11:00 〜 13:00
[SVC29-P04] 榛名火山における溶岩ドーム形成噴火―45-10kaの4噴火と二ツ岳伊香保噴火の比較
キーワード:榛名火山、溶岩ドーム、暗色包有物、マッシュ状珪長質マグマ、マグマ混合
榛名火山において45-10 kaに発生した4つの溶岩ドーム形成噴火(榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山)について岩石学的検討を実施した。その結果を、6世紀後半〜7世紀初頭に発生した二ツ岳伊香保噴火の成果(Suzuki and Nakada, 2007)と比較し、榛名火山新期活動(45ka以降)についてマグマ供給系や噴火誘発過程の共通点や噴火毎の差異を明らかにすることを試みた (Suzuki et al., in review)。45-10 kaの噴火は溶岩ドームのみを形成したが、二ツ岳伊香保噴火はプリニー式噴火であり終期に溶岩ドームが定置した。全岩組成分析、鉱物組成分析、斑晶モード分析などを実施した。マグマの温度は角閃石斑晶にPutirka(2016)の方法を適用して算出した。
古い4つの噴火の溶岩には暗色包有物の部分(SiO2 50.9-55.1 wt.%)とホスト部分(SiO2 59.5-64.5 wt.%)がある。これらは全て2端成分マグマの混合産物である。珪長質端成分マグマのバルク組成や含有鉱物の種類・組成には4噴火で差異がない。一方、苦鉄質端成分のバルク組成には、僅かではあるが噴火毎に違いがある。珪長質端成分(SiO2 ≥ 63 wt.%、760-860C)は総量で≥ 60 vol.%の斜方輝石・角閃石・斜長石・石英・Fe-Ti酸化物を有している。苦鉄質端成分(SiO2 48-51 wt.% )は0-10 vol.% のカンラン石を有している。
榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山の4噴火と二ツ岳伊香保噴火の共通点として、噴火に関与した端成分マグマの基本的特徴が似ている点が挙げられる。すなわち珪長質端成分は珪長質安山岩〜デイサイト組成のマッシュであり、苦鉄質端成分は玄武岩〜玄武岩質安山岩組成の無斑晶質もしくはそれに近いマグマである。これらのことは過去4万5千年間にわたり、マグマ供給系の構造や噴火誘発過程が大きく変化していないことを示唆する。噴出物形成における苦鉄質端成分マグマの混合比は、(榛名富士や水沢山に認められる暗色包有物を除けば)5つのどの噴火においても低い。これは結晶度の高い珪長質マグマが苦鉄質マグマに比べ浅所に存在することと関係する。
5つの噴火全てにおいて、マッシュ状珪長質マグマが主に噴出物を形成していることになる。このような高粘性のマグマが噴出するには、苦鉄質マグマとの混合によって、元の珪長質マグマよりも低粘性のマグマが発生する必要があった。二ツ岳伊香保噴火では、混合マグマと高温マグマによる加熱を受けた珪長質マグマが噴出するフェーズで噴火が開始し、その後、珪長質マグマが単独で噴出するフェーズがあった(Suzuki and Nakada, 2007)。これに対し、榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山の4噴火の溶岩は全てマグマ混合産物であって、二ツ岳伊香保噴火の最初期に相当する段階で噴火が終わったものと見られる。
榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山の4噴火と二ツ岳伊香保噴火の間で珪長質端成分マグマを比較すると、二ツ岳伊香保噴火では前述の組み合わせの中で石英を欠くという違いが見られる。このことは、二ツ岳-伊香保噴火の珪長質端成分がバルク組成において相対的に未分化であり(60.0-61.5 wt.% in SiO2)、また相対的に高いマグマ温度を持つ(793-864C)こととも調和的である。本研究で取得した過去噴火の噴出物の岩石学的特徴は、将来の噴火の火山灰サンプルにおいて本質物質の有無を判定する際に役立つものである。
古い4つの噴火の溶岩には暗色包有物の部分(SiO2 50.9-55.1 wt.%)とホスト部分(SiO2 59.5-64.5 wt.%)がある。これらは全て2端成分マグマの混合産物である。珪長質端成分マグマのバルク組成や含有鉱物の種類・組成には4噴火で差異がない。一方、苦鉄質端成分のバルク組成には、僅かではあるが噴火毎に違いがある。珪長質端成分(SiO2 ≥ 63 wt.%、760-860C)は総量で≥ 60 vol.%の斜方輝石・角閃石・斜長石・石英・Fe-Ti酸化物を有している。苦鉄質端成分(SiO2 48-51 wt.% )は0-10 vol.% のカンラン石を有している。
榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山の4噴火と二ツ岳伊香保噴火の共通点として、噴火に関与した端成分マグマの基本的特徴が似ている点が挙げられる。すなわち珪長質端成分は珪長質安山岩〜デイサイト組成のマッシュであり、苦鉄質端成分は玄武岩〜玄武岩質安山岩組成の無斑晶質もしくはそれに近いマグマである。これらのことは過去4万5千年間にわたり、マグマ供給系の構造や噴火誘発過程が大きく変化していないことを示唆する。噴出物形成における苦鉄質端成分マグマの混合比は、(榛名富士や水沢山に認められる暗色包有物を除けば)5つのどの噴火においても低い。これは結晶度の高い珪長質マグマが苦鉄質マグマに比べ浅所に存在することと関係する。
5つの噴火全てにおいて、マッシュ状珪長質マグマが主に噴出物を形成していることになる。このような高粘性のマグマが噴出するには、苦鉄質マグマとの混合によって、元の珪長質マグマよりも低粘性のマグマが発生する必要があった。二ツ岳伊香保噴火では、混合マグマと高温マグマによる加熱を受けた珪長質マグマが噴出するフェーズで噴火が開始し、その後、珪長質マグマが単独で噴出するフェーズがあった(Suzuki and Nakada, 2007)。これに対し、榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山の4噴火の溶岩は全てマグマ混合産物であって、二ツ岳伊香保噴火の最初期に相当する段階で噴火が終わったものと見られる。
榛名富士・蛇ケ岳・相馬山・水沢山の4噴火と二ツ岳伊香保噴火の間で珪長質端成分マグマを比較すると、二ツ岳伊香保噴火では前述の組み合わせの中で石英を欠くという違いが見られる。このことは、二ツ岳-伊香保噴火の珪長質端成分がバルク組成において相対的に未分化であり(60.0-61.5 wt.% in SiO2)、また相対的に高いマグマ温度を持つ(793-864C)こととも調和的である。本研究で取得した過去噴火の噴出物の岩石学的特徴は、将来の噴火の火山灰サンプルにおいて本質物質の有無を判定する際に役立つものである。