日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT41] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (25) (Ch.25)

コンビーナ:堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター)、コンビーナ:八木 勇治(国立大学法人 筑波大学大学院 生命環境系)、汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:堀 高峰(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[STT41-P04] 1944年東南海・1946年南海地震による西日本の内陸断層への応力載荷

*橋間 昭徳1堀 高峰1飯沼 卓史1、村上 颯太2、市村 強2、藤田 航平2 (1.海洋研究開発機構、2.東京大学地震研究所)

キーワード:応力蓄積、南海トラフ、東南海・南海地震、フィリピン海プレート、内陸断層、有限要素法

西日本沖の南海トラフにはフィリピン海プレートが沈み込んでおり、100-200年の間隔でM~8の巨大地震を引き起こしている。最も新しいのは1944年東南海地震と1946年南海地震であり、それから70年以上が経過した現在、次の巨大地震の発生が危惧されている。一方、歴史地震の研究からは巨大地震の発生前後で西日本において内陸地震が活発化することが知られている。したがって南海トラフの巨大地震が内陸の断層に与える影響、すなわち応力変化を力学的に見積もることが、南海トラフ地震の発生様式に応じて内陸地震の危険度を評価するうえで重要である。南海トラフ地震はこれまで多様な発生パターンを示してきたので、それぞれの発生パターンによる応力変化を調べておく必要がある。1944、1946年の巨大地震は、半割れ-全割れのタイプであるが、これらの地震に1945年三河地震、1948年福井地震といった被害地震が引き続いた。特に、1945年三河地震は、半割れ直後で全割れの前というタイミングでの地震発生であり、半割れについてもその影響を見積もることの重要性を示している。そこで、本研究では、1944、1946年の半割れ-全割れを通して、西日本の各内陸断層にどのような応力変化が引き起こされるのかを計算する。
まず、Okada (1992)による半無限弾性体モデルを用いて予備的に応力変化を見積もった。プレート境界形状はKoketsu et al. (2009, 2012)によるモデルを用い、すべり方向はMiyazaki & Heki (2001)の相対速度方向にとる。内陸断層の位置、走向、傾斜、すべり方向は地震調査研究推進本部の全国地震動予測地図(2005)によるものを用いた。東南海地震と南海地震の震源域にそれぞれ2 mと4 mの一様なすべり量を与え、見かけの摩擦係数を0.4として内陸の各断層におけるクーロン応力変化を計算した。1944年の半割れ直後は主に中部〜近畿地方北部の断層に対し促進的な応力がかかる一方、近畿地方南部〜四国の断層に対しては抑制的な応力がかかる。その後の南海地震により、近畿地方南部〜四国の断層は抑制的から促進的に転じる。しかし、中部地方での応力には大きな変化は見られなかった。1944、1946年の半割れ-全割れによる応力変化は最大0.2 MPaであった。逆に、南海地震が先に発生したと仮定した場合には、四国から中部地方南部の断層に促進的な応力がかかる一方、近畿〜中部地方北部の断層は抑制的になる。その後の全割れでは、中部地方の断層の多くで抑制的と促進的な応力が入れ替わる。
本発表においては、西南日本弧〜フィリピン海スラブの地形、不均質地下構造と弾性粘弾性の物性や、先行文献によるすべり分布などを用いることによる、内陸断層の応力変化への影響を検証する。これらの計算により、南海トラフの巨大地震発生に伴う内陸地震の発生危険性を見積もることが可能となる。