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[SVC28-08] 2021年福徳岡ノ場噴火の黒色軽石中に含まれるナノライトの意義
キーワード:福徳岡ノ場、漂着軽石、ナノライト、XANES
福徳岡ノ場は座標24°17.1’N/141°28.9’E,伊豆小笠原弧,南硫黄島の北東約5kmに位置する海底火山である.2021年8月13日に爆発的な噴火を起こし,噴出した多量の軽石は10月中旬には南西諸島へ,11月中旬には関東地方へと漂着した.漂着軽石は多様な色と組織を持っており,主要な割合を占めるものは黒い粒を含む灰色の軽石であり,しばしばその見た目から「チョコチップクッキー」に例えられるものであった(灰色軽石と呼ぶ).灰色軽石と全岩化学組成は同じであるにもかかわらず黒い見た目をした発泡ガラス石基を持つ「黒色軽石」も含まれていた.Yoshida et al. (2022) の岩石学的な記載では,灰色軽石と黒色軽石の石基ガラスは薄片上でそれぞれ無色透明,および透明な茶色をしている.茶色のガラスからはラマン分光により磁鉄鉱を示す670cm-1のブロードなピークが得られたことから,光学顕微鏡では見えない磁鉄鉱ナノライトによって茶色を呈していると結論付けられた.また,灰色軽石と黒色軽石が接する部分では,引き伸ばされた泡形状を見せる灰色軽石と比較的球形に近い泡を保っている黒色軽石という組織のコントラストが見られた.
本研究では,2021年福徳岡ノ場噴出軽石中のガラス中のナノライトについて,よリ詳細に調べるべくXANES,TEM,および結晶晶出のモデル計算を実施し,噴火準備過程におけるナノライト形成の役割を検討した.
フォトンファクトリーBL4Aにて実施したμXANESの結果,ガラス中のFe3+/全Fe比は無色・茶色ガラスで優位な差は見られず,約0.25であった.
無色ガラスと茶色ガラスが明瞭な境界で接している部分を切り出してTEM観察を実施したところ,茶色ガラス領域にのみ微細な粒子(ナノライト)が観察された.観察されたナノライトは~10nmの磁鉄鉱,~50nmの黒雲母様鉱物,~200nmの単斜輝石であった.
Yoshida et al. (2022) で報告したガラス組成と温度圧力条件,およびXANES結果から推定したfO2を用いて,rhyolite-MELTSによる相平衡計算を行ったところ,マグマ溜まりよりやや高温の1000℃,250MPaで,>3%程度の含水量を仮定するとリキダス相として磁鉄鉱を得た.また,890℃,250MPaで固相として磁鉄鉱と黒雲母を得た.
Yoshida et al. (2022) では,黒色軽石や,灰色軽石中の黒色包有物に見られるマグネシウムに富むかんらん石(~Fo92)から,噴出物として観察されていない玄武岩質マグマが2021年の福徳岡ノ場の爆発的噴火を引き起こしたとしている.TEM,XANES,及び相平衡計算の結果,ナノライトとして観察された鉱物が福徳岡ノ場のマグマ溜まりの温度圧力条件と十分な含水量のもとで晶出しうることがわかった.玄武岩マグマによってもたらされた熱と揮発性成分が,福徳岡ノ場の粗面岩マグマにナノライト晶出をもたらし,それによる粘性率の増加が爆発的噴火に寄与したことが示唆される.
本研究では,2021年福徳岡ノ場噴出軽石中のガラス中のナノライトについて,よリ詳細に調べるべくXANES,TEM,および結晶晶出のモデル計算を実施し,噴火準備過程におけるナノライト形成の役割を検討した.
フォトンファクトリーBL4Aにて実施したμXANESの結果,ガラス中のFe3+/全Fe比は無色・茶色ガラスで優位な差は見られず,約0.25であった.
無色ガラスと茶色ガラスが明瞭な境界で接している部分を切り出してTEM観察を実施したところ,茶色ガラス領域にのみ微細な粒子(ナノライト)が観察された.観察されたナノライトは~10nmの磁鉄鉱,~50nmの黒雲母様鉱物,~200nmの単斜輝石であった.
Yoshida et al. (2022) で報告したガラス組成と温度圧力条件,およびXANES結果から推定したfO2を用いて,rhyolite-MELTSによる相平衡計算を行ったところ,マグマ溜まりよりやや高温の1000℃,250MPaで,>3%程度の含水量を仮定するとリキダス相として磁鉄鉱を得た.また,890℃,250MPaで固相として磁鉄鉱と黒雲母を得た.
Yoshida et al. (2022) では,黒色軽石や,灰色軽石中の黒色包有物に見られるマグネシウムに富むかんらん石(~Fo92)から,噴出物として観察されていない玄武岩質マグマが2021年の福徳岡ノ場の爆発的噴火を引き起こしたとしている.TEM,XANES,及び相平衡計算の結果,ナノライトとして観察された鉱物が福徳岡ノ場のマグマ溜まりの温度圧力条件と十分な含水量のもとで晶出しうることがわかった.玄武岩マグマによってもたらされた熱と揮発性成分が,福徳岡ノ場の粗面岩マグマにナノライト晶出をもたらし,それによる粘性率の増加が爆発的噴火に寄与したことが示唆される.