日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月27日(金) 13:45 〜 15:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)

14:15 〜 14:30

[SVC30-03] 福徳岡ノ場火山噴火起源の漂着軽石に関する対応行政への聞き取り調査

*石峯 康浩1 (1.山梨県富士山科学研究所)

キーワード:福徳岡ノ場火山、漂流軽石、聞き取り調査

福徳岡ノ場火山の2021年8月噴火で発生した漂着軽石の対応に当たった3つの自治体の関係者に聞き取り調査を行ったので,その概要を報告する。
小笠原諸島の南部に位置する福徳岡ノ場火山は2021年8月13日から15日かけて大規模な噴火を起こし、大量の軽石を海上に放出した。その軽石は海上を西に流れ、約2カ月後の10月中旬から沖縄本島や奄美諸島に漂着し、港湾や船舶の利用が困難になる被害が発生した。
これを受けて、発表者は11月19日に沖縄県環境部環境整備課、11月22日に与論町の総務企画課で漂着軽石に対する対応状況について聞き取り調査を行った。さらに12月10日には鹿児島県庁で防災局危機管理課、土木部河川課、商工労働水産部漁港漁場課等の担当者からも聞き取りを行った。行政担当者以外に対しても、11月20日に琉球大学理学部物質地球科学科(新城研究室)を訪問し、沖縄本島での漂着軽石の分布調査の実施状況について説明を受けた。また、与論島では11月21日にヨロン島観光協会で観光業への影響についての聞き取り調査も行った。
これらの調査で確認できた重要な点は、8月の福徳岡ノ場火山の噴火後、実際に被害が発生するまで2カ月もの時間があったにも関わらず、漂着軽石による被害が発生しうることに関する情報提供はどこの機関からもなかったという点である。さらには、被害への対応が必要になってからも大学教員等、専門知識を有する人々に効果的な対策について相談することが有用という認識が行政担当者には希薄だったということも確認できた。
特に、いずれの自治体の職員も火山災害という認識がほとんどなかった点は、火山専門家からの情報発信が不十分だったことを示しているものと考えられる。火山専門家が類似の事象に関する知識を有しており、過去の教訓から有用な知見を提供できる可能性を積極的に発信すべきだろう。火山防災に関わる研究者として、今後、類似の現象が発生した場合に備えて、火山噴火の影響を受ける人々に対して有用な情報を伝える効果的な方策について議論をしていくべきだと思われる。