ペアと、南行軌道の7/20 – 11/5の干渉ペアの差分干渉解析結果を用いて、2.5次元解析を実施した。その結果は、準東西方向の変位について、掘削ルートよりもやや東側を中心として、西側で東向きの地表変位が、東側で西向きの地表変位が、それぞれ生じたことを示している。変位量は東西どちらも最大で2cm程度であった。上下方向については、掘削ルートよりもやや東側を中心とする、最大3cm程度の沈下が示された。
CバンドSARデータを用いた差分干渉解析により、mm~cmオーダーで都市部における地表変位を検出できることを示した。衛星SAR差分干渉解析は、短時間に地表変位状況を把握するための極めて有効な手法である。工事施工時における周辺環境影響のモニタリング調査等への援用が期待される。